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辞書の威力(7)

柴田元幸著 『生半可な學者』 のなかの 「愛なき世界」という章は、次のように始まります。

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 こんな小話がある。
 ある学者が講演を終えたあと、一人の男がやって来て、「あなたの話したことは、すべて私が持っている本に書いてある」と言った。さては知らぬ間に他人の学説を盗んでしまったのだろうか、とすっかり不安になった学者のもとに、男から小包が送られてきた。中には1冊の辞書が入っていた

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柴田さんは、この章のなかで、翻訳は辞書の定義をつなぎ合わせただけでは通用しないとことわりながらも、― 「あらゆることについて何々辞典に無数の御教示をいただいた」と、自分の愛用辞書に謝辞を述べてしかるべきなのである ― と書いておられる。

 また、― よほど語学力があるか、あるいはよほど無責任な人間ならともかく、マメに辞書を引き引き翻訳をする並の人間であれば、誰でも一度は、自分が書いていることはすべて辞書からの引きうつしにすぎないのではないか、と感じたことがあるにちがいない ― とも書いておられる。

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もちろん、ちゃんと翻訳する場合は、柴田さんがおっしゃるように、辞書の引き写しだけですむわけでもないし、他の資料や人にあたらなければ分からないこともある。

それでも、柴田さんほどの英語力・日本語力に秀でた人が上記のような感想を書いて「リーダーズ英和辞典」を絶賛しておられることは注目に値する。

普通の英語学習者は、翻訳者でも何でもありませんから、柴田さんのように頻繁に辞書を引くことはないし、だから、柴田さんのような辞書観をもつこともないでしょう。

「辞書は絶対引くな!」と主張する向きさえあります。

しかし、辞書のいろいろな欠点や限界やたまにある間違いなどを差し引いても、辞書を引くほうが生身のネイティヴ・スピーカーに聞くより(そのほうが手っ取り早いこともあるが)はるかに正確で有効な情報を得られる場合が多い。

辞書で得た知識を利用して映画や歌やペーパーバックに親しみネイティヴ・スピーカーと会話すればよい。そうすれば、辞書由来の理解はもっと深くもっと人間味のあるものになる。辞書はそのためにあるのだと考えています。

日本人が書く英語教材もほとんどが辞書由来の知識を土台にしたものです。

「リーダーズ」などと比較して収録語数ではとうてい及ばない学習辞書に限ってみても、もし学習辞書をチェックする「アンチ・バベルの塔」を完成させたら、ペーパーバックを読んでも、CNNのニュース番組を聴いても、市民に対する何でもないインタヴューを聴いても、知り合いのネイティヴ・スピーカーの話を聴いても、ハーヴァード・ロースクールの公開討論会を聴いても、MIT(全コースの無料公開を目指している)の生物学入門の講義を聴いても、たいてい難なく理解できます。

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Comments

こんにちは。ご無沙汰しています。
先日、ようやくカードが10000枚になりました。SVLで言うとLv7が終わってLv8の途中です。SVL完成まであと4500程度の予定です。今年も半分終わってしまいましたので、ちょっと予定がずれ込んで年内終了目標です。
マイケルクライトンの小説を読んでいると、カードにしたばかりの単語がしばしば出てきて、良い相乗効果になっています。
ご報告まで。では。

Posted by: yamasina | July 06, 2006 at 03:44 PM

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