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村上春樹(2)

目下(2005年11月)日経朝刊で「日本文学 世界へ」というシリーズが掲載されています。

日本語が世界中でどんなふうに受容されているか、外国語にどのように翻訳されているのか、という事実の一端を語ってくれる実に興味深い企画だと思います。

その第1回目が「村上春樹は偉大な記号」というタイトルの記事。

その全文を転載しておきます(太字k.y. ?の部分(台湾の文字)は転写できない箇所)↓ 

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(転載開始)

 台湾のエリートが集まる台湾大学(台北市)。正門前には学生向けの飲食店や書店が軒を並べる。夕暮れ時、ひときわ目を引くのが青地に白の文字が光る「海邊的?」の看板。村上春樹の長編小説「海辺のカフカ」から店名を借用した喫茶店だ。
 
 広々とした店内には村上作品に度々登場するナット・キング・コールのジャズが流れ、都会的な内装も村上ワールドを意識している。「講義の合間によく来る。台北の学生が春樹を読むのは当たり前」と台湾大学英文科三年生の女子学生。別の男子学生は「『東京奇譚集』 が待ち遠しい。日本語を勉強中だが、まだ原書では読めない」と日本で九月に刊行された最新作の名を上げた。

 オーナーの余永寛氏は十四年前、「ノルウェイの森」が台湾でベストセラーになったのを機に「若者に指示される喫茶店を」と、喫茶「?(ノルウェイの森)」を出店。同名の二号店も出し、昨年「カフカ」を出店した。「若者にとって村上春樹は今や記号的な存在。ビートルズと同じ」という。

 台湾では村上作品はベストセラーに軒並み名を連ねる。二〇〇三年末に出た「カフカ」は発行部数十万部を突破。台湾の人口や出版事情を考えれば、日本のミリオンセラーに相当する。「都会の若者の感性を見事にとらえている。文体もわかりやすく、人を心地よく酔わせる」と語るのは翻訳者の頼明珠氏だ。

 台湾だけでなく、村上作品は今や世界中で読まれている。中国では「ノルウェイの森」が百万部を超え、それ以上の海賊版が出回る。韓国では、村上作品の版権には他の日本の中堅作家の十倍以上の値が付くと大手版権代理店の担当者はいう。

 米ニューヨークのマンハッタンの中心部にある大型書店「コロシアム・ブックス」のレジ前。一月刊行のハードカバー版「海辺のカフカ」がうずたかく積まれ、壁の棚には十以上の村上作品のタイトルが並ぶ。

 村上作品を九三年から十作以上刊行するクノップフ社のゲイリー・フィスケットジョン副社長によれば「海辺のカフカ」は翻訳小説としては「二十年に一度の売れ方」という。欧州でも村上の小説の単行本は、大都市の書店に置かれる。イタリアの大手紙レプブリッカの書評担当記者、レナータ・ピズ氏は「ファンタジーでありながら、都市生活が持つ怖さを感じさせる」と評価する。

 従来、海外で日本文学といえば川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎が御三家」とされてきた。その読者は異国である日本を強く意識し、過去の日本趣味にとらわれることがあった

 これに対し「村上春樹は世界的なベストセラー 『存在の耐えられない軽さ』 のミラン・クンデラ(チェコ出身)に近いと思う」と米コロシアム・ブックスのマネジャー、ロン・コルム氏は語る。彼は従来の日本の文学者とは違う普遍性の強い作家として認識されている。そして村上への関心が、他の日本の現代作家への興味をもかき立てている

(転載終了)

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日・台とは違って、日・中・韓には実に不愉快な問題が多い。しかし、村上の日本語がほとんど違和感なしに中韓のことばに翻訳されて熱心に読まれているとしたら、日本の文学も日中韓の共有文化になりつつあるといってもよいだろう。日本のアニメその他のサブ・カルチャーは既にしっかりとアジアに根付いている。文化を共有する多数の若者の台頭は何か未来を楽観させてくれる気もする。

御三家は日本語のあるいは日本文化の孤立の象徴でもあったと思う。その壁を村上が突破したとすれば、村上作品を酷評する文芸評論家も日本には多いとはいえ、ひとつのささやかな革命と言えなくもない。

そんな革命が、いろいろ深刻な問題の裏で、小波(さざなみ)が伝わるごとく静かに進行している。

世界のどこへ行っても「ビートルズ」の話をできるように「日本文学」の話しができるようになればそんなに楽しいことはない。

もはや御三家に閉じ込められていたエキゾチシズムの殻を破った文体が出現していることになる。

そして、村上作品を日本語と英語で暗誦することもしゃれた英語の学習方法になると思いませんか?! 

 

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