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語彙と思考(3)

ヨーロッパのルネサンスと言えば古代ギリシャ・ローマの文芸復興のことですから、当然のことながら、古代言語の復興という側面もあります。

塩野七生さんは、その著 『ルネサンスとは何であったのか』 という本のなかで、「ルネサンス人は、人間の肉体の美を再発見しただけでなく、人間の言語も再発見したのです(太字k.y.)」と述べて、次のように書いています(太字k.y.)。

(引用開始)

 キリスト教徒の読むものとしては不適当という理由によって、古代のギリシャ人やローマ人の著作は、筆写はされても修道院の図書室の片隅に眠る歳月がつづいていたのです。これらの著作が、人文学者たちによって探し出されて陽の目を見るように変わる。キケロの著作を見つけ出したペトラルカは、その一人にすぎません。これらを読んだ人々は、使われている平易な語彙と明晰で簡潔で論理的な文章構成に眼を見張る。同じラテン語なのに、聖職者の口から出る複雑でもったいぶった中世風のラテン語と、今新たに発見された古代のラテン語では、同じことの表現のしかた一つでも差異があるのを知ったのです。

(引用中断)

k.y.談: 写本スペシャリスト・ボッジョ

塩野さんの指摘にもあるように、古代の文献は各地の修道院の文書庫に埋まっていました。それらは写本だったわけですから、修道院の写字生たちの功績は非常に大きい。そんな写字生としての才能を充分に発揮して見事な学識と達筆を誇る人が出現する。トスカナ生まれのポッジョ・ブラッチョリーニ(1380~1459)である。フィレンツェで学んだ写字の才能が教皇に認められ、ローマに招かれる。そこで古代の文献探索に目覚め、教皇に随行して尋ねた各地で修道院に眠る文書に注目するうちにキケロの演説現行の写本も発見する。地道な文書探索を続けて古代の文献に注釈をつけて著作する。そんなボッジョの著作にイタリア・ルネサンスの学者が瞠目し、古代言語再発見の機運を高めることになる。私は、膨大な文書群に分け入って古代の文献を読みふけるボッジョの姿が眼に浮かぶ。ボッジョは後にフィレンツェの書記官長になり、79歳の生涯を終える。今、バートランド・ラッセルの幸福論を「絶対必要な英単語6000語」のコラムで精読しているが、ボッジョは、ほんとうに幸せな人だったと思う。

現在私たちが使っているローマ字印刷書体も、多少の修正はあったが、ボッジョのデザインである。ボッジョはすばらしく達筆の人だったそうだから、美しく書きやすい書体を編み出したとしても不思議ではない。

ボッジョの写本書体が今も生きている。書体は人の人格も反映すると言われる。そういえば、ヴァティカン図書館蔵のボッジョの肖像画を見ると顔も丸くて優しそうである。

文字、語彙、文章に興味は尽きない

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