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英語習得と日本語の役割:続続(3)

名古屋外国語大学教授・中島和子さんが、日経夕刊(2006年1月28日)の「生活ファミリー・英語で子育て」のコラムで「成果長い目で考えて まず日本語しっかり」という話しをされています。

中島先生の、ご自身の研究成果も踏まえた示唆に富む発言は、ぜひ記録しておきたい内容なので、日経記者の前書きも含めて転記しておきます(太字k.y.)。

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(転記再開)

 むしろ小学校高学年ぐらいのほうが、海外や外国人への興味・関心が高まる。日本語が一定水準に達し、自分のアイデンティティーもしっかり確立している。この時期の海外旅行は、視野を広げ、学習意欲を高める大きなチャンスだ

 語学は継続こそ大切なことは、英語とフランス語の二つの公用語があるカナダの取り組みからも明らかだ。国の一体感を維持するため、少数派であるフランス語の教育に力を入れており、一部の学校で「イマージョン教育」が行われている。

 イマージョンとは「その言葉の環境にトータルに浸る」という意味。この方式をとる学校では、例えば小学校一年生はすべての授業をフランス語で行い、学年が上がるに従い、英語で教える内容を増やしていく。そうやって長期間にわたり、数千時間のフランス語に接する状況を作るのだ

 これに対し日本では、家庭での英語教育は盛んな一方、日本で小学校に入ると総合学習の時間で少し触れるだけで、なかなか継続的に学びにくい環境にある。それでも語学を学ぶことは視野を広げ、自分とは違う文化に寛容になり、思考をより柔軟にする道にもつながる。

 子どもに真に英語を身につけさせたいなら、英語の歌を歌った、あいさつができた、といった目の前のことを目標にすべきではない。「二十歳ごろまでに」を目標に、高校時代と大学時代の二回の留学なども組み合わせ、長期的に取り組む必要があることを親は知っておくべきだろう

(転記完了)

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中島先生の主張は、最後の「20歳ぐらいまでを目標に留学も含めて長期的に取り組む必要がある」ということばに収斂していると思います。

この20年という期間は、ネイティヴスピーカーが母国語をほぼ完成させる期間でもあります。日本人なら日本語、たとえばアメリカ人なら英語を完成させる総時間数が20年。毎日11時間各人の母国語に触れると仮定すると約8万時間になります。

その8万時間のうち、2万時間(つまり赤ちゃんから6歳ぐらいまで)はもっぱら「音声・身体表現・会話の仕方・応用自在の基礎文法・基礎語彙(約1万語)の習得など」に費やされます。

日本に住んでいて2万時間も余裕があるはずのない日本人の幼児が習得できるのは、幼児の適性も考慮に入れて、「音声・身体表現・会話の仕方・応用自在の基礎文法・基礎語彙の習得など」のうち「音声」に限られると思います。

どんな形でも、それこそ楽しい方法で、英語の音声に親しませてあげるのがいいでしょう。手段として、あいさつであり歌であり短文であってももかまわない。

日本語が一定水準に達し、自分のアイデンティティーもしっかり確立してくる小学校高学年のこども」ならもっと高度な学習が可能になるはずですから、各児童の適性や学習可能時間数に応じて妥当な学習法を探り実行すればいいと考えます。

もちろん、英語などまったく無視してもかまわない。日本語がしっかりしていて、本人に英語が必要だという自覚が生じたら、数年間のスタートの遅れなど ― 実際の学習時間数からすればたいした遅れではないので ― やりかたによって半年~1年で一挙に取り戻す可能性は充分にあります

そして、何度も繰り返しますが、日本語の充実がまず大事です。日本語が貧しいと英語もなおのこと貧しくなります。見えるものも見えなくなる。視力 が 0.5の場合に理解できる世界、1.0の場合の世界、 2.0 の場合の世界が格段に違うのと同じです。いや、言葉の場合、そんな格差はもっともっと大きいでしょう。

ただし、本人はそんな格差にほとんど気づかない。

また、「気づかなくてもかまわない」とも言えます。そんなことは人の価値や幸福度、また金儲けにもほとんど関係がないからです。

私は若いころに気づいてしまった

だから、日本語も英語も ― もちろん自分なりにという大きな限界はありますが ― もっともっと磨きたい

「アンチ・バベルの塔」もそんな営為の一環です。


 

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