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リンカーンの演説(7)

Gilderoy さん、私の「確認」事項を了解いただきありがとうございました。その他の点に関しては後日に検討したいと思います。

さて、本論です。

私の主張: 『「動詞派生名詞 of A, by A」というパターン』において、その「動詞派生名詞」は「自動詞」になる

つまり、上記のパターンは、『自動詞派生名詞 of A, by A』という形に収斂(しゅうれん)します。

government of the people, by the people, for the people ということばは、宗教改革の父と言われるジョン・ウィクリフが史上初めて英訳した聖書(当時の聖書はラテン語)に記したフレーズだったようです。14世紀のことです。

したがって、かなり古くからある英語起源のことばです。

その英語のことばの意味を、「人民が、人民のために、人民を統治すること」と解釈するのは、1部の日本人だけでしょう。

英語を母語とする人のなかで、私の知る限り、「人民が、人民のために、人民を統治すること」と解釈する人はいません。

マーク・ピーターセン氏が自著の『ニホン語話せますか?(新潮社)』で、「英語圏で141年以上も続いてきた常識的受け止め方が引っ繰り返される、リンカーンも驚くに違いない、突拍子もない文法的解釈」と述べています。

突拍子もない文法的解釈」というのが英語圏のインテリの正直な感想でしょう。

ネイティヴは、of A の A を ― 主語 / 所有者 / 由来 と解釈しますが ― 目的語(他動詞派生名詞とする解釈からの結論)だとは考えません。

実際は、そんな文法分析はするはずもなく、意味を直感するはずです。

マーク・ピーターセン氏は、上掲書で、『リンカーンの言葉について簡単に言えば、government ( which is ) of the people ( and is ) by the people ( and is ) for the people (ちなみに、中国ではこれを「民有、民治、民享的政府」と訳されているようだが)のof the peopleは、いわば、「人民の合意の上で出来た」や、「人民の間から生まれた」などのような意味を表している。リンカーンはこの言葉で「government=政治」を説明しているわけで、 governmentに統治されるのはthe birdsでもthe flowersでもなくthe peopleだよ、とわざわざ述べる必要も意図も、言うまでもなく、ない』とも述べています。

「governmentに統治されるのはthe birdsでもthe flowersでもなくthe peopleだよ、とわざわざ述べる必要も意図も、言うまでもなく、ない」という部分は、私が「 government は自動詞派生名詞」だと主張していることを ― 文法的な分析なしに ― 直感的に示していると思います。

私も、「人民の、人民による、人民のための政治」で何の違和感も感じません。構文上の不自然さもまったく感じません。

同じパターンを取る他の ― リンカーンの演説以外の ― フレーズを検索してみても、『自動詞派生名詞 of A, by A』という解釈を適用できないものは全くありません。何の矛盾も生じません。

それなのに、丸谷才一氏、山形浩生氏、『リーダーズ英和辞典』、『プログレッシブ英和中辞典』などの極めて影響力の大きい人や辞典が「突拍子もない文法的解釈」を主張するのでしょうか?!

こんな構文解釈を最初に発明したのはだれなのか、ご存知の方があれば、ぜひ教えて欲しいです。

なお、私が間違っていると思われる方は、実際の例文とコンテクストを提示して、その旨ご教示ください

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Comments

はじめまして。

英語の辞書をアマゾンで探していて、書評からこちらにたどり着きました。記事がとても示唆に富む内容ですので、遡って拝見いたしております。

もう6年前の話になりますが、2011年の今の時点で振り返ってみると、「人民による支配」とする解釈は中国関係者による意図的な歪曲では無いかと思えてなりません。

貴ブログは、英語関係ではとても貴重なブログなので、ここで政治的な議論をするつもりはありませんし、この件に関するコメントは今回で終わりにします。

さて、英語に関しては、今、「英語耳」で
発音をやり直しています。「単語耳」も全巻購入しましたので、こちらをやり終えてから、辞書の暗記をやってみたいと思っています。

5万語の語彙構築を達成したら、どんな風景が広がっているのか、自分でもそれをぜひ体験したいと思っています。


Posted by: youta | November 27, 2011 at 06:25 PM

youtaさんへ。

はじめまして。

> 英語の辞書をアマゾンで探していて、書評からこちらにたどり着きました。

ありがとうございます。

私も AMAZON にはたいへんお世話になっています。そのコンテンツはもちろん、ビジネス手法にも大いに興味があります。

当初は長期間赤字続きであったにもかかわらず、株価も崩壊せず、大胆な投資を維持してビジネスに革命を惹起し、その後も世の瞠目を集めながら業界をリードするジェフリー・ベゾスはまさに現代の英雄の1人でしょう。

> もう6年前の話になりますが、2011年の今の時点で振り返ってみると、「人民による支配」とする解釈は中国関係者による意図的な歪曲では無いかと思えてなりません。

ひとつのおもしろい観点かもしれません。

私は、ブログでも述べましたように、英語の文法・構文の観点からも、キリスト教会・聖書の問題に端を発する歴史的な由来からも、英国の植民地であったアメリカの成り立ちからも、リンカーンが活躍した時代背景からも、民主主義の基本原則からしても、「of - by - for」の構文に依拠した他の発言からも、意味に疑義の生じようがない自明なことだと思っています。

ただ、相変わらず異論があり、どちらが正しいと言える人がいないことも、事実です。私には不思議な現実です。

> この件に関するコメントは今回で終わりにします。

賛成!

> ・・・発音をやり直しています。

発音教本を書いている人なども、実はほとんどの場合、程度の差こそあれ、明らかに日本語なまりの不自然な英語の発声をしています。

それで充分話せるし聞き取りにも致命的な支障をきたすことはまずありません。細かいことは気にせずに基本的な要所要所を押さえればOKだと思っています。ご利用の「耳」を含めそのための教材も豊富にあります。

音声を欠いたら、ことばの価値は半分になります。

逆に、しゃべれて聞けたら、ご承知のことでしょうが、外国語はうんとおもしろくなります。読書をしていても音が聞こえてくるようになります。

> 5万語の語彙構築を達成したら、どんな風景が広がっているのか、自分でもそれをぜひ体験したいと思っています。

各人各様に言葉に対する感度も違うので一概には言えませんが、私の場合は別世界でした。

また、5万語達成の途上であっても、あるいはただ学習辞書を読むだけでも、確かな違いを実感できますよ。

今後とも、よろしくお願いいたします。

Thank you.


Posted by: k.y. | November 29, 2011 at 01:41 PM

k.y様

丁寧なご返事・アドバイスありがとうございます。

>細かいことは気にせずに基本的な要所要所を押さえればOKだと思っています。

 英検(大昔です。一級 二次で落ちました)、TOEIC(数年前、試しに受けてみたら820点前後)共に、リスニングがネックとなったまま(仕事で使うときはあったものの)、英語の勉強自体、長く離れていました。

つい最近、松澤氏のブログや著書で、自分の発音がいい加減であったことが第一の原因であることがわかりました(第二は語彙不足)。今は、発音練習を続けています。一ヶ月半ですが、手ごたえを感じつつあります。

ご指摘のとおり、完璧な発音と言うのは無理なので、要所を押さえて、と言うスタンスでいきます。

>読書をしていても音が聞こえてくるようになります。

こういう境地を早く味わいたいものです。

>ただ学習辞書を読むだけでも、確かな違いを実感できますよ。

ジュニア・アンカー、本屋で立ち読みしたのですが、「へー、知らなかった。」と言う箇所が随分ありました。軽くみてはいけませんね。 推奨なさる意味がよくわかりました。 
習い事は、何事も基礎が大事ですね。わかっているつもりが、実は全然わかっていない・・・

ナノ・アンチ・バベルを始める時は少し先になりそうですが、その際はご連絡差し上げます。

今後とも、よろしくお願いいたします。


Posted by: youta | November 29, 2011 at 10:16 PM

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