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ネイティヴの子供と大人の日本人の英語学習 その2

前回(その1)で、既に母語を完成させている大人の日本人(中学生も含む)が英語を外国語として学習する場合と英語のネイティヴが母国語として英語を習得する場合を比較しました。

そして、大人の日本人の方がネイティヴより高い効率で英語を学習できるのだと書きました。

今回は、逆に、大人の日本人にとって不利な点を考察してみましょう。

私は、不利な点は2つあると考えています。

① 音声の習得が著しく困難であること

② 生存に直結する必然性がないこと

非ネイティヴがネイティヴに対して ― 脳の機能の面で ― ただひとつ不利なことがあります。それは、自然な音声の習得です。これは、現代の言語学者の間の通説でもあります。

②については脳の機能とあまり関係はないと思われます。

音声の習得に関して、利根川進氏が、その著 『私の脳科学講義 (岩波新書)』 で、氏の2人の子供さんの実例をあげておもしろいことを述べておられるので以下に引用しておきます(省略・太字はk.y.)。

(引用開始)

...生れたばかりの赤ちゃんの脳は、すでにハードウェアができているのです。ところが成長するとともに、その脳のハードウェアそのものが、外から入ってきた刺激によって変わっていきます。脳はそういう性質をもっているわけです。そしてこの改良作業のための外界からの刺激は、ある年齢までに赤ちゃんに与えないと、今言ったようなネットワークの機能的な改良にはつながらないということがわかっています。
 このある一定期間、外から入ってくる刺激を利用して、自分自身の脳のネットワークを完成させていくことができる期間を、わたしたち脳科学者は「脳ネットワークの臨界期」とよんでいます。この臨界期を逸すると、同じような刺激を与えてやっても、脳のネットワークは完全な形に改良されていかないのです。
 ...人間の赤ちゃんのなかには、生まれながらにして視覚系の異常で水晶体が曇っている場合があります。こういう場合は、生れて半年ぐらいの間に手術をして治してやらないと、曇っているほうの目からは光が入らないために、視覚は完成しません。その後で曇りを取り除いても、視覚は完成しないのです。これがすなわち臨界期の証明のひとつになっているのです。
 もうひとつ、臨界期が存在することを証明する例を紹介しましょう。それは子どもの言葉の習得において見られるのです。子どもが言葉をおぼえる過程にも、同じように臨界期の現象があります...
 わたしには三人の子どもがいますが、三人ともアメリカで生れています。ベビーシッターはもちろん英語を話すので、彼らは日本語より英語を先に覚えるのですね。そうすると、わたしの個人的な経験では、彼らがだいたい三歳ぐらいになると、親の英語の発音がちょっとおかしいということに気づくのです...
 わたしは日本で育っていますから、臨界期を過ぎた頃には、「L」に対応する脳の回路、「R 」に対応する脳の回路は退化してしまっています。その後でいくら英語を勉強しても、「L」や「R」に確実に対応する脳の細胞の回路は存在しないわけですから、それらの音を聞き分けることができなくなっているのです。
 ところが、わたしの子どもたちはそれができるのです。そして三歳頃になると、どうも父親の発音がおかしいらしいと気がついて、気になってきたようです、それで、わたし向かって「シラミ」を意味する「LICE」と、「米」を意味する「RICE」という単語を、子どもが自ら発音して、そのとおりに発音してごらんと言うのです。わたしが一生懸命真似して、子どもの言うとおりに言ってみるのですが、子どもは「ダメだ」と言います。わたしが聞いていると、子どもの発音とわたしの発音はまった区別がつかないのですが、子どもは「ダメだ」と言うのです。
 わたしが何度もやって、たまたまうまく発音できると、子どもたちは大喜びして「できるじゃない」と言います。でも、非常に注意深くやらないと区別ができず、すぐまた元へ戻ってしまいます。一ヶ月くらいは一生懸命にわたしを訓練しようとしますが、一ヶ月を過ぎると、もうこれはダメだと諦めるのです。
 そして次の子が三歳くらいになると、また同じことをはじめたのです。わたしには三人の子どもがいるので、三回やらされました。しかしこれはもう明白なことで、臨界期の頃までにある言語を習得しないと、それを超えた年齢でナチュラルな発音をするというのは至難の業なのです。これは脳科学ではむずかしい理由がわかっているのです。

(引用終止)

わたしは、至難の業ではあっても決して不可能ことではないと思っています。

しかし、音声面に関する限り、ネイティヴが絶対的に有利であることはだれも納得していることでしょう。

日本で生れたコーケイジャンの子どもが、電話に完璧な日本語で応対し、すぐさまきれいな米語で親を呼ぶのを
聞いたりすると、臨界期の存在を強く感じます。

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Comments

 はじめまして。
 毎日のように見ています。
 私は、感化されて一時はロングマン英英辞典(LDOCE)でやろうとしたのですが、当然のごとく挫折しました。とりあえず、市販の単語集で1万語レベルまで上げてからやり直そうと思っています。今はTOEIC900点を目指しています。
 900点を取る→プラス単熟語準1・1級→Longman Dictionary Of American English と計画は立てていますが、第一段階で躓いているところです。

 本題はここからですが、面白いサイトを見つけたので御紹介します。
 英単語10万語暗記への挑戦記 (http://cobuilder.blog18.fc2.com/)
 という名前のサイトですが、k.y.さんの方法とほぼ同じ事をやっている方の現在進行形の日記ブログなのです。
 このサイトの管理者の方に「アンチ・バベルの塔」の読者の方が「アンチ~」を紹介したところ、「びっくりしました」と言っていました。
 「アンチ~」を知らないでほぼ同じ事をやっていたのです。これは私の方がびっくりしました。

 このサイトの日記のおもしろいところは、目標を高く掲げながら現実は「ナメクジ」のように進まない自分(サイト管理人様)をあからさまに書いているところでしょうか。管理人さんのキャラクターが面白いです。
 私はすごく共感を抱くのですが、私と彼と違うところは挫折しているかしていないかの違いです。

 おもしろいサイトなのでお時間があればご覧になってはいかがでしょうか。

Posted by: N'djamena | August 27, 2005 at 05:54 AM

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