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語彙強化に関する神話の崩壊(1)

私は以前にも数回、「SSS多読法に代表されるような読書によって語彙が強化されるというのはとんでもない間違いであり、それは神話にすぎない」と述べたことがあります。

「ノン・ネイティヴ英語学習者の多読による語彙強化の実効性」を実証する調査は何もありません反証する事実はいくらでもあります

SSS多読法のような読書自体は、大人がする真の読書ではないが、英語に慣れるための大変優れた方法です。おおいに利用すべきだと思います。

しかし、それで語彙を強化できるとする説には賛成できませんし、それで(他の方法に勝って)語彙が強化されたという事実もありません。

多少の語彙は増える(あるいは増える気がする)ことはあるでしょうが語彙強化と言うに足る成果があるとはとても言えません。

もちろん既習の語彙の復習には役立ちますが、新たな語彙を強化する役割を期待することはできません。

わからない語彙は類推しあるいは無視し、辞書もひかず、いやになったら読むのをやめ、自分なりにわかった(つもり!)ならそれでよしとしてどんどん読み進む。英和辞典は使ってはいけない。もしたまに使うとしても英英辞典を使うようにする。

語彙強化に限って言えば、こんなにむちゃくちゃなやり方はありません。ありていに言えば、「おもしろくないことをひたすら避けて、ありもしない幻を追っている」だけです。

そんなやり方の妥当でないことが、応用言語学者の調査によっても、次々に明らかになっています。そのいくつかを列挙してみます。

1 ネイティヴ・スピーカーであっても、読書だけで未知語彙の意味を類推して語彙を強化しようとすると、間違ったあるいは不正確な意味の推理がたいへん多くなるし、たとえ正しい推理をしてもすぐ忘れてしまうし、全般的な効率も悪い。また、未知語彙の意味を類推するに適した文脈でないことも多く、未知語彙が通常妥当とされる用法にしたがって使われていないこともある。

2 日本人の英語学習者の場合、英和辞典をことさらに避ける必要はまったくない。日本語に転換できない英語の語彙があるし日本語では的確に説明できない英語の表現があるからできるだけ英英辞典を利用したほうがいいという主張も後を絶たないが、英→日が不可能な語彙や表現をあげてみなさいといわれていくつ例示できるのか? 50か100か? せいぜいそれぐらいでしょう。大人のネイティヴ・スピーカーの語彙が(学習英英辞典の見出し換算で)5万超だとして英→日が不可能な語彙が100だとすると100÷5万で0.2%に過ぎない。そんな語彙は別に対処すればなんら問題はない。日本人なら日本語が最もよく理解できるのだから英和辞典をどんどん利用すればよい。少なくとも5000語ぐらいの基礎語彙が蓄積されるまで(そうすれば学習用英英辞典も利用できるようになるから)英和辞典をしっかりひいて英語の語彙の意味を正確に覚える必要がある。だいたい類推しただけで(ひんぱんに見当はずれのままで!)放置するなど愚の骨頂である。

学習用英英辞典が充分利用できる程度の語彙ができたら主として英英で語彙を強化してもいい。語彙強化に学習用英英辞典が最適だという面からみて英→英は便利でもある。また、そのこと自体英語を読む訓練になり英語に慣れる効果を持つ。英英の方が「なるほど!」と思えることもある。

しかし、いくら上達しても、英→英だけでなく、英→和も大切である。英英辞典の語彙説明が常に英和辞典より明快であるとも限らないし、英和辞典だからこそ可能な説明もある。決して英和辞典を疎んじてはならない

3 以降については次回に書きます。

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