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養老孟司さんの「整理整頓」(1)

養老孟司さんが雑誌 『諸君』 の1994年3月号に「整理整頓」というエッセイを寄稿している。

おもしろいエッセイなのでいくつかに分けて収録しておくことにした。

(引用開始)

整理整頓

 昨年中に本の収蔵庫を家の中に作った。それまで本は、一部を除いて、物置に入っていたのである。物置に本があると、探している本がどこか、見つからないことが多い。そのうえ、場所を節約しようとして横に積み上げる。それを三段ほど、前後に並べると、もういけない。後方の本は、二度と日の目を見ないことになる。
 今度はそれが、やっと表に出てきて、一望のもとにというほどではないが、ともかく全体が見渡せるようになった。不思議なもので持っている本はほぼ覚えている。こんなの、いったいだれの本だ。そう思うようなものは、あまりない。間違って紛れ込んでいるのはたいていは娘の本で、これは私が自分で読むはずがないことがすぐにわかる。『女子高校征服図鑑』というようなものは、私は絶対に買わない。その代わり『日本昆虫図鑑』なら、間違いなく私の本である。
 狭い場所だから、移動式の本棚にした。動かしてみるとなかなか重いから、歳を、とったら本棚にはさまれて、本人が平たく潰される恐れがある。本の整理中に、そういうふうに平たく潰れたヤモリや昆虫が出てきたりすると、いまや身につまされる。
 ともあれ、どんどん本が収納できるのがなんとも楽しみである。これまで自分の本が本棚に納まり切った経験がない。それがなんとか納まるのだから、ありがたいことである。
(引用終止)

(k.y.の感想

養老先生のような読書人は別格だが、私も増え続ける本にはかなり難儀してきた。それこそ生き物のように増殖して少しでも隙間があれば侵入してくる。しばらくでも放置しておくと手がつけられない無法地帯を形成する。

何かを書いている途中で参照したい本が出てきてもどこに埋もれてしまったのか分からない。探し出す時間がなんとももったいない。しかも、探し物をしている最中にうっかり別の本を読み出したりするとたいへんなことになる。半日ぐらいあっという間に過ぎ去る。気がつくと別のものを探していたりする。

ついに探し出せなくてあきらめた本が何ヶ月もたってから忽然と現れることがある。「もう手遅れなのに…」と思いながらまたその本を読みだしてしまったりする。貴重な時間が失われていく。ただしそんな時間のすごし方がいやではない。いや、けっこう楽しいのだ。新たなアイデアがわき希望がふくらんでくる。

感激するときもある。たとえば、古い本のページに英字新聞の切抜きを見つけたようなときだ。未知の語彙にアンダーラインを引いて発音記号も日本語の意味も英英辞典の説明も書き込んである。今では、そのどの語彙も容易に理解できる。すべて既知の語彙と化している。こんなときはほんとうにうれしい。進歩のあとがまざまざと見えるからだ。

もちろん日本語の新聞の切り抜きもはさんである。活字の細かいのに驚く。たまたまその裏面にあった株式欄を見て当時の株価の安さに感心したりする。写真にある有名人の顔の若さにびっくりするときもある。広告されている電化製品がなつかしい。

かくして、私はめったに退屈しない。1日が短すぎる。

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