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アンチ・バベルの塔の建設法(続1)

英単語の強化法

1万語前後までは何とか教材もありますし、その程度の語彙であれば雑誌や新聞、ペーパーバック等を辞書を引きながら日常的に読むことで蓄積あるいは維持することも可能でしょう。

しかし、それ以上の語彙数を獲得する具体的な方法論も「唯一の方法」を除いて実はありません。語源活用論もありますが、それで数万語以上の「瞬間に分かる語彙」をものにした具体例は聞いたことがありません。

「唯一の方法」、それは辞書をAからZまで暗記すること、日本語を勉強する人であれば日本語の辞書を暗記することではないでしょうか。みなさんバカになさいますが、他に方法がありますか?

デーブ・スペクターは和英辞書を丸暗記しました。サイデンステッカーは日本語を学ぶ最善の方法は「辞書を暗記すること」だとはっきり述べています。

日本人でも、辞書の暗記を「強力な武器のひとつ」にして英語力を築いた人はめずらしくありません。

辞書を暗記する過程で語源の理解も必然的に進みます。語源の同じ語彙は集中して記述されていることも多く効率的に学習できます。

効率面で言えば、辞書を暗記することほど効率的な方法はないと感じますが、いかがでしょう? 今1万語の語彙力がある人がそれ以上にしようと思って読書に励んでも(1万2000語以上の教材はない)、未知の単語に出会う確率は、辞書を順番にチェックする方法に比較すれば、はるかに低いでしょう。効率が悪いのです。

私は、4万5千語(見出し語だけの数ではありませんが...)の辞書をAから順番に1年かけて暗記しました。教材は Random House Webster の 「Intermediate English Dictionary」です。

選んだ理由はふたつ。

① ネイティヴの語彙数の最低ライン(最高は10万語前後)に到達できること。

② ページ数は512ページで、1年で終われそうであること(実際1年で完了しました)。

③ 英英で暗記できること。

Aから順に少しでもあやふやな語彙をすべてチェックし、182ミリ×128ミリの情報カードに整理していきました。全部で843枚、語彙や連語の数は5060語に達しました。もちろん、各語にはたいてい複数の意味がありますから覚えた意味の数は1万を優に超えます。やった!という感じです。

その効果は実に愉快なものでした。例えば、Da Vinch Code は聞いても読んでも日本語と変わりなく楽しめますし、Alvin Toffler などもほとんど言語バリアを感じません。

ただし、復習しないと忘れますから1日にカード100枚(約600語)、延べ時間数では約一時間の復習です。電車の中などは最高の復習時間です。

http://www.javacamp.org/misc/VocTester.htmlの語彙チェックでは各部門33~43点程度です。

ところで、辞書暗記の条件があります。ふたつです。これが実は難関!

① 時間を工面できる人。学生は十分できるはず。リストラされた人や株でドカンと儲けて時間を買える人などです。

② 根気のある人。

私の夢は若いときから Reader's Digest の Word Power の vocabulary
rating (Good Excellent Exceptional)でコンスタントにExcellent 以上をとれるようになること。8~10万語は必要です。

まだまだこれからですが、今は5万前後の語彙数ですから、残り3~5万語。今までの5万語に比較したらだいぶ楽にマスターできるはずです。派生語が多いし、複数の意味になる表現が激減するからです。

みなさんはどんな方法で語彙を強化されていますか?

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リンカーンの演説は誤訳!?(1)

いつの頃からか、「人民の、人民による、人民のための政治」というのは誤訳で、「人民が、人民のために、人民を統治すること」、あるいは、「人民による、人民のための、人民統治」が正しいのだ、つまり government of the people の of は目的格で the people は govern の目的語になるという説がまことしやかに喧伝されています。

一部の英和辞典までこの新説に同調した記述をしています。

はたして新説は正しいのでしょうか?

わたしはとんでもない珍説だと思います。「人民の、人民による、人民のための政治」こそ、正しい訳なのです。

Google で検索しても government of the people を「人民を統治すること」と解釈したネイティヴの文例は皆無です。

アメリカ人のマーク・ピーターセンがこのことに関して言及し、「リンカーンも驚くに違いない、突拍子もない文法的解釈...」と述べています。

以下は、マーク・ピーターセン著 『ニホン語話せますか?(新潮社)』からの抜粋(37~39ページ)です。和訳ではなく著者が日本語で書いたものです。参考にどうぞ。(改行は私が勝手に行いました)。

“私は、『日本語練習帳』などのような「日本語本」を、一人の日本語学習者として努めて読むようにしている。

その学習が身に付いたかどうかはともかくとして、日本人が日本語をどのように見ているのかも私にとって興味深い問題なので、「日本語本」を読むことは苦にならない。

ただ、一つだけ気になることがある。著者の多くが、日本語の話を進めながら、英語との比較をしたくなる気持ちになりがちなこと、

そしてそこに出てくる英語に関する情報が、妙に英語のリアリティーからズレているケースがきわめて多い、ということである。...

「英語との比較」の話ではないが、最近『丸谷才一の日本語相談』(朝日新聞社)にも驚かされた部分があった。

きっかけは、こんな「問い」である。

「リンカーンの有名な言葉、『人民の、人民による、人民のための政治』ですが、『人民による、人民のための政治』だけで意味が尽くされていると思います。『人民の』には、どういう意味があるのですか。助詞『の』について詳しく説明してください」。

この場合の「の」の曖昧さが指摘されて、鋭い質問だと思ったのですが、その答えに、こんなことが書かれていた。

「government of the people, by the people, for the peopleは、『人民を、人民によって、人民のために統治すること』の意である」。

つまり、government of the peopleのofは、「所属」...や「所有」...等々を示すようなofではなく、「目的格関係」...を示すofだと説明しているわけである。

英語圏で141年以上も続いてきた常識的受け止め方が引っ繰り返される、リンカーンも驚くに違いない、突拍子もない文法的解釈だが、 実は、そこでやっと著者がいちばん指摘したかったと思われるポイントが浮上するのだ。

つまり、現在の日本語では当たり前となっている「歴史の研究(=歴史を研究すること)」などのような表現に見られる「目的格」を示す「の」は、「どうも昔はなかったらしい」、英語のofの影響でそれが生じたのではないか、というポイントである。

リンカーンの言葉について簡単に言えば、government (which is) of the people (and is) by the people (and is) for the people (ちなみに、中国ではこれを「民有、民治、民享的政府」と訳されているようだが)のof the peopleは、いわば、「人民の合意の上で出来た」や、「人民の間から生まれた」などのような意味を表している。

リンカーンはこの言葉で「government=政治」を説明しているわけで、 governmentに統治されるのはthe birdsでもthe flowersでもなくthe peopleだよ、とわざわざ述べる必要も意図も、言うまでもなく、ない。”

リンカーンの言葉に関するマーク・ピーターセンの見解は、「(教養のあるネイティヴの)常識」で、私もまったく違和感がありません。

これから、歴史的な事情、文法上の見解なども含めて、「新説の奇妙さ」を詳述する予定です。みなさんのご意見も聞かせてください。

Thank you.

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あまり誰も指摘しないけれど(1)

英語がうまくなるのに最も必要なのは、「学習や練習にかける時間数」だと思います

日本語は自然と身に付いたとみんな思っているし、実際そうですが、大人らしい日本語が身に付くまでにやっぱり20年ほどはかかっている。それも朝から晩まで日本語で、夢まで日本語なのです。

夢は別にしても、日本語を聞いたりしゃべったり読んだり書いたりしている、つまり実際に日本語に接している時間が1日8時間だとしても20年では5万8千400時間になる。

他方、英語の場合。普通の日本人は日常で使う機会はないから専ら学校の授業。学校で、13歳から20歳まで英語を習うとしても、1日に1時間として1週間で5時間程度、しかもそのほとんどが圧倒的に日本語が多く、英語も日本人なまりで、いねむり、おしゃべりもめずらしくない授業である。だから、実際に英語に接している時間は1週間で2時間ぐらいに過ぎない。

月間でやっと8時間、1年で100時間に満たない。それで20歳まで8年間続けても800時間弱である。これは日本語の時間数の73分の1。夏休みや行事もあり実際はもっと少なくなる。つまり、日本語の100分の1程度。

これを語彙力に単純にあてはめると、日本語が3~5万語だとして、英語で何とか実用に絶える実用語彙数は日本語の100分の1として300語から500語。事実、それが実情ではないか?

こんな状態で「英語が使えないのは学校のせいだ!」と言っても無理がある。

ただし、これはどこの国でも、外国語教育では、似たようなもの。

日本だけの問題ではないし、問題と言えるほどの問題でもない。英語が日常で必要な人などほとんどいないからだ。

しかし、ある程度実用に耐える英語を身につけようと思えば、「絶対時間数」がまず必要になる。

そのことに気づいている人は案外少ないのではないでしょうか?

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すばらしい英語学習のサイト

(http://www.scn-net.ne.jp/~language/英語・発音・語彙)は、みなさんもよくご存知かもしれませんが、実に役に立つ記事がいっぱいです。

著者の松澤さんは、日本人の英語学習の実態を客観的に心得た上で、不自然に妥協的ではない筆致で、しかも系統的に、英語の習得方法を解明しておられます。

説得力があります。

奥さんの松澤圭子さんは「英語の発想で翻訳する」という本を、アルク翻訳レッスン・シリーズのnumber4として出版さていますし、ご自身も近く著書を出版される予定の由。楽しみにしています。

Thank you.

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英単語の数(2)

英語のネイティヴの成人の語彙数を6万語として、少し単純な計算をしてみましょう。

20歳前後でその6万語の習得を終え、英語に接する時間を一日14時間と仮定する。

すると、

英語に接する総時間数: 14×365×20=10万2200時間

∴ 1時間に約0.6個の単語、または5時間で3個を習得する。一ヶ月で約252個、年間で3000語である。

私たち日本人が大学受験で暗記する単語は2000~6000語。

平均3000語(これだけ覚える受験生は実は希だが...)とすれば、6万語に達するためには残り5万7,000語になる。

1日20語覚える(ひとつの単語に複数の意味があるから実質は3倍程度になる)と仮定すると、2850日(8年)必要になる。

しかも、どんどん忘れていく!

そこで、普通は妥協して、いわゆる必須語彙だけにしぼることになる。

言語学者(故人)の千野栄一氏は、『外国語上達法』(岩波新書)で次のように述べている。

『小説や詩を楽しみ、会話もでき、その言語で手紙も論文も書けるというようになるには最低四~五千の語が必要になり、その学習には三~四年は必要である。この五千語をさらに六千語、七千語、八千語...にするには、その道のプロ以外必要ではない。いくら覚えてもきりがない単語の学習には、目安が必要である。使いもしない語を無理して覚えるのは、ナンセンスとしかいいようがない。もし、辞書を引き引きその言語で書かれたテキストを読みたいというのであれば、二~三千語で足りる。ここまで覚えれば、その言語に関しては一応の上がりである』

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英単語の数(1)

英語を話す国に生まれる人たちは、大人になるまでに、いったいどれくらいの語彙数を獲得するのでしょうか?

『言語を生み出す本能』の著者スティーヴン・ピンカーは、別の著書『Words and Rules』のなかで(ハードカバー版3ページ)、以下のように述べています(翻訳は私)。

『... Children begin to learn words before their first birthday, and by their second they hoover them up at a rate of one every two hours. By the time they enter school children command 13,000 words, and then the pace picks up, because new words rain down on them from both speech and print. A typical high-school graduate knows about 60,000 words; a literal adult, perhaps twice that number... ― 子供は、初めての誕生日を迎える前に言葉を覚え始め、2歳になる頃には2時間に1語の割合で語彙を吸収していく。小学校に入学する頃には1万3000語を習得し、その後、会話に加えて本も読むようになるので、新たな語彙を獲得するペースがどんどん加速する。普通に高校を卒業した人の語彙数は6万語、教養のある人ならその2倍程度になる ―』

ただし、固有名詞や専門用語及び派生語などを除けば、だいたい5~6万語に集約されると思います。

ちなみに、私たち日本人の日本語の語彙数はどの程度でしょうか? 

こんな語彙推定テストがあります → http://www.kecl.ntt.co.jp/icl/mtg/goitokusei/goi-test.html

それによると、日本人の語彙力はだいたい次のようになるようです。

小学生レベル: 5千~2万語
中学生レベル: 2万~4万語
高校生レベル: 4万~4万5千語
大学生レベル: 4万5千~5万語

英語と日本語は、全く異なる言語群に属しますから、同等に比較することはできないと思いますが、いずれの場合でも成人の語彙数はおよそ5~6万語と見積もることができると思います。

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アンチ・バベルの塔の建設法

別にどんな方法でも構わないのですが、私は、以下のように実行しています。

① 使用カード:市販の情報カード 製品名は「LIFE 情報カード J880 B6 128㎜×182ミリ 無地 100枚で¥451」

② 教材:英英辞典 

自分が知らない単語や表現はもちろん、記憶があやふやなものもすべて、Aの項目からチェックし、「ワード」でカードに記入し、プリントアウトします。その後、パンチで綴じ穴をあけ、リングに通し、100枚単位で整理し、普段は重ねて置いておきます。

これで、まったく自分独自の単語帳=アンチ・バベルの塔が徐々に高くなってゆくわけです。

③ ワード文書の設定

「ページの設定」は次のようにします。

用紙:182㎜×128ミリに設定
余白:上下右をすべて6ミリ、左は20ミリ、とじしろは0、とじしろの位置は左
文字方向:横書き
段数:2
文字数と行数:両方を最大に指定

1ページが2段組ですから、左ページにターゲットの単語や語句を書き、右ページの同じ位置にその各単語や語句の意味を英英辞典から書き写します。記憶しやすくするために日本語で意味を書き添える場合もあります。もちろん例文を加えるときもあり、その辺の工夫は都合しだいです。

④ 最大のポイントは、毎日復習を続けることです。新たにカードを作成する時間がないときは復習だけにします。

結果、今の段階で、読んで分かる単語の数は5万語前後に達しています。ネイティヴ並みの10万語をめざしてさらにカード作成を続けますが、これからの5万語は今までの5万語に比べればかなり楽だと思います。各単語の意味がひとつかふたつであまり複雑にならないだろうと考えるからです。

詳細は後日少しずつ述べながら、みなさんのアイデアもお聞きしてもっとすばらしい塔にしていきたいです。

よろしくお願いします。

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