« 語学の「天才と凡才」その2 | Main | 絶対必要な英単語6000語(276/365) »

語学の「天才と凡才」その3

英語に興味がある人で、「斎藤秀三郎」の名を知らない人はそんなに多くないと思います。

この人こそ、語学の「天才」の称号を冠するにもっともふさわしい人でしょう。

私の書斎には斉藤先生の辞書が4冊(①~④)あります。

① 「熟語本位英和中辞典」

② ①の復刻版

③ 「NEW 斎藤和英大辞典」

④ 「NEW斎藤 英和対訳表現辞典」

①は私の父が使っていたものでボロボロの古書。

②~④は私が購入したものです。

こうした辞書を拾い読みするだけで、斎藤流・日・英のすごさを実感できます。

語学の天才は魔術師ではありませんから、斎藤先生が天才を発揮されるに至った過程(何をされたか)は理解できます。神秘はいっさいありません。

理解できるからこそ、余計に、そのすごさに畏怖されます

ひょっとしてご存じない方は、ぜひ、http://www.jmca.net/booky/takeshita/ryosyo11.html と http://www.jmca.net/booky/takeshita/ryosyo12.html だけでもお読みください。

-------------------

上記の記事に斎藤先生の勉強の一端が記述されていましたので、以下に引用しておきます(太字k.y.)。

(1) 英語の本を読む際は、イディオムに青、コロケーション(連語)には赤の線を引く

 明治26年頃、斎藤の家を訪れた英学者堀英四郎は、次の様な体験を書いている。

 「応接間兼書斎のような部屋で、ふと座卓の上をみると、2冊の小説が置き放しになっている。開いたままのThe Evil Geniusには青と赤の色鉛筆でアンダーラインが引いてある。The Dead Secretを手にとってみると、これまた全篇アンダーラインがびっしり、idiomには青鉛筆、colloquial idiomatic phrasesには赤鉛筆の線である。斎藤先生の読書ぶりは、実に丹念で科学者のように徹底していた。」(本書P128)

(2) アンダーラインを引いたイディオムやコロケーションを、カード化しておき、一定量が集まるごとに、自分の使いやすい方法で整理して(概念別、状況別、アルファベット順など)、私家版英和辞典を作る

 ラインを引いたイディオムやコロケーションをそのままにせず、自分なりの整理法で自分用の手作り辞書・表現集として蓄積し、それを実際に日常のなかで使ってみることだ。中村勝麿氏が「英語研究法」を本人に聞くと、斎藤はこう答えている。

 「俺(斎藤)のやり方は、名刺を紙入れに入れておいて、人と話している間でも、講義をしている間でも、酔っ払って歌をうたっている時でも、思いついた時に、名刺の裏にちょいちょいと書いておく。それが山のようにある。それをある時期に整理をするのだ。」(本書p422)

 書籍だけではない。英字新聞・英語雑誌・ネイティブとの会話・映画・英語ニュースなど、これはと思った英語表現に出会ったらすぐにカードに記入する習慣をつけることが英語上達の秘訣である。

 最新の英和辞典でも編纂に何年もかかるので、切れば血のでるような最新の言葉や表現が漏れていることが多い。この意味でも、手作り英和辞典はとても役に立つ。
 カード化をさらに押し進めて、パソコン上にデータベースとして構築していけば活用の範囲はもっと広がるだろう。

(3)常に、頭の中で、日本語と英語の表現法を往復運動させること

 「工部大学においてディクソンに出会い、それに触発されてイディオム研究に向かった斎藤はついに日英両国語のイディオム研究にその生涯をささげた。」(本書p421)

 「斎藤の生涯的事業たるイディオモロジーは、英語の組織的研究であるが、これは日本語の媒介をへて始めて本格的なものになる。」(本書p114)

 「きわめて豊富な熟語をもっている英語を、また非常に豊富な熟語をもっている日本語と常に対決させることによって、研究することである。」(本書p115)

 このように、斎藤の英語研究法は、ある一定の内容をいうのに日本語ではこう言い、英語ではこう言うという日英比較対照研究であり、彼の頭のなかでは、常に日本語と英語の往復運動がなされていたにちがいない。そして、ピッタリの訳語が思いつくと庭に出て踊りだしたという伝説もあるくらいだ。例示をしてみよう。

● Life is subject to decay. 盛者必衰
● Love is blind. あばたもえくぼ
● Impotent rage ごまめの歯ぎしり

 など、これ以上の適訳はないといってよい表現をずばり提示しているのは、天才の天才たる所以(ゆえん)だ。

 とはいっても、この天才の努力は大変なもので、「英語の猛勉強の合間や、稀にでかける汽車旅行等という文字通り零細な時間も利用して、落語全集とか講談全集とかの類の本と格闘していた。こういう方面からも平俗で砕けた日本語の表現を集めることができたのであろう。」(本書p422)

 “Let’s go out for dinner”という決まりきった表現があるが、これを「夕食に外出しよう」と覚えていても、自然な日本語の日常会話では、「晩飯でも食いに出かけるか」という表現を使うからこの日英両表現がペアで頭に入っていないといざというとき役に立たない。だから、日頃、ごく自然な日本語の日常会話にも注意して、これは英語でなんというかという訓練がとても大切なのだ。

-------------------------

私は、普通の人が英語を学習する場合の「最後の壁」は時間であると考えていますが、斎藤先生が63年の生涯に英語の勉強に費やされた時間はいったい何時間ぐらいになるのでしょう。

15万~20万時間になるかもしれません。ひょっとしたら、それを超える可能性さえあります。

さらに、凡人の1時間と斎藤先生の1時間は、まったく異質のものでしょう。

|

« 語学の「天才と凡才」その2 | Main | 絶対必要な英単語6000語(276/365) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/47849/6278082

Listed below are links to weblogs that reference 語学の「天才と凡才」その3:

» Life is subject to decay.〜盛者必衰〜 [TOEIC990点を目指す。]
盛者必衰。 この要因を、私なりに考えてみた。 過去の成功体験にしがみ付いた結果ではないだろうか。 人間、現状維持という状態はない。 伸びるか、落ちるか、どちらかしかないのだ。 伸びるために、常に自分を改善し続ける必要がある。 その為には、自分を客観的に分析する能力が求められる。 満足した瞬間から退化が始まる。 常に自分の現状を見つめ、改善し続けていきたい。 目標はTOEIC990点であり、その先には夢の続きがある。 Life is subject to decay. ... [Read More]

Tracked on October 07, 2005 at 06:51 AM

« 語学の「天才と凡才」その2 | Main | 絶対必要な英単語6000語(276/365) »