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SSS多読法

SSS多読法について。

数年前から知っていますが、すばらしい方法で、しかもそれを実際
の授業でも実行されていることに感銘を受けました。勇気ある行動
です。

内容も具体的で、読む本もレヴェル別に詳細に例示され、誠意のあ
ふれる取り組みです。

SSS多読法は私の「辞書暗記」と共通の視点があります。

それは、「日本人の英語に接する時間の絶望的な少なさ」を自覚
し、そのギャップを少しでも埋めたいという願いです。

各人の言語能力がほぼ完成する20歳までに英語に触れる時間をネ
イティヴと日本人で比較すると、だいたい100対1になります。

SSS多読法はこのあまりにも大きいギャップを、「多読」によって
補おうとしているわけです。リーディングに主眼を置いた方法で
す。

たとえば、大学の「原書講読」で1年間に20~50ページ訳読だ
けしてもなーーーーんにもならない。ひたすら日本語に訳している
だけで、実際に英語に触れる時間は極小で、それで英語が上達する
ことはない! 

一方、私は「語彙面」でこの100対1のギャップを短期間で埋め
る「唯一の方法」として「辞書暗記」を提唱し実行しています。そ
れを短期間(2~5年)で成し遂げる方法は他にないと思っていま
す。

リスニングやスピーキングの側面についても、具体的で効果も実証
されているすばらしい方法が提唱されています。

これらは、どの側面に重点を置くかによって方法は異なりますが、
「絶望的な英語に接する時間不足」に対処するという点では同じ視
点を持っています。

そして、いずれの方法も膨大な訓練時間を必要とします。100万
語であり、私の辞書暗記では1~5年(レヴェルによります)であ
り、リスニングやスピーキングでは数百回から数千回の繰り返しで
す。

さらに何かの形で復習を永久に続けないと各能力が減価します。

私の場合はスピーキングやリスニングは(日常会話やニュースの理
解にはまったく支障はありませんが)ネイティヴにかなうはずがな
いとあきらめ、好きなリーディングに重点を置いています。

仕事にもぴったりの方法です。

SSS多読法の場合、知らない単語がほとんどない本を選ぶのが骨子
です。

これは、ditaさんも言及されていた「基本語を駆使する術(す
べ)」を身につける最適の方法のひとつです。「基本語の辞書」を
暗記する方法に比較すると、密度はかなり落ちますが、もっと楽に
実行できるという利点があります。英英辞典を読めば、英語を読ん
でいることに変わりはありませんが、本であればひとつの物語に出
会える喜びがあります。

30ページ原書講読するより、たとえ絵本でもたくさん辞書なし
で、絵や簡単なストーリを楽しみながら、読んだほうがずっと効果
があります。

やさしいものを読むこと=幼稚な所為(しょい)では決してありません。私も
「Scholastic Children's Dictionary」をよく見ます。絵や写
真がいっぱいあって分かりやすいし、語彙数はせいぜい2万語程度
で知らない単語はゼロですから、リラックスできることこの上なし
です。

作家の井上ひさしさんは語彙の意味に不安があるときまず小学生用
の国語辞典を見るそうです。司馬遼太郎さんは児童用の百科事典を
よく使ったそうです。

さて、SSS多読法にも限界があります。この方法で強烈に理解でき
る(これは感激です!)語彙や構文も多いですが、レヴェルが限ら
れます。これだけで習得できる語彙数は5000語ほど、構文もあ
やふやに終わってしまうものがあり、精密さを欠きます。

SSS多読法だけでもたとえば日常会話や日本の英字新聞であれば何
とか対処できるでしょうが、たとえば英検1級合格は不可能です。「いや、
私はそれだけで合格した」と言う人がいるかもしれませんが、そん
な人は必ず他に何かをしています。

勉強法のすべてに通底(つうてい)する秘訣は「絶対量」の確保です。

臨界量に達しない場合、有意味な変化は起きません。

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