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記憶(15)

澤口俊之さんは、『したたかな脳(日本文芸社)』 という本を書いています。

著者紹介によると、澤口さんは「北大医学研究科高次脳機能学分野教授。専門は認知神経科学、霊長類学、思考や自我のベースであるワーキングメモリに照準し、前頭連合野を中心とした研究を展開している」そうです。

さて、その『したたかな脳』 のなかに次のような1節があり、私が日ごろから最も関心を寄せていることのひとつなので、引用しておきます(タイトル以外の太字k.y.)。

(引用開始)

記憶こそ創造性の源

 誰かの顔を認識する際、そのつど顔の情報を事細かに処理しているわけではありません。Aさん用、Bさん用、それぞれの情報の「鋳型」が、すでに記憶として脳内にあって、これに即して処理します。こうやって私たちは、Aさん、Bさんの顔を瞬時に識別しているのです。
 目に見える記憶だけではなく、人と話したり考えたりするときも、あらかじめ脳内に記憶された言葉や知識などの膨大な記憶情報を基に行っています。本を読んだり文章を書いたりできるのも、蓄えられた記憶があるからこそなのです
 このように、脳は記憶に頼って情報を処理しているので、側頭葉・海馬・扁桃体など、かなりの部分を記憶用にあてがっています。
 また、脳が、記憶をベースに処理しているからといって、いつも過去のことばかりを処理しているわけではありません。
 記憶を基に処理して、新しい情報や言動が生まれ、それがまた記憶されるというダイナミクスを脳は展開しています。
 記憶の予想外の組み合わせで、思いがけないひらめきや発見が生まれ、創造性が発揮されることもあります
 逆にいえば、記憶なくして創造性などありえません。独創的でクリエイティブな活動にも、記憶情報はなくてはならないものなのです。
 「ひまわり」の絵で有名なゴッホは、日本の浮世絵の色鮮やかさに惹かれて、その表現法を学ぶために、浮世絵を丹念に模写しています。
 ゴッホのみならず、どんな独創的な画家も、天才ピアニストも、はじめは先生や先輩の模倣からはじまります
 それは、創造活動のベースとなる情報を蓄積するためです。知識や技能という記憶情報が不十分な人に、クリエイティブな仕事は何もできません
 要するに、記憶とは、かくも大切なものです

(引用終止)

<k.y.談> 「ゆとり教育」のとんでもない弊害の基にあるのは上記の「引用」で指摘されていることを無視してしまったことにあります。個性を大切に(個性など放っておいても現れる)とか、子供の目線で(大人が子供の目線で見ることなど不可能)とか、創造性を育む(記憶もない空っぽの頭から創造性などでてこない)とか、「幼稚極まりない阿呆なおしゃべり」が「ゆとり教育」を推進してきた。

「がんじがらめの暗記教育」を是認するわけではもちろんありません。小学生を塾詰めにするなどもってのほかでしょう。たとえば、日の暮れるのを忘れてフィールド(野山ならもっといい)を走り回ることも立派な経験になるし記憶になるからだ。

しかし、児童がちょっとがんばれば記憶できる程度の知識はどんどん与えてあげるべきである。子供たちの頭の容量は大人が考えがちなほど小さくはない。教育の仕方によれば驚くほど多量の情報を苦もなく吸収できる児童も存在します。

なぜ「脳が、記憶をベースに処理しているからといって、いつも過去のことばかりを処理しているわけではありません。 記憶を基に処理して、新しい情報や言動が生まれ、それがまた記憶されるというダイナミクスを脳は展開しています」という事実を認めようとしない人が多いのでしょうか?

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