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コメントにお答えする(11/2005)

しょちょう さんへ

コメントをいただきありがとうございます。

しょちょう さんのシャープな議論をぜひお聞きしたいのですがそれは不可能なので非常に残念です。

暗記に関してですが、私は、正確な暗記(=正確な理解を伴う知識の蓄積)を前提としない議論はありえないと考えていますし、そうした前提を欠く話は議論というよりも雑談です。もちろん、雑談も、滑らかな人間関係を生み出す重要な役割を担っていますから、なくてはならないものです。しかし、ロジックに基づいて展開される議論ではありません。

また、日本人の学生が薄っぺらな暗記(≠正確な理解を伴う知識の蓄積)だけが強くて議論に弱いとは決して思いませんし、事実でもありません。たとえば英国人の学生がが日本人の学生より議論に強い事実もありません。

私は、どこの国の学生であれ、人によって差があるのだと思います。

日本語と英語の違いもあり、これは優劣の比較にはなじまないものです。

> 議論をさせると(語学力のハンディーを差し引いても)目を覆いたくなるような状態になります。

留学しておとなしくなってしまうあるいはしどろもどろになってしまう日本人学生の英語力と同程度の日本語力の英米人が日本に留学して日本語による議論になるととたんにおとなしくなってしまったりしどろもどろになったりします。きわめて高度な日本語力を持つ人であっても日本語では決して議論をしない英米人もいます。

> ちなみに抜粋されている翻訳のチュートリアルですが、これは「翻訳」という特殊なテーマなのでこうなっているだけで、一般的にチュートリアルでは暗記はそれほど重要視されていません。むしろシャープな議論ができるかどうかが問われます。

留学といってもその態様は実に多様でしょう。抽象的に一括して述べることはできず、個々の具体的な事例に即して述べるしかないと思います。

さらに、繰り返しになりますが、正確な暗記(=正確な理解を伴う知識の蓄積)に基づかない議論を、私は、聞いたこともないししたこともありません。そうしたものを議論だとも考えません。たとえば、正確な暗記を前提としない哲学史の議論などあり得ません。

> 記憶偏重の教育は転換期に来てしかるべきだと思います。

最近10数年間に及ぶ日本の文科省主導の記憶(=正確な理解を伴う知識の蓄積)軽視の教育は明らかで深刻な学力の低下を招いてしまい、産官学それぞれにおいて危機感が深まり、今まさに記憶重視の教育に転換されつつあります。

いずれにしても、教育の問題は人により国によりまた時代の要請等によって実に多様な要素や矛盾を孕み、容易に結論を出せるものではないようです。

今後ともよろしくお願いいたします。

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Comments

議論についてです。

>私は、正確な暗記(=正確な理解を伴う知識の蓄積)を前提としない議論はありえないと考えていますし、そうした前提を欠く話は議論というよりも雑談です。 (中略) ロジックに基づいて展開される議論ではありません。

これはどういうことでしょうか。
「ロジックに基づいて展開される議論ではありません。」の部分が何を意味しているのかよく分かりません。
「正確な知識の裏づけがなければ、ロジカルではありえない」ということでしょうか。だとすれば間違いです。論理的であることは知識を前提としません。

日本は世界で唯一の島国である。
島国の首都はワシントンである。
したがって、日本の首都はワシントンである。

こういうのをロジックというのであって、論理的には何ら誤りを含みません。

むしろ論理的な議論をするためには知識から来る「常識」や「権威者の意見」が邪魔をすることもあります。(そういうものに邪魔されるのはロジカルでない証拠ですが。)

あるいは、「ロジックに基づいて展開される」の部分は単に「議論」にかかる形容詞であって、前半の知識云々とは関連していないのでしょうか。だとすれば、「知識の裏づけがない話は議論とはみなさない。それは雑談である。一般に議論とはロジカルなものであるが、それはともかくとして、雑談は知識の裏づけがないという理由により、議論ではない。」と言っておられるだけなのでしょうか。

>正確な暗記(=正確な理解を伴う知識の蓄積)に基づかない議論を、私は、聞いたこともないししたこともありません。そうしたものを議論だとも考えません

正確な知識に基づかない話を議論だとみなさないのであれば、そういう議論を聞いたことがないのは当然です。なぜなら、正確な知識に基づかない話はあなたにとって議論ではないからです。(←こういうのをロジックと言います。)

日本人がよく議論下手だと言われるのは、一般的に言って日本人は「察しの文化」の中で生きているからです。家庭でも学校でも、「相手に自分の意見を正確に伝える。相手の意見を正確に理解する。」という訓練を受けておらず、「相手が何を言いたいのかは、相手の少ない言葉や表情、その場の空気などから読み取る」という訓練を受けて育っています。この点が英語圏の文化との決定的な違いです。知識量の問題ではなく、根本的に日本人は議論下手なのです。言葉を濁し、ニコニコと中途半端に微笑んで何とか相手に分かってもらおうとすることに慣れているからです。

日本語に堪能な英米人が日本語で議論をしようとしないとすれば、日本語に熟達すればするほど、上記のような日本文化に精通し、その結果、日本人とは議論を避けようとするからではないでしょうか。

英語圏の学生と日本人学生との違いについては、以下の文を引用してみたいと思います。
数学者・藤原正彦さんのエッセイ『若き数学者のアメリカ』p251以降からの抜粋で、アメリカの大学生は勉強熱心であるというくだりに続く部分です。

(引用)
それは彼らが、ある意味では高校時代までに勉強らしい勉強をほとんどしていないということである。アメリカでの大学初年級の学生たちの数学、歴史、地理、科学一般等に関しての知識は驚くほど乏しい。
(中略)
もちろん、何もしなかったと言うのは誇張であるが、知識を詰め込まれていないということだけは、紛れもない事実だ。
それでは、小学校から高等学校までの間に、学校では何を教えていたのだろうか。人に聞いた話を総合すると、アメリカの学校では、知識を詰め込むことよりも、「いかに他人と協調して仕事を進めるか」とか「いかに自分の意思を論理的に表明するか」とか「問題に当面した時、どう考え、どう対処していくか」とか「議論において問題点をどう掘り出し展開するか」などといった基本的なことに教育の重点を置いているらしい。そのせいか、地図上で日本をフィリピンと間違えるようなハイティーンの小娘でも、議論になると滅法強い。考えがきわめてしっかりと練れており、言い表し方も論理的であるし、そのうえ、相手の弱点を衝くのが巧い。一気に押さえ込もうとして何か独創的なことを言うと、
「それは面白い見方ではあるが、あなたは数少ない現象から不当に一般的な結論を導いている」
と、言うし、どこかで聞いたか読んだ覚えのある意見を述べると、
「それは平均的かつ陳腐であり、時代錯誤でさえある」
などと言う。とにかく、この連中と口論になって相手を黙らせたことは一度もない。彼らの言うことは、確かに妥当で隙がない。しかし反面、斬新さもなく、議論しているうちに、こちらの論理的飛躍を指摘する巧さだけが目に映ってくる。
(中略)
それはともかくとして、彼らが日本の学生に比べて知識においてはかなり見劣りするのに、精神的にははるかに成熟しているように思われるのは、面白い現象だ。問題なのは、この差異が学生間だけに止まらず広く一般人にも認められることだ。暗算がロクに出来ない主婦でも、考えることは驚くほど堅実でしっかりしているし、政治家やスポーツ選手などのインタビューを聞いてみても確かに明晰で、筋の通った話をする。平均的な日本人とアメリカ人を集め、知識に関する試験をしたらアメリカ人が劣等に見えるだろうし、話し合いになったら日本人はまるで太刀打ち出来ないだろう。この差が教育によるところは明らかである。どちらの教育にも一長一短はあるが、一つだけ感ずることは、知識というものは、必要になれば学校で教わらなくとも自然に身についてくるものであるのに反し、論理的な思考方法とか表現方法は、若い時に身につけないと後になってはなかなかむずかしいということだ。
(引用終わり)

ちなみにこのエッセイが書かれたのは1978年ですから、今とは事情が多少変わっているかもしれません。一方、この当時の日本では戦後もっとも高度な指導要領によって、知識重視の教育が行われていたことは事実です。その時代に日本とアメリカで大学生を指導した人の文章であることに少なからぬ意味があります。

以上のことから、
1.「それを"議論"と呼ぶかどうかはともかくとして、ロジカルな話をするのに知識は必要ない。」
2.「日本人は知識は多いが、議論は下手である。」
という2点を主張します。

Posted by: puppy | May 30, 2005 03:04 AM

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