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ドナルド・キーン(2)

ドナルド・キーンさんがコロンビア大学の2年生だったときに、ヒットラーの軍隊がポーランドに侵入して第2次世界大戦が勃発した。

そんな暗い時代の到来を背景にしながらもキーンさんは主としてフランス文化・文学にあこがれてフランス語を熱心に勉強していました。

そのあたりのことを 『日本を理解するまで』 の第2章「生涯を賭ける仕事」で語っておられますが、それを読むとキーンさんの「外国語学習観」がよくわかります。

たいへんユニークで興味をそそる話あるいは並々ならぬ非凡さを示す話だと思ったので引用しておきます(省略・太字 k.y.)↓:

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・・・ ヨーロッパで戦争が始まった時、私は大学2年生としてなんとなく最後の自由を楽しんでいる、という心境だった。大方の青年と同じく悩みもあり、決して楽しい時代ではなかったが、好きな勉強を好きな時にできるというのは、何と言っても有難かった。私は外国語と外国文学に専心し、そこから慰めを得ていたのだ。

 ただしそれは、未翻訳の作品を原文で読みたいからでもなく、外国人と話したいからでもなかった。はっきり意識していたわけではないが、自分の中に英語だけでは表現できない面もあるはずだ、と思っていたに違いない。生まれたばかりの赤ん坊は、可能性としてあらゆる言葉ができる。そして、それぞれの言葉の持つ音声効果、構造などによって、その表現力も違ってくる。

 たとえばフラン人でない私でも、ラシーヌの詩の一行をフランス語で朗読すると、その一行の意味をはるかに超えた美しさに打たれる。もちろん、ラシーヌの言葉の意味は分からなくとも、語呂の心地よさによってしまうこともあるだろう。けれども、ラシーヌの素晴らしさを本当に知ろうと思えば、やはりフランス語を覚えるより他はない。そしてフランス語をかなりマスターすれば、自分の中にあるラシーヌ的なものも表現できるようになると思う。

 私はおそらくそのことを無意識に感じて、内面にあるものを、あらゆる言語によってどうしても表現したいと思ったのではないだろうか。漠然としているが、そう説明するしかないようだ。

(引用終止)

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キーンさんは、「何ヶ国語を話されるのですか」と聞かれて ― 「英語日本語フランス語中国語スペイン語イタリア語では講演できます。オランダ語も分かります。でも日本人は今でもわたしに英語で話しかけないと失礼だと思っている(笑い)」 ― とおっしゃっています(『私と20世紀のクロニクル』を前にした読売新聞のインタヴュー記事より)。

続く...


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