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脳科学から見た英語上達法(3)

前回に、「時間がどうしようもなく不足しているのだから、日本語の場合と同様に考えるのは不可能である」と書きました。

さらに、「私達にとっての母国語である日本語の言葉の意味を、どのように理解してきたかを思い起こしてみよう。辞書を引いたり、誰かに直接聞いたりして言葉の意味を理解することは、むしろ少ない。言葉の意味は、さまざまなエピソード記憶の中から抽象化されて、理解されていくのである」という茂木さんの発言は、「 ① 生活語彙」と「 ② 学校で教科書その他の資料を通して獲得する学習語彙」を区別していないという点で不正確です。

① は、小学校に入るまでに、それこそエピソード記憶の中から抽象化されて習得していくものでしょう。たっぷり時間をかけて本人も無意識のうちに脳の中で醸成されていく語彙群です。

世界には小学校さえまともにいけない人たちが大勢います。そんな人たちでも毎日の生活で言葉に不自由することはありません。① がしっかり身についているからです。

しかし、② は①の語彙と文法をベースにしてはいますが、ほとんどは辞書的な定義をともなった語彙として習得していくものです。

そして、私達にとって ① の語彙の習得が実はもっとも難しい。意味を抽象化できるほど十分にエピソード記憶を蓄積する時間がそもそもないからです。

『聞ける英語 話せる英語(ちくま新書・東後勝明著)』 に ― ロンドンにいた時に、私の子どもがよくこんな質問をして私をびっくりさせました。当時はまだ五歳でしたが、May I go out ? などと平気で使っているのに、「パパ may って何のこと」「I ってなーに」と聞くのです。「I はマー君(子どもの愛称)のことだよ」と答えると、目を丸くして、「違うよ、ボクのことは me だよ」と反論をしてきました。またある時も通りで車が来るのを見て、次のように言いました。Oh, here comes a car. (あっ、車が来たよ) Here comes another one. (また来た) That makes two. 最後の文を聞いて、私は振り返って子どもの顔を見ました。しかし当のご本人はキョトンとしています。みなさんの口からこんな英語が飛び出してきますか。ともすると That が何を指し、make の目的は何で、この文は第何文型なのだろうか、などと考えてしまう私たちには、非常にむずかしい文章です。ところがわずか5歳の我が家のちび助は、なんなくそれを言ってのけました。こうしたことから私が思ったのは、英語の文章はあまり細かく分けずに、いくつかの単語を一つのかたまりとして覚えていった方がよいということです。may も、I も一つ一つの単語の意味はまったく知らなくても、May I gou out ? (外に行ってもいい) を、適切な場面で正しく使っている子どもを見て、つくづく考えさせられました。みなさんもどうぞ、もう一度子どもになったつもりで、一語一語の意味にはあまりとらわれず、一つの表現をいくつかの単語のかたまりとしてとらえていってください ― という記述があって、幼時がエピソード記憶を抽象化して語彙を獲得していく様子をヴィヴィッドに描いています。

東後さんが述べておられることは、エピソード記憶だけではなく、チャンクの好例でもあります。そして、これまた、時間の絶対的不足を無視した発言でもあります。

私達は「子どもには絶対なれない」のです。

続く...

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