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なぜ5万語前後の語彙数が必要なのか?

リスニングやスピーキングに関してはすばらしい方法を提示するサ
イトがありますが、1万2千語以上の語彙を獲得する具体的な方法
を提示したサイトや研究もありません。

そこで私が提唱しているのが辞書暗記なのです。欧米の雑誌を精読
しながら語彙を増やすと言う人も多いです(実際に長期にわたって
実行している人は稀ですが...). しかし、そのやり方で5万語を
達成する時間はあるでしょうか? ありません。私の計算によれば
一生かかっても無理です(具体的な計算は私のコラムをご覧くださ
い。)

そんな語彙数は必要ないと言う人も多いです。語彙数の絶対不足に
よる不便を合理的に「自覚」しながら様々な理由でそれ以上の語彙
獲得を自分に課さないという人もいます。それはそれでひとつのり
っぱな見識だと考えますが、私は十分な語彙を増強したいと思って
います。

○ 「知らない語彙があっても前後関係などで意味が類推できれば
いいではないか。現に日本語の新聞や雑誌を読む場合でも知らない
語彙があるが別に支障はない」と主張する人があります。

しかし、日本語の場合その人の既知語彙数は3~5万語に達してい
ます。成年になった英語のネイティヴの語彙数もほぼ同程度でしょ
う。

「3~5万語の語彙数を背景にして数少ない未知語彙の意味を類推
する状況」と「せいぜい5千~1万語(この数も日本人にとっては
大きな数ではありますが)の語彙数で未知語彙の意味を類推する状
況」を同列に論じるのは不可能です。

○○の語彙数があれば95%をカヴァーできるというような議論も
実証研究もあります。ところがこれは統計的な数値であって、現実
にはそうではない場面に遭遇することが珍しくありません。ひとつ
の単語が不明なために1節全体の意味を取り違えてしまうこともあ
るのです。

そもそも、人が普通に教育を受け普通に生活していく中で自然に獲
得する語彙数がなぜ3~5万語なのか? 

その数が生身の人間として絶対必要だからでしょう。

3~5万語は、Random House Webster's Intermediate
English Dictionary(総語彙数4万5千語)の巻頭に書いてあ
る表現を使えば、「the most common words and phrases」=
「だれでも知っている語彙」なのです。ましてや、難解語では断じ
てありません。

さらに、語彙数は、単なる語彙力だけではなく、言語能力全般を示
すものでしょう。

「むやみやたらと辞書を暗記する」という表現があります。しか
し、「むやみやたらと」辞書など暗記できるものではありません。
既知語彙の数だけが突出することはないのです。それ相応の英語力
がないと脳が受けつけません。

私が「辞書暗記の段階」を主張するのはそのためです。まず5千~
1万語の英和辞典、次に2~3万語の英和辞典、3万語を超えた時
点で英英和辞典、それ以後は英英辞典に取り組むのが良策だと思い
ます。

5千~1万語の段階で同程度の英英辞典を併用できればすばらしい
ことです。

中学生用の辞書でも構いません。暗記しなくても構いません。一度
じっくり読んでみることをお勧めします。いかに豊穣な世界がそこ
に広がっているか実感できるはずです。浅薄な単語帳の世界とは別
世界です。

辞書暗記は、「いわゆる丸暗記」ではありません。「意味群の暗
記」なのです。私はターゲットの辞書を主にして、もちろんインタ
ーネットやブリタニカやその他の辞書参考書なども併用しながら、
「ディクショノポリス=辞界」を探索し各語彙(単熟語その他)の
意味を暗記します。

なお、ネイティヴが使う英英辞書は非ネイティヴ向けの学習用英英
辞書とは異なります。「the most common words and phrases」
以上の語彙力がないとネイティヴ用の辞書は活用できないからで
す。日本語を学習する外国の人がいきなり「広辞苑」を利用するの
は不可能です。「広辞苑」を利用できるのは限られた上級者だけで
す。

○ 英検準1級に合格できる人なら「辞書暗記」はひとつの有力な
選択肢になると思います。脳が受け付ける段階に達していると考え
るからです。

もちろん、他にも5万語を獲得する有効な方法があるかもしれませ
ん。誰も実証した人を知らないだけです。「口だけではない実証済
みの代替法」などがあればぜひ知りたいです。

なお、英検1級の合格だけが目標であれば大学受験の延長的な勉強
だけでも可能です。

○ 辞書暗記に対するコメントも大歓迎です。どうぞ私のコラムを
訪れて下さい。

追記:PHP新書「最強の英語上達法」岡本浩一著は、英検1級以上
を目指す人にお勧めしたい本です。

Thank you.

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Comments

k.yさん。初めまして。こんばんは。マルタ島の石ころと申します。この書き込みに対するコメントとして適切かどうか分かりませんが、ここに書き込みさせて頂きます。

10月、英検を生まれて初めて受験しました。準1級は多分大丈夫でしょうが、1級は全く単語が分かりませんでした。

そこで、k.yさんの辞書暗記に大変興味を持つようになりました。実は、自分も大学1年のときに同じようなことをやり始めました。そのときは大学受験でジーニアス第2版を使い潰していました(辞書の解説をかなり暗記していた)のでジーニアスを覚えようとしました。
しかし、こんなことをしている人は見たことも聞いたこともないので自信がなくなり、直ぐ止めてしまいました。今思えばもったいないですね。
そして、k.yさんの辞書暗記を読んで、やはり自分は間違えていなかったのだと自信を持ち直すことが出来ました。そこで、再度ジーニアスを覚えようと頑張りはじめたところです。しかしながら、あの量は半端ではないので、まず**印の中学学習語約1100語から初めて、*印高校学習語約3400語・・・と辞書にはレベルがありますよね?徐々にレベルを上げながらとやっていこうと考えました。
また、手元に衝動買いをした「Longman Essential Activator」がありますので、これも使えないかなぁなどと考えています。
私は、今、中学生を主に教えている予備校講師ですが、レベルは準1級レベルです。正直こんな力で人に教えるなんてなんとも恥ずかしく、毎日申し訳ないと思いながら教えてます(泣

これからもk.yさんにコラムを楽しみしております。
急に冷え込んで来ました。体調に気をつけて下さい。
それでは失礼させて頂きます。

Posted by: マルタ島の石ころ | October 29, 2004 at 02:46 AM

>欧米の雑誌を精読しながら語彙を増やすと言う人も多いです(実際に長期にわたって実行している人は稀ですが...)

やっている人が稀という点では辞書暗記も同様ではないでしょうか。

>しかし、そのやり方で5万語を達成する時間はあるでしょうか? ありません。私の計算によれば一生かかっても無理です

それは単なる個人的印象論ではないでしょうか。こういうことはSLAの語彙研究において、複数の研究成果がありますよ。100万語読めば1000語習得します。ですから、3000万語読めばネイティブ並の運用力と語彙力がつくのです。伝統的な精読しかしていない人には非常識な数字に思えるかもしれませんが、これくらい読んでいる人はネット上でもよく見ます。五年ぐらいで十分達成可能な数字です。

ただ、こういった偶発的語彙学習ではなく、意図的語彙学習のほうがはるかに効率がいいということは確かです。もっとも辞書暗記というのは日向清人さんも書かれているように、下手なやり方だと思います。、効率を重視すれば単語カードによる一対一対応での暗記がベストです。これも研究によって裏付けられています。

http://eng.alc.co.jp/newsbiz/hinata/2007/02/post_344.html

Posted by: コーヒーブレイク | December 28, 2013 at 08:18 PM

コーヒー・ブレークさんへ。

語彙強化に関しては各人さまざまなやりかたがあり、さまざまな研究もあります。

ご紹介くださった研究例は、私もすべて承知しています。

ただ、研究対象になる・ならないは別にして、私が最も興味を持つのは、研究者の論文・研究結果ではなく、「一定の語彙力を達成するに至ったその本人の足跡」です。

「どの語彙をどの程度、多義がある場合はそのことも含めて、理解・暗記するに至ったかというその人自身の記述」です。

そして、語彙強化の実際の方法は各人によって多種多様で、決定的だといえる方法はいまだ存在しません。

私はそれで良いのだと思います。

私が「アンチ・バベルの塔」が最善だといったところで、他の人が全く違う方法で同様な成果を実際にあげていれば、それはその人にとって最善の方法なのでしょう。

「塔」もそんなひとつの方法だと思っていただければ充分です。

他方、コーヒーブレークさんご自身の語彙強化の方法とその成果にもたいへん興味があります。

ぜひ、聞かせていただきたいです。

研究者の発表ではなく、実行者その人の有り様に強い興味を感じます。

とまれ、今回いただいたコメントは、他のみなさんにも大いに参考になります。

ありがとうございました。

どうぞ、よいお年を!

k.y.

Posted by: k.y. | December 28, 2013 at 11:39 PM

>コーヒーブレークさんご自身の語彙強化の方法とその成果にもたいへん興味があります。

お返事有り難うございます。Ant Concなどのコンコーダンスで読みたい本や論文の英単語を抽出してから、http://www.lextutor.ca/vp/bnc/
などの語彙レベルを判定できるサイトでレベル分けして、知らない単語をリスト化して一気に暗記しています。私は読みたい分野が限られており、辞書暗記では、語彙の汎用性が高いのがかえって問題となります。もっと偏っていてよいので、上記のようなやり方を採用しております。
最近更新が途絶えているようですが、ボキャブラリー関連ではナンバーワンのブログですね。来年の更新を楽しみにしております。

Posted by: コーヒーブレイク | December 30, 2013 at 08:57 AM

塔主さま

昨年、このブログを読んで、深く共感した者です。
そこで、2013年の12月から、LDAEを読み始めました。
この年末までになんとか[ZZZ]までたどり着きましたので、ご報告しようと思い立った次第です。
とはいえ、例文の音声を一通り聴いて発音をリピートし、本文にマーキングをしただけで、まだカード化はしていません。つまり、暗記は次年度からです。

しかし、効果はすでに顕著です。英文を読むのがはるかに楽になり、きっちり発音されるニュースの類なら固有名はのぞいて、ほとんど問題なく聴き取れます。
英英だけで済ませる実力がないので、同じロングマンの英和を使い、次年度のカード化のために、LDAE本文に所々、日本語を書き入れました。この英和は日本語コーパスを採用している上に、JACETの8000語表示もあり、素晴らしいです。
(LDAEを読む前に、松澤喜好さんの「単語耳」シリーズ四巻を数年かけて終了したのですが、このシリーズはJACETの8000語を種にしていたのでした。)

単語耳を終えて、発音は良くなったものの、語彙が8000から10000語じゃ足りんなあ、どうしても足りんなあ、とモヤモヤしていたところで、K.Yさんのこのブログに巡りあったのでした。
私はすでに四十代なので、単語耳の時もそう思ったのですが、「もっと早く、このブログに出会っていたら・・・」
という思いが強かったです。しかし、一日でも早く始めようと、考えを改めました。その結果、苦しいけれども、まことに充実した一年でありました。お礼を申し上げます。

カード化はどういう風にするのが一番いいのか、自分に向いているのか、いま楽しく試行錯誤している次第です。
ちなみにNVAも併用しています。こちらは第三版が出ましたね。

それから、失礼ですが、私の観るところ、塔主さまは、かつて投資家としても敏腕であられたのではないでしょうか。どうにもならない日本政府、日本企業、各種ファンドとはちがい、希望的観測ではなく酷薄たる事実に目を向け、かつ、自分にあった方法を発見されたわけですから。えらそうに聞こえたら、ごめんなさい。

酷薄たる事実とは、英語においては最低五万語が必要ということです。私は、このブログで、甘い考えを捨てることが出来ました。

もっといろいろ書きたいことはあるのですが、これくらいにしておきます。

本当にありがとうございました。
おからだを、どうぞご自愛ください。

Posted by: 夏炉冬扇 | December 31, 2013 at 04:56 PM

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