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英語理解の定義と問題点(1)

「自分の理解と第3者の理解」

「日本人が英語を理解するというのはどういうことか」という問いかけはあまり聞きません。

あまり誰も深くは考えないのかもしれません。

それでも、「英語の理解」の定義はいろいろ考えられるはずです。

そこで、「英語の理解とは日本語に翻訳することである」としてみましょう。

通訳を通す場合はどうでしょう。

これは、終始日本語に置き換えて理解するという意味では、上の定義の典型的な例になります。

通訳が介在するので「英語を理解している」という実感はあまりないかもしれませんが、英語(で話している人の言うこと)を理解していることにかわりはありません。

プロセスはちょっと複雑です。英語を自分で理解するのではなくて通訳者の日本語を通して理解することになるからです。

英語の理解を人任せにすることです。

だから、いろいろ問題があります。「英語(話者)→日本語(通訳者)→日本語(聴衆)」という重層構造になっているために、あいだに通訳者の理解(=日本語)が介在します。その日本語をさらに聴衆が聞くわけですから、それだけでも誤解が生ずる必然性があります。さらに、通訳者の理解はあくまで第3者の理解であって聴衆各自の理解ではありません。聞くポイントがずれているかもしれません。

私は、だから、通訳を通して聞くのは好みません。

さらに、特に同時通訳の場合に問題があります。

たとえば、英語の達人・松本道弘さんの同時通訳の師匠である西山千さんという方がおられます。今はもうご高齢ですから引退なさっているでしょうが、だれが見てもたいへんに優れた通訳者でした。

私は、その西山さんの同時通訳を何かの機会に、たぶん録音で、聞いたことがあります。

ほとんど、何を言っておられるのか分かりませんでした。西山さんの日本語が分からなかったのです。音声自体の歯切れが悪くムニャムニャしていたこともあるのでしょうが、とにかく分かりませんでした。元の英語を聞いていた方がもっとよく分かったかもしれません。

まだ、あります。

レーガン元大統領の葬儀の実況中継をNHKで聞いていました。数人の女性の同時通訳者が担当していました。それぞれトップクラスのプロでしょう。

ところが、これまた何を言っているのかさっぱりわからないことがめずらしくない。日本語もむちゃくちゃになっていることがある。

私は、「同時通訳は場合によっては不可能である」と思っています。現実に、何を言っているのやらわからないわけですから、しかも最高のプロが担当してもそうなのですから、不可能な場合もあると断言してもいいでしょう。

ただ自分で聞き取るだけでも―ネイティヴでさえ聞き取りは40%ほどになる場合も多くて―たいへんなのにそれを同時に日本語に置き換えるなどやっぱり不可能でしょう。だから、あれほど高度な能力を持つプロでも、ハチャメチャになる。

アポロの月着陸を同時通訳した國広正雄さんは「あんなことは不可能だ」という趣旨のことを明言しておられました。

私は、だから、同時通訳も ― 社会的必要性は痛切に感じますが ― あまり好みません。

自分の耳で、自分流に、聞きたいのです。分からない場合も自分の耳で納得したい。

「アンチ・バベルの塔」を高層にする最大の理由は何でも日本語と同様に読みたいからです。つまり、第3者の翻訳を通したくない―自分で主体的に理解したい―からです。しかし、「アンチ・バベルの塔」の高層化は、当然、聞き取りの向上にも有効です。

深く考えながら語彙を習得していけば,大統領の演説を聴いて「人民が( by )、人民のために( for)、人民を( of )統治すること」などと解釈してしまうこともないでしょう。


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