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コメントにお答えする(9)

ニヒリストさん、はじめまして。

アンチ・バベルの塔主、山紫水明(or k.y.)です。

真摯なコメントをいただき感謝しています。ありがとうございます。

> 私には辞書を暗記して5万語の語彙力を獲得するというk.yさんの方法はとても無理です。というのも、会社人ですし、まず時間の絶対量がとれないということ

よく、分かります。アンチ・バベルの塔を建てられる(=ネイティヴの常識レヴェル・5万語に到達できる)可能性のある人は、学生や大学院生または時間を十分に工面できる社会人に限られます。

また、それだけの時間(=金)を費やす価値があるのかないのかを自分なりに判断する必要もあります。

私は、自分の価値観に基づいて不要や虚栄だと判断できるものはできるだけ削り、「英語でも、日本語と同じように、真に独創的あるいは天才的な作品に触れることができる語彙力」をつけることにしたのです。己に創造力がなくても、他の人たちのすばらしい能力に触れることはできると思うのです。

知的生物の精華たる人々の緻密なアイデアや美しいスタイルとの邂逅を楽しめるのは、もっぱら活字を通じてであるという確信があります。

> 本来根気がない、という自分の性格からです。私は熱しやすく冷めやすい性格です。

これは、あまり文字通りには了解できません。りっぱに仕事をこなしながら、英検1級、TOEIC950点、TOEFL653点、国連英検特A級、通訳案内業(英語)資格などを取得された方に根気がないと言われても、にわかには信じがたいからです。

> 今は目標がなくて、自分の英語力が落ちないようにメンテナンスするので精一杯です。

なぜ、目標がないのでしょうか?

> 翻訳というのは英語ができればいいというものでなく、もし翻訳で飯を食うとしたら、上記のような需要の高い分野での専門性が必要です。それで、なかなか英語で飯を食えるような環境に自分を置けなくて困っております。

ずばり、おっしゃるとおりです。翻訳では、たとえば英検1級よりも専門的知識のほうがかなり重要でしょう。私の翻訳分野は「証券取引」ですが、学生時代から続けている証券取引の経験や知識がなければ正確には翻訳できないと思います。仕事で使う辞書も、当然、専門分野の辞書が主力になります。

ご指摘のように用語も常に変化します。新たな金融商品または新たな市場の動きに応じてそれを反映する語彙も変容します。

> k.yさんのまず5万語暗記というのは、専門用語ではなく、一般語の暗記だと思いますが、それでやっと普通の英語のネイティブ並になれるわけで、何か専門能力を身につけている英語のネイティブスピーカー並になれるわけではないですよね。

ほんとうにそのとおりですね。だから、いかに難易度の高い英語の資格であっても、それだけでは、他の高度な国家資格には経済面でも社会的評価の面でもはるかに及ばないわけです。英語だけの社会評価は低い。

たとえば、翻訳だけで人並みに家族を支えるのも至難の業です。

ちなみに、私の息子二人は、「門前の小僧」ですから英語は得意ですが、ひとり(29歳)は弁理士であり、ひとり(25歳)は今年司法試験に合格し多分弁護士になる予定です。

> 英語をマスターするためには、もう本場のアメリカやイギリスに移り住んで、英語の教育を受ける以外ないと思っておりました...以来留学コンプレックスというものが私には根強くあります。

私には、それはまったくありません。留学した人を数多く直接または間接に知っていますが、そういう人たちが、特に英語に秀でているとか、並外れた読解力を示すとか、魅力あるスピーチをするとはまったく思いません。留学すれば、遊学でない限り、勉強せざるを得ない環境に置かれるから力がつくのであって、それを国内でできる人は、欧米の学位や欧米でしか獲得できない専門技術その他が必要である人、欧米にあこがれている人、外人と結婚して外国に住みたい人、外国の雰囲気を味わいたい人など以外は、アメリカやイギリスに移り住む積極的な理由はありません。

さらに、日本は、一生かけても味わいつくせない魅力を湛えた国でもあります。

> k.yさんは、英語のスピーキングには余り力を入れていないとかかれていますが、それは、やはり日本語にいて英語をマスターしようとするものでも、スピーキングになると議論でネイティブに負けてしまう、という理由からですか?

議論してネイティヴに負けるなどと思ったことはありません。ロジックを外さず、オリジナルなアイデアを持ち、人の真意を見抜くまたは思いやる姿勢があれば、高度な語学力がなくても、必ず相手にインパクトを与えることができます。絶対に必要なのは知的能力と人間味です。

もうひとつあります。日本語であればこその発想力です。ノーベル賞の田中耕一さんで最も印象に残っているのは、「英語でしか論文を書けないのが残念だ。日本語でしかなしえない発想があるのにそれを表現することができない」という旨の発言です。

「日本語でしかなしえない発想」=「日本語による思考」です。

そんな発想に基づくユニークなアイデアであれば、多少英語に難があっても、それなりに知的能力のある欧米人であるなら耳を傾けます。

ただし、ふつうのおしゃべりではネイティヴにかなうとは思いません。しかし、私はおしゃべりなどあまりしたくありません。そんな暇があるなら、語彙17万語達成のためにひとつでも単語を覚えます。おしゃべりをするより Reader's Digest の語彙クイズ 「Word Power」で「Exceptional」を連発することの方がはるかに魅力があります。英語で「Charles Dickens」を楽しめる方がはるかに魅力があります。

> でもやはり帰国子女のようなバイリンガルの人が日本にいないと、いつまでたっても日本人は英語のネイティブと対等に議論ができない、ということになってしまいませんか?

私は、帰国子女をニヒリストさんほど評価しません。その圧倒的多数は、おしゃべりの場合を除いて、日本語も英語も中途半端な人たちです。

> 私が、バンドルネームをニヒリストとしているのも、私自身ニヒリズムがこの人間世界の真理を表している、と考えているのと、英米人は、ニヒリズムのような一種の観念論には弱く、彼らの言い分にニヒリズムを持って対抗すると、結構戦えるからでもあります。

私には、ニヒリズムは似合いません。また、GOD も信じません。アニミズムに最も親近感があります。

しかし、ニヒリストを称するのは非常に優れた自己表現、またはタクティクスだと思います。ニヒリズムが、ニヒリストさんの能力を最大限引き出す武器なのでしょう。

> ただk.yさんの辞書を暗記して5万語習得という努力には敬服するばかりです。

おおきに! ほとんどの人にバカにされていますから、そう言われるとうれしいです!

最後にニヒリストさんであれば興味を示されるかもしれない本を、もう既に読んでおられるかもしれませんが、2冊掲げておきます。もちろん、これらの本のことを後で話題にするつもりはまったくありませんので、興味がなければ無視なさってください。

① 「バイリンガルの科学」 (講談社BLUE BACKS 小野博著)
② 「リチューニング英語習得法」 (ちくま新書 ドミニク・チータム著)

今後ともよろしくお願いします。

Thank you.

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コメントにお答えする(8)

こんにちはマルタ島の石ころさん。

いつもごらんいただきありがとうございます。

もっと続きを書きたいのですがなかなか時間がありません。この1週間は比較的時間があったのですが、あればあるで他にしたいことやしなければならないことができて、けっきょくあまり書き込めません。

「亡国のイージス」を読みました。著者は福井晴敏さんで、すごい筆力でした! 日本にもすごい作家がいますね。

さて、a +not a の形ですが、標準英語外では時々使われています。

ご指摘の一節は「A weekend is a not a long period of time, and the characters are not even the same people they were when it started.」でしょうか?

英語も日本語と同様、形が違えばたいていニュアンスも違う場合がほとんどです。

この文脈では、「週末は長い時間以外の期間」であるとして「以外」を無理にあてはめると奇妙ですね。「週末は長くはない期間である」または、もっと普通に、「週末は長いとはいえない」、さらに簡単にして、「週末は長くはない」といった感じになります。

A weekend is not a long period であれば「週末は長くない(期間である)」ということで、日本語に訳出するのはやっかいですが,やはり若干ニュアンスが違います。

他の表現の場合と同じで、この表現も文脈によってニュアンスは異なります。

私なら無難に A week is not a period ( of time ) that is long とします。

辞書暗記は英検1級を突破してからでも遅くないですよ。少しでも完成したページ数は復習を重ねて貯金しておいた方が後で続けるときにちょっとでも楽になりますし、やめてしまってもその部分だけは身につきますから得策でしょう。

それでは、また。

Thank you.

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コメントにお答えする(7)

muck09さんへ。

「アンチ・バベルの塔」へようこそ!

おたずねの件、本文に書いておいたのですがお読みでないようなのでコピー&ペーストしておきます↓ 他の記事もできるなら全部読んでいただきたいと思います。


アンチ・バベルの塔の建設法

別にどんな方法でも構わないのですが、私は、以下のように実行しています。

① 使用カード:市販の情報カード 製品名は「LIFE 情報カード J880 B6 128㎜×182ミリ 無地 100枚で¥451」

② 教材:英英辞典 

自分が知らない単語や表現はもちろん、記憶があやふやなものもすべて、Aの項目からチェックし、「ワード」でカードに記入し、プリントアウトします。その後、パンチで綴じ穴をあけ、リングに通し、100枚単位で整理し、普段は重ねて置いておきます。

これで、まったく自分独自の単語帳=アンチ・バベルの塔が徐々に高くなってゆくわけです。

③ ワード文書の設定

「ページの設定」は次のようにします。

用紙:182㎜×128ミリに設定
余白:上下右をすべて6ミリ、左は20ミリ、とじしろは0、とじしろの位置は左
文字方向:横書き
段数:2
文字数と行数:両方を最大に指定

1ページが2段組ですから、左ページにターゲットの単語や語句を書き、右ページの同じ位置にその各単語や語句の意味を英英辞典から書き写します。記憶しやすくするために日本語で意味を書き添える場合もあります。もちろん例文を加えるときもあり、その辺の工夫は都合しだいです。

④ 最大のポイントは、毎日復習を続けることです。新たにカードを作成する時間がないときは復習だけにします。

結果、今の段階で、読んで分かる単語の数は5万語前後に達しています。ネイティヴ並みの10万語をめざしてさらにカード作成を続けますが、これからの5万語は今までの5万語に比べればかなり楽だと思います。各単語の意味がひとつかふたつであまり複雑にならないだろうと考えるからです。

詳細は後日少しずつ述べながら、みなさんのアイデアもお聞きしてもっとすばらしい塔にしていきたいです。

よろしくお願いします。


追記:並大抵の ― 特に軌道に乗るまでの数ヶ月は ― 作業ではないと思います。ほとんぞ全員の方が途中で投げ出してしまう所以です。

しかし、市販の単語帳をはしごしても、英文雑誌から未知単語を拾っても、5万前後の語数に達することは永久にありません。

そこで英検1級レヴェル(何とか英文を読める程度)の1万語前後でも、不便を承知で、あきらめてまたは仕事などでとても時間がないというやむを得ない理由で、自分のできる範囲で少しでも英語力の向上を図るというのがごく常識的な対処法かと考えます。

しかし、私のようにそれでは満足できない場合には、具体的にどうすればいいのか? 

私には、効率面から考えても、「辞書暗記」しか思いつかなかったわけです。どこにも5万語レヴェルを達成する方法など書いてありません。

1万語でも英文の意味を致命的に取り違えてしまうことはあまりないでしょう。また、そんな日常に慣れてしまえばさほど気にもならなくなるかもしれません。

視力が0.5しかない人でも長年それで生活していれば生活に特に支障はないでしょう。見慣れた世界がその人の普通の世界だからです。

ところが、そんな人がメガネで視力を1.0に矯正して見る世界はどうでしょう?

私は、かなりの近視なので実感があります。実に、すっきりした世界が現れます。

正常な視力の人は展望台の望遠鏡を通してみた世界を想像したら分かると思います。肉眼では見えない世界が現れます。

メガネや望遠鏡に相当するのが辞書です。必要な場合に使えばよい。

さて、英語なら、視力1.0の世界とはどんな世界でしょう。

それは、語彙力が4~5万(ネイティヴの常識レヴェル)の世界です。

5000語程度(視力0.1)しかなかった人が五万語を習得して見える世界は別世界です。必要なときにメガネ(辞書)を使って見る世界とも全く違います。必要なときにだけ部分的に五万語で見る場合と、常に全体に五万語で見ている場合とでは、見える世界の様子はがらりと異なったものになります。

体験できる世界も拡大しますし、「ほんとうに見えている」実感が湧いてきます。

仮に、1000ページの辞書(5万語)を、比較的ゆっくりと5年かけて覚えるとしましょう。とてつもなく退屈で長ーーーーーーーーい作業に思えるかもしれません。

しかし、『市販の単語帳をはしごしても、英文雑誌から未知単語を拾っても、5万前後の語数に達することは永久にありません』。相変わらず、もはや慣れてしまった低視力の世界が広がっているだけです。

そして、振り返ってみると、5年ぐらいはあっと言う間です。

少年老いやすく学なりがたしです! 

以上、参考にしていただければ幸いです。

Thank you.

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コメントにお答えする(6)

KT 様

> アメリカ人3名に"a not a case of"についてコメントを求めたところ、全員それは誤りだと答えました。この表現はネイティブでもかなりインテリの人でないと知らない類いのものなのでしょうか。

おもしろい情報をありがとうございます。

今回の語法は、インテリの人は分かってはいても公式には使わない表現だと思います。

一般にはときどき使われていますが、まだ、定着していない表現であることは確かです。規範文法にはまったく登場しませんし、日本で出版されている英文法の本にもないはずです。

ご存知のように「標準英語」といってもよい確立された英語があります。この標準英語は、世界共通で、アカデミックな論文や一流誌の社説などで使われるスタイルです。

標準英語で書かれた文章は、たとえネイティヴであっても、どこの国や地域の人が書いたのかまったく識別できないなまりのないスタイルです。

したがって、社会的な出世をのぞむ人や論文を発表しなければならない人などは、普段は地域色豊かな英語をしゃべる人であっても、懸命に標準英語を学びます。なまりを消し去らなければ公式な文章として認められないからです。

ところが、タイムの英語は、かなり標準化されてきたとはいえ、まだ定着していない表現を使ったり独特の工夫を語法に加える場合があります。今回の語法もそのひとつでしょう。

だから、TIME を読んで英語を学ぼうとする人が多い日本人にはいつも危惧を感じます。TIME 崇拝のような傾向さえあります。

私は、USA Today のようなもっと標準的なスタイルの方が英語学習には適していると考えているのですが、あまりそんなことを言うと反発をかってしまいます。

以上、取り急ぎ、返事を書かせていただきました。

これからも、よろしくお願いいたします。

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a +not a ~ という形

英検BBSのサイトである方が話題に引用された下記の記事について。

7/19日のTIME誌:
Electorate is pretty evenly split between those likely
to support President George W. Bush, the Republican
candidate, and Senator John Kerry, his Democratic
opponent. But this is a not a case of a division
between equal numbers of those who shrug their
shoulders and those who are looking forward to an August
at the beach.


> a) This is a (not a case of a division ~)と思います
が、間違い有りませんか?

間違いないです。その通りです。
「a + 単数名詞(not a case of a division ~)」という普通
の形です。

> b) そうで有れば、this is not a case of a division ~
と書いた場合とどれほどの違いが有りますか?

① this is a not a case of a division ~ 
「これは~以外の分裂である」=「これは、ブッシュ積極支持派対
無関心派以外の分裂である」

(「ブッシュ積極支持派対無関心派」の構図ではない分裂)を強く
意識した表現です。

those who shrug their shoulders to an August at the
beach = 無関心派

those who are looking forward to an August at the beach
= 積極支持派

an August at the beach = ブッシュが共和党大統領候補指名受
諾演説を行う4年に一度の共和党全国大会(の開催場所 → 今回は
ニューヨーク市のマディソン・スクエアー・ガーデンだった)

つまり、引用された部分の趣旨は、「(ブッシュ積極支持派対無関
心派)という分裂ではなく、国論を二分する分裂なのだ」というこ
とです。

② this is not a case of a division ~
「これは~の分裂ではない」

「~の分裂ではない」というだけで「~以外の分裂」を強く意識し
た表現ではありません。

>c) 文法的には、このような文は何と呼ぶんでしょうか?
特に呼び方はありません。

なお、この 「a + not a ~」の形は、「~以外」を強く意識す
る場合には他の場合にも使われる形で、たとえば、「I am a not
a pro by any means, but I would call myself a somewhat
skilled amateur baker」という表現は「私はどこからみてもプ
ロではない人間だが、腕の立つアマチュアのベイカーだとは言え
る」という意味でプロの人を強く意識した表現です。

さらに、[we need a not a player in the team」という表現は
選手を強く意識しながらも、「選手以外の人もひとり」必要だとい
う意味です。

選手でない人が2人必要であれば「we need two not players」
という複数形もあります。複数形がなじまない場合もあり、その時
はもちろん使いません。

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最近の辞書の話題(1)

私は今「Cambridge Advanced Learner's Dictionary」を暗記し
ていますが、そのなかにひとつなつかしい単語を見つけました。

cyberpet という単語の説明の中にある「Tamagotchi=タマゴッ
チ」という商標です。

タマゴッチはどこへ消えたのでしょう? まだ生きているんです
か?

[cyberpet] noun [C] (TRADEMARK Tamagotchi)
an electronic toy that behaves like a pet

全部漢字で表現すると「愛玩動物様電子玩具」!

一昔前の辞書に比較すると cyber何とかという語彙が非常に増え
ています。

インターネット時代を象徴する語群のひとつですね。

楽しや、辞書暗記!

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SSS多読法

SSS多読法について。

数年前から知っていますが、すばらしい方法で、しかもそれを実際
の授業でも実行されていることに感銘を受けました。勇気ある行動
です。

内容も具体的で、読む本もレヴェル別に詳細に例示され、誠意のあ
ふれる取り組みです。

SSS多読法は私の「辞書暗記」と共通の視点があります。

それは、「日本人の英語に接する時間の絶望的な少なさ」を自覚
し、そのギャップを少しでも埋めたいという願いです。

各人の言語能力がほぼ完成する20歳までに英語に触れる時間をネ
イティヴと日本人で比較すると、だいたい100対1になります。

SSS多読法はこのあまりにも大きいギャップを、「多読」によって
補おうとしているわけです。リーディングに主眼を置いた方法で
す。

たとえば、大学の「原書講読」で1年間に20~50ページ訳読だ
けしてもなーーーーんにもならない。ひたすら日本語に訳している
だけで、実際に英語に触れる時間は極小で、それで英語が上達する
ことはない! 

一方、私は「語彙面」でこの100対1のギャップを短期間で埋め
る「唯一の方法」として「辞書暗記」を提唱し実行しています。そ
れを短期間(2~5年)で成し遂げる方法は他にないと思っていま
す。

リスニングやスピーキングの側面についても、具体的で効果も実証
されているすばらしい方法が提唱されています。

これらは、どの側面に重点を置くかによって方法は異なりますが、
「絶望的な英語に接する時間不足」に対処するという点では同じ視
点を持っています。

そして、いずれの方法も膨大な訓練時間を必要とします。100万
語であり、私の辞書暗記では1~5年(レヴェルによります)であ
り、リスニングやスピーキングでは数百回から数千回の繰り返しで
す。

さらに何かの形で復習を永久に続けないと各能力が減価します。

私の場合はスピーキングやリスニングは(日常会話やニュースの理
解にはまったく支障はありませんが)ネイティヴにかなうはずがな
いとあきらめ、好きなリーディングに重点を置いています。

仕事にもぴったりの方法です。

SSS多読法の場合、知らない単語がほとんどない本を選ぶのが骨子
です。

これは、ditaさんも言及されていた「基本語を駆使する術(す
べ)」を身につける最適の方法のひとつです。「基本語の辞書」を
暗記する方法に比較すると、密度はかなり落ちますが、もっと楽に
実行できるという利点があります。英英辞典を読めば、英語を読ん
でいることに変わりはありませんが、本であればひとつの物語に出
会える喜びがあります。

30ページ原書講読するより、たとえ絵本でもたくさん辞書なし
で、絵や簡単なストーリを楽しみながら、読んだほうがずっと効果
があります。

やさしいものを読むこと=幼稚な所為(しょい)では決してありません。私も
「Scholastic Children's Dictionary」をよく見ます。絵や写
真がいっぱいあって分かりやすいし、語彙数はせいぜい2万語程度
で知らない単語はゼロですから、リラックスできることこの上なし
です。

作家の井上ひさしさんは語彙の意味に不安があるときまず小学生用
の国語辞典を見るそうです。司馬遼太郎さんは児童用の百科事典を
よく使ったそうです。

さて、SSS多読法にも限界があります。この方法で強烈に理解でき
る(これは感激です!)語彙や構文も多いですが、レヴェルが限ら
れます。これだけで習得できる語彙数は5000語ほど、構文もあ
やふやに終わってしまうものがあり、精密さを欠きます。

SSS多読法だけでもたとえば日常会話や日本の英字新聞であれば何
とか対処できるでしょうが、たとえば英検1級合格は不可能です。「いや、
私はそれだけで合格した」と言う人がいるかもしれませんが、そん
な人は必ず他に何かをしています。

勉強法のすべてに通底(つうてい)する秘訣は「絶対量」の確保です。

臨界量に達しない場合、有意味な変化は起きません。

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読書と辞書

読書の秋ですね!

先日、他のサイトで、「読解力を向上させるにはどうしたらいいでしょうか」という問いがありましたので、「徹底的に調べ尽くす精読1000ページと普通の読書5000ページ」が有意味な基準になるという話をしました。

これは単に英検1級合格(=プロになる、または本格的に読書などを楽しむための「基礎」)だけを念頭に置いたのではなく、それ以上の英語力を目指すための方策です。

この精読に関連して数学者のピーター・フランクルさん(母語はハンガリー語 ― 日本語も驚異的な実力)が興味深いことを書いておられますので、以下に引用します。引用したのは彼が日本語で書いた「ピーター流らくらく学習術(岩波ジュニア新書)」です。

『ぼくは、親が持っている小さな別荘に行って、フランス語を一生懸命勉強することに決めました。そして一人でその別荘に行きました。別荘地だから、夏には人が多いけれども、春や秋にはほとんど人はいません。店も開いておらず、ただ一つセルフサービスのレストランが開いていました。それも昼しか開いていません。自転車は夏にパンクしたままでしたから、レストランまでは二キロ以上も歩かなければなりません。それでぼくは毎日昼ごろにそのレストランまで行って、たくさん食べました。そして、パンをもらったり、少しサンドイッチを買って別荘に戻りました。
 それ以外の時間は、ほとんど丸一日別荘の中にいました。日が当たる昼間は一時間ぐらい外でもお手玉の練習をしたりしますが、それ以外はほとんどベッドの中でした。ハンガリーの四月はまだ寒いのです。
 ベッドの中で、ときには日の当たるベランダに座って、四百ページもあるフランス語の本を読みました。先生の選択はフラソワーズ・サガンで、とてもよかったのです。というのは、サガンは文学的な価値はあまりないと思いましたが、その文章が簡単で読みやすかったからです。こうしてぼくは一冊の本を全部読みました。
 先ほど、外国語を学ぶときは翻訳してはいけないと言いましたが、それは相手と会話するときの話です。そのさいに頭の中で翻訳するのはいけないのですが、本を読んでいるときにはかならず辞書で調べるべきです。全体の意味があるていどわかる場合、人間はだいたい楽をすることが多く、わからない単語の意味を調べようとはしません。そして、その単語が四回も五回も出てくると、どうも気になってついに調べることになります。
 ところがそれは大損なのです。なぜかというと、最初に調べておけば、二回目に出てきたとき、三回目、四回目、五回目は復習になって、その単語を覚えてしまえたのです。五回目にはじめて調べたら、復習のチャンスを四回もなくしたことになります。だから、ぼくはわからない単語を全部調べながら、三週間弱でこの本を全部読みました。そのあいだに、わからなかった単語を1000語以上も単語帳に書いて、ほとんど覚えてしまいました。そして先生が戻ってきたときには、ぼくは流暢にフランス語が話せるようになっており、彼女にすごくびっくりされました』

フランクルさんのような天才の話に、根気だけで持ちこたえている己(おのれ)を持ち出すのはまことに恐縮ですが、私もまったく同じような精読を3冊(1500ページほど)しました。そのうちの一冊は「The Japanese Today (Edwin O. Reischauer) 本文412ページ」でした。

そのあとで、ライシャワーさんの講演を聞きましたが、まるで精密画を見るように理解できました。話す文体(スタイル)も本とぴったり同じでした。それが英語であることも忘れるほどでした。

ちなみに、フランクルさんがしたという片道2キロ程度の散歩やお手玉などこそ頭を活性化させ暗記力も高める最適の方法であることが、特に最近の研究によって科学的に実証されています。

またまた私事ですが、毎日40分速歩します。その効果たるや実に明らかです。もちろん辞書暗記にもおおいに役立っています。

Thank you.

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