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英語名人世代(4)

引用の続き:

 小学生くらいのうちに外国語の環境にもろにさらされると、その外国語がいつの間にか母語として身についてしまうという現象がある。海外駐在員などの子弟のいわゆる帰国子女の中にこういうケースは少なくない。明治の「英語名人世代」の人々の間にも、外国語であるはずの英語の方が母語であるはずの日本語より自由になった人々が少なくなかった。「二十代の頃には、英語の本を読む方が、日本の本を読むより、遥にやさしいくらゐであった」(内観外望」、新渡戸稲造全集第六巻、教文館、一九六九年)と告白している新渡戸などはその一人であった。このことは言いかえると、彼らの多くにとって英語が実質上の母語になっていたと言ってもよい。
 私たちは一般に、ある言葉を母語としている人たちに対して、その母語ができることを賞賛することを滑稽と感じる感覚をもっている。だから例えば、フランス人に対して「フランス語がよくおできになりますね」とはまず言わない。明治の「英語名人世代」の人々が英語がよくできたことに感心するのは、実はそれに似た多少見当はずれなことなのである。ほとんど全科目をアメリカ人教師が英語で教えるといった草創期の札幌農学校で学んだ「英語名人世代」の一人、宮部金吾(新渡戸や内村と同級生)は、そのことに対して、「横浜から東京の少年時代にも殆ど外人の教師のみについて学んできたので、私は別に不便を感じなかった」(宮部金吾博士記念出版刊行会編集兼発行『宮部金吾』一九五三年、五九ページ)と書いている。宮部のような教育を受けた者が、英語ができなかったら、その方がむしろ不思議なのである。(引用終止)

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