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『指輪物語』 を創作したトールキン教授(2)

スティーヴン・キングは、『スティーヴン・キング 小説作法(池 央耿 訳)』 で「道具箱(3段構成で1段目が語彙・文法で2段目が文体)」という章を設けて、作家に必要な要素を説明しています。

その「道具箱」に、『指輪物語』 に言及した部分があるので、引用しておきます(省略&太字 k.y.)↓。

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(引用開始)

・・・言葉は文章を生み、文章がパラグラフを作るパラグラフは何かをきっかけに励起して息づき始める。これは、実験台のフランケンシュタインに似ていないでもない。突如、稲妻が走る。空からではない。ささやかなパラグラフからである。それは、作家志望の無名氏がはじめて書いた読むに堪えるパラグラフかもしれない。危うげな壊れ物ながら、空恐ろしい可能性を秘めている。生命のない人体各部を寄せ集めて縫い合わせた異形のものが、黄色く潤んだ目をかっと見開いたときのヴィクトア・フランケンシュタインの驚愕もかくやと、無名氏は胸中で叫ぶ。これはしたり。こいつ、息をしている。物を考えてさえいるかもしれない。はてさて、これからどうしたものだろう。

 どうもこうもない。道具箱の三段目に移って、本格的に小説を書きはじめればいい。何を躊躇うことがあろう? 恐れることはない。そうではないか。大工は怪物を産みはしない。家を建て、店や銀行を造るのだ。一枚一枚、羽目板を釘付けし、一つ一つ、煉瓦を組んで建物を造る。作家は、語彙と、文法ならびに文体の基礎知識を素材に、一つずつパラグラフを積み上げる。正直一途に職人気質で丁寧な仕事をすれば、何だろうとできないものはない。体力があれば、広壮なマンションを建てることも夢ではない

 いったい、言葉のマンションを建てるだけの正当な理由があるだろうか? 私はあると思う。マーガレット・ミッチェルの 『風と共に去りぬ』 や、チャールズ・ディケンズの 『荒涼館』 を読めばそれは理解できるはずである。怪物も、場合によっては怪物ではない。時として、人はそのほれぼれする美しさに夢中になる。映画やテレビが逆立ちしてもこれにはおよばない千ページ読んでも、人は作者が作り出した世界を去り難く、そこに生きる架空の人物と別れるのは辛い。作品が二千ページなら、二千ページを読み終えても現実の世界に帰る気になれない。J・R・R・トールキンの『指輪物語』三部作などは、まさにその代表例である。ホビットたちの寓話譚千ページは、第2次世界大戦後、三世代にわたるファンタジー・ファンの欲求不満を煽った。鈍重な図体を持て余している飛行船のような続編 『シルマリル物語』 を読んでも、まだ渇きは癒されない。だからこそ、テリー・ブルックス、ピアス・アンソニー、ロバート・ジョーダン、『ウォーターシップ・ダウン』 の探究心に富むウサギたちを書いたリチャード・アダムズ、その他、数知れぬファンタジー作家が登場したのである。彼らは今もって自分たちの憧れであるホビットの後裔を生み出し、トールキン亡き後、グレー・ヘヴンからフロドやサムを呼び戻そうと務めている・・・

(引用終止)

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名匠・トールキン教授の「道具箱」の3段にはどんな道具が詰まっていたのでしょうか? 

中期・古期英語に精通していた教授。現代の英語とは ― 1000年以上も前からの構造も違い語彙も大いに異なる ― まったく別の世界。

そんな広大無辺で底知れない英語の森に棲んでいた名匠・トールキン教授。

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