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中村修二の言語観:続続

中村修二さんが、半導体を扱うのにまずしたことは、中村語ではない標準言語による勉強だった。

しかし、その後は中村流の実験に、つまり中村語の開発に没頭した。すさまじい執念で中村語の確立=独創に取り組んだ。

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(引用再開)

 とはいえ、半導体に手をつけ始めた当初は、私はまだそのようなことには気づいていなかった。だから、初心者の誰もがやる方法を、よかれと思って踏襲していた。

 やったこともないようなことに手をつける場合に、まずやることは何か。十中八九の人が、まずそのことについて調べ、先人たちはどうやったかを検討する。私の場合もはじめのうちは御多分にもれず、さまざまな文献や専門書を読むところから出発した。
 
 半導体を作るには、様々な材料を反応させる電気炉が必要だ。しかし買ってきた炉はそのままでは役に立たなかった。研究費はないから、会社中に転がっている部品や廃品を拾ってきては改良した。その姿は研究者というよりは、町工場の職人と言ったほうが良かったかもしれない。

 ガリウム・リンを精製するには、透明な石英管を使わなければならない。透明石英管の一端に金属のガリウムを、もう一端に赤リンを入れて、石英管をバーナーで真空密封した後、電気炉で高音に熱し、ガリウム・リンの多結晶体を気相成長させるのである。

 電気炉の場合もそうだったのだが、予算が乏しかったため、高価な石英管をたくさんは買えなかった。大手企業だと加工した石英管を買えばすむところを、私は使用済みの石英管を切断しては溶接して使い回さなければならなかったのだ。

 しかし、この溶接が大変だった。朝から晩まで、溶接に明け暮れるようなことはざらだったのだ。

  とにかく、何から何まで自分一人でやらなければならなかった。煉瓦の組み立て、ステンレスの溶接、石英やカーボンの切断などなどだ。断熱材を組み合わせてヒーターに巻くのをはじめ、電気配線はもちろん、ガラス細工までやった。

 温度が摂氏2000度近くにまでなる酸水素バーナー用のボンベを、一日に四、五本使い、汗びっしょりになってやった。

 とにかく、本当に溶接屋にでもなったような気分だった。せっかく大学まで行かせてもらって、その上の修士まで行って研究を続け、トップで終了しているにもかかわらず、やっている仕事は職人まがいの仕事ばかり。

 五、六年も同じような仕事が続いたときにはさすがにショックで、もうこれで人生終わるのかなとうんざりしたこともあった。いったい何のために勉強してきたのかと自分の人生をはかなむこともないではなかった。しかし、これも自分の仕事、自分の研究の一環だからいいか、と無理矢理自分を納得させてやっていたような気がする。

 この時は本当に、会社を辞めてもおかしくない状況だったと思う。

(引用終止)

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新たな言語を独自に作り上げる(=独創)ために必要だった執念。エジソンもたぶん同じ格闘をしていたんだろうと思う。

中村さんの言葉をいちいち書き写しているだけで切なくなってくる。

「個性を大事にして独創性を養う」などという空念仏の虚しさがよくわかる。

中村さんは、大学時代、下宿や図書館にこもりきりで修行僧のように専門書を読みふけって沈思黙考したという。理論に没頭したという。これは、科学界のどんな分野の言語にも通底する普遍文法を徹底して習得したプロセスだったのだろうと私は思う。だからこそ、先になって、極めて独創的な中村語を確立することが可能になった。

京セラの創業者である稲盛さんは、「英語の得意な人は雇用しない、独創力がないからだ」という旨の発言をされたことがある。

稲盛さんのいうことが、中村さんの言語観を通すと、よくわかるような気がする。

稲盛さんは、「英語が得意な人は、英語と日本語を往来することが多少得意なだけで、独自の言語を作る(=創造する)ことなど思いつきもしない」と想像していたのだと思う。

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