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リンカーンの演説(16)

リンカーンのゲティスバーグにおける演説の最後の部分は:

「われわれの前に残されている大事業に、ここで身をささげるべきは、むしろ我々自身であります。-- それは、これらの名誉の戦死者が最後の全力を尽して身命を捧げた、偉大な主義に対して、彼らの後をうけ継いで、われわれが一層の献身を決意するため、これらの戦死者の死をむだに終らしめないように、われらがここで固く決意するため、またこの国をして、神のもとに、新しく自由の誕生をなさしめるため、そして人民の、人民による、人民のための政治を地上から絶滅させないため、であります。」

米国の歴史は17世紀の始めに英領植民地としてスタートし、1776年に独立宣言が採択されます。その後の独立戦争を経て1787年には合衆国憲法が起草され1788年に各州によって批准されます。

以後、いろいろな問題を抱えて国内諸勢力の対立も続き、19世紀前半には奴隷制をめぐって南部派と北部派が鋭く対立してついには南北戦争(1861~1865)を誘発します。

南北戦争は北部の勝利に終わりますが、その大勢を決めたのがゲティスバーグの激戦(1863年)でした。

リンカーンは、そのゲティスバーブに設けられた戦没者墓地に上記の演説を献呈しました。

この演説の「government of the people, by the people, for the people」という文句は、アメリカ民主主義の端的な定義として定着しています。

だから、米国の 「the people」ということばには特別な意味があります。

南北戦争が終結し奴隷も開放された時点で、人民の、人民による、人民のための政治という建国の理念を強調し確認する意図があったわけです。

英領植民地であったころのアメリカの人々は「英国王の臣民」であり「主権・選挙権を持つ市民」ではなかったのです。

したがって、「人民の、人民による、人民のための、政治」は「国王の、国王による、国王のための政治」に対するアンチテーゼとして捉えるのが自然でしょう。

ここで「リンカーンの演説(15)」と今回のポイントを整理しておきます。

(A)はウィクリフの場合(B)はリンカーンの場合です。

① (A)聖職者の、聖職者による、聖職者のための(教会)統治 ⇔ (アンチA)俗人の、俗人による、俗人のための(教会)統治
② (B)国王の、国王による、国王のための政治 ⇔ (アンチB)人民の、人民による、人民のための政治 

① の(A)において 「government of 聖職者」が「聖職者を統治すること」を意味せず、「聖職者統治する」ことを意味することは明らかです。 もちろん、「government of 人民」は「俗人統治すること」です。

② の(B)において「government of 国王」が「国王を統治すること」を意味せず、「国王統治する」ことを意味することは明らかです。 もちろん、「government of 人民」は「人民統治すること」です。

宗教改革運動も独立戦争も、歴史的な文脈における「テーゼ対アンチテーゼの構図」であることは、革命的な要素を含むあらゆる運動に共通していえることでしょう。

改革・革命運動のダイナミズムと言い換えてもかまわないと思います。


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