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ディクテーションについて

以下の引用は、http://www.eigokyoikunews.com/eigokyoiku/essay/200412/index.shtml にある「英語教育」2004年12月号(大修館)の記事の引用です(太字k.y.)。[...] の ... は転写不可能の部分。

(引用開始)

ディクテーションで繰り返される間違い

東京外国語大学助教授 斎藤弘子 Saito Hiroko
   
ネイティヴも間違える

オーストラリアの小学校に通っていたとき、毎日のようにディクテーションをやらされた。先生が読み上げる文章を書き取るのであるが、英語のネイティヴスピーカーたちでも、なかなか満点がとれず、四苦八苦していたものだ
 
彼らは、難しい単語の綴りを間違えるのはもちろんのこと、日本人からすれば「なぜこんな間違いをするのか」という間違え方をすることがあった。大人でも間違える代表格はI could [would/should/might] have ....のhaveをofと書くことである。発音するとき、このようなhaveの/h/は脱落し、母音が弱化して [...] となるが、これがofの発音と同じだからである。日本人学習者がこの間違いを犯さないのは、普段このhaveを/h/の部分もはっきりと [...] ないし「ハブ」と発音しているからである。

(k.y.注:日本人がこれを間違えない場合、 have の h をはっきり発音していることに加えて、あるいはそれ以上に [would/should/might] have p.p. の文法事項をしっかり理解しているからでしょう。逆にネイティヴはそんな構文を意識していない

日本人の間違い

では、日本の学習者はどのような間違いを繰り返すのか。実際に大学1年生に課したディクテーションの誤答例を分析しながら考えてみよう。以下はTruman CapoteのMiriamを読んだときに行ったものである。事前に文章を見ている学生も、けっこう典型的な間違いを犯した

(k.y.注: 事前に文章を見ていても発音は我流あるいは無視である
 
誤答例:

1) *"It's a canaly," she said.

【正解と誤りの原因】

canaryの/r/を/l/と聞いてしまって起きた綴りの間違いである。同様にMiriamを*Mil( l )iam と、lで綴った学生もかなりの数に上った。この位置での/r/の発音はそれほど聞き取りにくくないので、この間違いを犯す学習者は明らかにまだ/r/と/l/の聞き分けができていない。他にsとsh、bとvを書き間違える場合も、 rとlと同様、日本人が不得意とする発音および聞き取りがそのまま文字に現れた例である。
 
誤答例:

2) *Miriam got up and move to a corner where a cover bird cage hung from a ceiling chain.

【正解と誤りの原因】

moveはmoved、coverはcoveredとならなければ文法的におかしい。しかし、実際の発音ではたしかに/d/の部分は聞こえない。それぞれ次にくる語の始まりが子音なので、/d/はmovedのときは完全に脱落し、coveredのときは舌先を歯茎に接触させるがそれを破裂させずにbirdの発音に移るので、いずれの場合も/d/が聞こえないからである

(k.y.注: 日本人は、リスニングをする場合に、音声では脱落している部分でも活字原稿には文字が記入されていると「聞き取りできていない!」と悩む人が多い。ネイティヴは発音しにくい部分は発音しやすいように変形させたり弱化・省略したりすることが多いから、そんな発声を自分でも習得する必要がある。必要があるというよりそうするほうが結局は楽に発音できるからだ。たいしたことではないのに慣れるまでがたいへんである。また、学校では、こんな発声の練習は授業の優先順位の末尾にも位置しない。授業でわざわざやるほど重要なことでもないからだ。自分で練習すれば済むことです)

誤答例:

3) *At first she thought it must be mistake ....

【正解と誤りの原因】

ここでは、mistakeの前に不定冠詞のaがつかなければならない。しかしここでもまた、aという語は学習者たち自身が普段発音しているほどには強く発音されず、前のbeにつなげて非常にさりげなく発せられるので、聞き落とされたのであろう。冠詞らしきものを聞き取ることができたとしても、よくtheをaに聞き間違えてそのように書く学習者がいる。これは本人が普段theを「ザ」のように歯に呼気を当てて強く発音しているため、実際の発音がやわらかい感じの音であることとのギャップに惑わされているのである(in the roomやon the tableのように/n/の後のtheは特にaと間違えやすい)。
 
誤答例:

4) *But inner own room in the hushed snow-city were evidences ....

【正解と誤りの原因】

英語で話したり、書かれたものを朗読したりするとき、学習者は語と語の間のスペースを音の切れ目と思い込んでブツブツと切り離して発音するが、実際には意味のまとまりのあるフレーズはつなげて発音しないと自然ではない。4)の誤答例は、in herがつなげて読まれたため ― しかもここでもまた、弱く読まれたherの/h/は脱落する ― 発音上はinnerと同じになり、そのように聞いて書き取ったのであろう。自分が普段つなげて読んでいない者には、つながって発音されたものは1語に聞こえてしまうのである。
 
*

【解説と指導法】

上で見てきたディクテーションによく見られる間違いは、大まかに3種類に分けて考えることができる。まず、日本語では区別しない子音や母音が聞き取れずに書き間違える場合。上の1)がこれに当たる。このような場合は単語ごとにlかrと綴り字を覚えるよりも、まずは正しい発音を身につけるのが結局は手っ取り早い。発音と綴りは対応しているのであるから。
 
次に、音が消えたり非常に弱く発音されたために聞こえないという、2)や3)の例。しかし、これに関しては、どんなに耳を澄ましても相手が発音していない音なので、対処法としては日頃そのような現象を意識した発音練習を心がけた上で、あとは文法の知識で聞こえない部分を補うという方法しかない。過去の出来事についての描写なのにmoveという現在形ではおかしいし、it must be mistakeは、それこそIt must be a mistake.であると気づかなければならない。
 
3つ目は、もともと知っているはずの複数の語が、つながって発音されることによって1語に聞こえる場合で、4)の誤答例がこれに当たる。これもまた、書いたものを見て文法的に何かおかしいと気づくというプロセスがなければならない。First of all が festivalに聞こえたり、レストランで“Super salad?”と聞かれたので“Yes, please.”と言ったら“Which do you want?”とイライラした表情で聞かれ、実は“Soup or salad?”と聞かれていた、という話をよく聞く。決まった場面で使用される決まり文句は、フレーズとして覚えるのが手っ取り早いと教えればよいであろう。

会話の聞き取りとディクテーションの違い

以上の例を見ると、子音や母音の聞き間違いを除くと、問題が生じるのはいずれも内容語ではなく機能語、あるいは動詞の語尾など機能的な部分に関わる事項である。聞き取りは会話のときに大いに必要とされる能力であるが、会話の際は重要な情報を担っている内容語さえ聞き取れば全体の意味が分かることが多いので2)や3)のような例は問題とならない(しかも、内容語は普通強くはっきりと発音されるので、なおさら都合がいい)。
 
これに対してディクテーションは、さらに細部まで聞き、聞くだけでなく文法の知識と正確な綴り字まで要求される、高度なタスクである。それだけに、ディクテーションを課すことで学習者の発音(発音が正しくないと、聞いた音が知っている音と一致しない)、語彙やフレーズの習熟度(知らない単語は聞き取れないし書き取れない)そして文法知識の確認と、一度にいくつもの学習成果を確かめることができる

(東京外国語大学助教授) (引用終止)

ここでも強調しておきたいのは、文法・構文・語彙の習得が聞き取りの場合でも実に大きな威力を発揮するということです。

オームのように音声を繰り返すばかりではほとんど進歩しません。

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