« 絶対必要な英単語6000語(189/365) | Main | 英語の語彙:雑談(8) »

記憶(16)劇作家・渡辺保さんの場合を参考にして(2)

記憶とアイデンティティーと創作

渡辺さんは、『クロワッサン 2005/7/25』 で次のように語っています(タイトル以外の太字k.y.)

(引用再開)

 渡辺さんはどうやって、たくさんの演目と役者の芝居を覚えるのか
 「ノートを取るんですよ。あれは昭和26年6月、確か中学3年のときだったか(さすがの記憶力!)、東劇で 『太功記』 の十段目を観たんです。初めてノートを取ったのはこのときでしたね」
 ノートを取るといっても、芝居を観ながらだから、そうそう下を向くわけには行かない。ポイントを決めて、ここぞというときにペンを走らせる。そのためにも、あらかじめ台本を頭に入れ、役のしどころ、見どころをしぼっておく下準備は必要だ。
 「それを家に帰って清書するんです。そうすると決まって、わからないところが出てくる。今度はその箇所だけを観るために通う。またノートを取る。そうやって芝居を覚えましたね
 予習と復習。これを繰り返すことで頭に、体に叩き込んでいく。勉強法の基本は、いつの時代も変わらない。 

(引用中断)

(k.y.談)↓

渡辺さんの記憶のプロセスを整理すると:

① 台本を読んで下準備(ポイント把握)

芝居を観る

ノートに取る

④ それを清書する

不明点をピックアップする

芝居を観て確認する

再度ノートを取る

さらに、別の観点から整理すると:

①  → ② 観劇 → ③ 文字 → ④ 文字 → ⑤  → ⑥ 観劇 → ⑦ 文字

となります。

こうして分析するとますます記憶のプロセスが興味深くなってきます。

人は、ものごとを ― で処理し ― 必ずことばに置き換えて記憶します。渡辺さんの場合も、役者のセリフはもちろん役者の所作及び演劇全体の流れもすべてノート=ことばに置き換えて記憶しているわけです。

そのとき使われることばは当然だれもが使う共通のことば(私たちの場合は日本語)です。

記憶=ことばというシステムは、人間が進化の先端に立つことを可能にした不可欠の要因のひとつでしょう。個人の記憶が、ことばに置換されることによって、他の人にも伝わるようになった。その結果、各人のアイデンティティが確立し、共同体のアイデンティティーも保持され、それらを後の世代にまで伝えることができるようになった。

何度も繰り返さないと記憶が定着しないのは、脳での処理を繰り返して不必要な記憶を排除するためだと考えます。忘れてしまうのは、必要ではないからです。逆に、必要なら覚えるまで繰り返さなければならない。

渡辺さんの頭の中には、だから、渡辺さんが必要とする(=おもしろいと感じる)演劇=渡辺ヴァージョンの演劇が整然と記憶されている。それが、本になったり講演になったりすると、ひとつの創作になって、他の人たちに伝わります

続く...


|

« 絶対必要な英単語6000語(189/365) | Main | 英語の語彙:雑談(8) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/47849/4939774

Listed below are links to weblogs that reference 記憶(16)劇作家・渡辺保さんの場合を参考にして(2):

« 絶対必要な英単語6000語(189/365) | Main | 英語の語彙:雑談(8) »