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リンカーンの演説(15)

前回、リンカーンのことばのオリジナルはラテン語の聖書を英訳したウィクリフのことばだという話をしました。

なぜラテン語を英訳することに大きな意義があったのか?

14世紀のウィクリフが生きていたころ、聖書はもっぱら「聖職者」の占有物で、一般の信者は聖書を開くことさえ許されていませんでした。しかも聖書はラテン語で書かれていたために民衆はそのことばをまったく理解できず、また英語の賛美歌も一般祈祷書もなかった。

ラテン語を解する「聖職者」だけが神のことばを独占し、俗人を聖書から遠ざけ、教会を思いのままに統治し、特権の上に安住していたわけです。

「聖職者」が「俗人」を支配する構図です。

ウィクリフは、そんな状態を打破して「一般信者=俗人」が神の教会を統治すべきであると考えました。

そのためには、聖書を英訳して「俗人」も神のことばを理解できるようにする必要があったのです。

英訳自体が大事業でしたが、完成した英訳聖書を普及させるのも命がけでした。当時はまだ活版印刷は存在せず、多くの人が手で書き写していったのです。

英訳聖書は教会が禁書にしたため、写本をする人も弾圧を受け、そのうち数百人が処刑されました。他の協力者たちも同様な断罪を受けました。

ウィクリフが ― 彼のレトリックに従うなら ― ① 「the government of the clergy, by the clergy and for the clergy = 聖職者の聖職者による聖職者のための教会統治」に反対したからです。

「the government of the clergy, by the clergy and for the clergy = 聖職者の聖職者による聖職者のための教会統治」のアンチ・テーゼとして ② 「the government of the clergy, by the clergy and for the clergy = 俗人の俗人による俗人のための教会統治」を主張したと考えたら、何の矛盾もなく理解できます。

なお、by the people は、俗人自らの「聖書解釈」を意味します。だから、「the government of the people, by the people and for the people」は「俗人が、自ら聖書(神のことば)を読むことによって、自らのために教会を運営すること」という意味です。

しかし、① を「聖職者を、聖職者が聖職者のために統治すること」、②を「俗人を、俗人が俗人のために統治すること」と翻訳してしまったら、① と ② のテーゼとアンチ・テーゼの関係が消失し、何の意味もなくなってしまいます

ウィクリフが意図した改革の構図が消えてしまうのです

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