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記憶(4)

有塔(=有灯)と無塔(=無灯)

今、『世にも美しい数学入門』という藤原正彦氏と小川洋子氏の対談集を読んでいます。その中で、次のような暗記・暗誦の話が出てきます。太字はk.y.。

(引用開始)藤原: 数について何かを発見するためには、数を転がして、ころころと手のひらで弄(もてあそ)ぶことが一番重要なんです。足したり、引いたり、ひっくりかえしたり、想像したりね。そうするともしかしたらこうかなという、ちょっとしたきっかけがみつかり、そこから大胆にいろいろ実験してみて、本当そうだったらいよいよ証明にかかる。証明になったらたいていの場合、もう赤子の手をひねるようなものです。そこまで、いろいろ弄ぶんですね。弄ぶというのは、独創に非常に良い影響をあたえます。たとえば美しい文章を読んで理解していても、その人の宝石にならない。暗誦したり、思い出して口ずさんだり、言葉を弄ぶというのが大事だと思いますね。だから、図形で発見したければ図形を弄ぶことです。ああでもないこうでもないと、いろいろ図形を描いて考えながら遊ぶことですね。
 数学の天才なんかみると、わりあい弄ぶことをやっているんですね。算数とか数学とは限りません。漢文の素読をしたりとかね、物語をお母さんに読み語りをしてもらうとか。たとえば、大正時代に世界の最先端に一気に追いついた、高木貞治という岐阜県生まれの、ものすごい数学の天才がいるんです。このあいだ、ちょっと岐阜に高木貞治を調べにいったら、幼少の頃は算数なんてなんにもしていないんですね。三歳、四歳、五歳、六歳とか、漢文の素読とか物語ばかり読んでるんです。それで全部暗記しちゃったと。お母さんによくお寺に連れて行かれて、お寺の坊さんのとなえる親鸞上人の何とかいうお経まで暗記しちゃったり。あれが独創性に繋がったんだなって思いました。暗誦というのは非常に独創性にかかわることと思います。さっきいったラマヌジャンも似ています。お母さんが何千ページにも及ぶ叙事詩、ラーマーヤナとかマハーバーラタの大部分を暗記していて、おさないラマヌジャンにしょっちゅう聞かせていた。インドではあれは口から口へと伝わっていったものらしい。それで彼も暗記しちゃったわけです。母親のように、いつもそれを口ずさんでいたのではないかと思います。

小川: 最近はゆとり教育などと言われて暗記することが否定的に扱われていますけれど、違うんですね。暗記することで言葉や数を宝石に変えられる。それは人間にとって絶対に必要な教育です。(引用終止)

内容もリズムも豊かなものを暗記・暗誦することで頭脳が活性化する。たとえ暗記したものを忘れても活性化された脳はその人独自のものを創造していく。人間の脳は情報を静的に蓄積するだけのコンピュータのメモリとは異なる。たえまなく情報を取捨選択し加工し互いに融合させて人を創造的に進化させるのだ。

「アンチ・バベルの塔」も単なるメモリではありません。塔が高層化する過程で脳はまちがいなく進化を続けているわけです。やってみれば実感できます。それは―私はそうはまったく思いませんが―ささやかな効果に過ぎないかもしれません。しかし、塔をまったく築かないままたとえば多読だけ繰り返すのに比較すれば格段に大きな効果をもたらすことは明らかです。たとえ、2~3万語の塔であっても―強固に築かれた塔であるなら―無塔の人に比べたらはるかな高みに立つことができます。リーディング・リスニング・暗誦も容易になり、視界が明るく開けるのです。2年間ほどの集中学習が生涯の知的生活を快適で豊かなものにしてくれます。

追記:この記事( http://musicianese.cocolog-nifty.com/musicianese/2005/03/eng014c.html )おもしろいです。

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