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リンカーンの演説(12)

もっと多くのみなさんのコメントをいただいたあとでその各コメントにお答えしようと考えていたのですが、Gilderoy さんと「英語と格闘」さん以外の方からはコメントがないようでした。

それで、「英語と格闘」さんからのコメントに対しては ― 「k.y.パターン」の確認という形で ―「 リンカーンの演説(11)」において最終的な回答をしておきました。

「英語と格闘」さんが新たな視点をお持ちであればまたぜひお聞きしたいと思います。

今回は Gilderoy さんのコメントに対してまとめの回答をしておきます。

> Democracy is self-government over all the people, for all the people, by all the people.

> 統治を行うのは人民(by)であり、その統治は人民のため(for)に行われ、その統治対象(over)は人民である。

> 我々はこれを『自治』と呼ぶのではないでしょうか?

「Democracy is self-government over all the people, for all the people, by all the people.」を翻訳すると、「民主主義とは全人民に及ぶ、全人民のための、全人民による自治である」となります。

したがって、Gilderoy さんの「その統治対象(over)」という解釈はあたらないと考えます。

「self-government=自治」 に「統治対象者=被支配者」を組み込む余地はありません。

「self-government=自治」とは、「自律=自らが自らを律すること」であり、「支配者が被支配者を律すること」ではありません。支配者と被支配者は「別々の人 / 人々」であり、self-government の概念にはなじみません。

> そして、その自治は誰のものでもない、人民の(of『所有』)人民による(by『動作主』)人民のための(for『目的』)ものである。これが民主主義の精神である、と。

自治=self-government の実質的な意味は自動詞としての govern の意味に相当します。したがって ( by 『動作主』 ) という発想は必然的に消失します。

だから、self-government by all the people は「全人民による=全人民が関与する / 全人民のやりかたによる」という意味です。

> また、政治とは国を統治することであり、国とは人民なのではないでしょうか?独裁的な王が民をgovernすればそれは「支配」です。でも人民が「自らの手で」自らを「自らのために」支配すれば、それは「自治」であり、民主主義なのではないでしょうか?

同感です。

> 支配の対象は敢えて言うまでも無い事柄だと思うんです。だっていつも支配されるのは人民でしょ?それより「誰のもの?」「誰のため?」「誰が?」が断然重要だと思います。

これはたいへん大事なご指摘だと考えます。

「支配の対象は敢えて言うまでも無い事柄」だという観点は、「リンカーンの演説」を歴史的に検討する場合に基軸になる視点でしょう。

> 字だけを見れば確かに「目的のof」かもしれなし、事実、統治の対象は人民。でもその奥に隠れている真意は「所有のof」であるのだから、「人民の、人民による、人民のための政治」ほど素晴らしい日本語訳は無いと思いますし、演説を聴いていた聴衆の脳裏「ofの目的の側面」など過りもしなかったと思います。

「字だけを見れば確かに「目的のof」かもしれなし」という部分は誤解です。大いなるまちがいです。それについてはすでに詳細に検証しました。

> 薬袋論は『カンマを無視して「動詞派生名詞 of ~ by ...」というパターン』に辿り着いてしまった事自体が誤りであり、他動詞か否かも問題ではありません。「カンマを無視」した事が大問題です。と、僕は思います。この3つの前置詞句は並列。よって、
The government of the people
The government by the people
The government for the people
(上記の「the」はgovermentへ係ると言うよりは前置詞句を示唆した後方照応的theなので、意味は「政府」にならない。)
の3つを合成した1文なのではないでしょうか?(翻訳通信で引用された同格説も「逃げ」だと思います。だって前置詞句は形容詞句か副詞句を作るのだから…。意味上同格であることと、構文上同格である事には雲泥の差があります。)訳読法、日本語による英語の理解を批判する解釈派の薬袋先生が、その悪しきパターンには足をすくわれてしまったのでしょうか?

『「動詞派生名詞 of ~ by ...」というパターンに辿り着いてしまった』こと自体にはまったく問題はないと思います。

次に、「3つを合成した1文」というご指摘ですが、合成ではなくもともと1つの文でしょう。

3つの government を並列した文ではなく、1つの government の民主的特質を見事に表した表現だと解釈します。

「カンマ」はなくてもまちがいではありませんが、あったほうが分かりやすいでしょう。

マーク・ピーターセンの「government ( which is ) of the people ( and is ) by the people ( and is ) for the people」という説明はさすがに明快でした。

Thank you.

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