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格差社会と語彙格差

ここ数年、「格差社会」ということばをよく見聞きするようになりました。

一般には「所得格差」が顕著な社会を意味することばですが、今回は「語彙格差」に焦点をあててみます。

「語彙格差」が「所得格差」に直結している事実は否めないと思うからです。

And studies have revealed a 3000-word vocabulary disparity between 4-year-olds from high- and low-income families. (http://www.projectcalifornia.org/site/pp.asp?c=nmL9KgNYLyH&b=392095より) という文章の中にある「vocabulary disparity」という表現が「語彙格差」の私訳になります。

上記の「California Project」で言及されている4歳児の最大語彙格差3000語は驚くべき数字です。前にも述べたかもしれませんが、こうした幼児の語彙格差は、そのまま放置しておくと、子どもの成長と共にどんどん大きくなりやがて手がつけられなくなって、結局は語彙格差が所得格差に直結してしまうという現実があります。

これは、あくまで統計的な現実です。語彙の貧困な人が大金を稼ぐ例はいくらでもあるからです。しかし、統計的な現実が社会の実相を反映し、貧困が重大な社会問題になっていることが事実だとすれば、各人の語彙格差を小さくすることは、あるべき社会を築くために欠かせない努力目標でしょう。

「結果の平等」は、ある程度まで、存在して自然ですが、「機会の平等」は人が生来持つべき権利でしょう。「California Project」が指摘するように生まれながらにして既に機会の不平等が存在するとしたら大問題です。

さて、日本の教育の現状はどうなっているでしょう?

端的な例として、中学生の語彙力。

まず、「アンチ・バベルの塔」の塔主として、中学生が学習する英語の語彙数に注目してみます。

まことに愚かな「ゆとり教育=放置教育」の結果、公立中学で学習する英語の語彙は何と!800~900語にすぎません。

他方、私立の有名中学の生徒が3年間で学習する英語の語彙数は3000語に達します(文法・構文もはるかに高度です)。中学3年間で学ぶ英語の教科書の総ページ数は650ページほどになり、その他問題集などもたいへんな量になります。ラジオやテレビの英語番組もカリキュラムに含まれます。順調に学習する生徒は(音声面でも概ね優れ)中学生で当然のように英検2級に合格し、高校では準1級(高校の英語教諭で準1級レヴェルに達するのは20%未満)やごく少数ではあるが1級にも合格するレヴェルまで上達します。当然落ちこぼれもかなり出ますが、そんな落ちこぼれの生徒でも公立中学ではよくできる生徒になることが多い。公立中学の落ちこぼれは究極の落ちこぼれになってしまう可能性が高い。

さらに、語彙学習の充実は、英語の語彙に限りません。他の科目の学習語彙も、質・量ともに、公立中学とは桁違いです。

一部の有名私立の生徒たちが傑出して恵まれた機会を与えられていることは明らかです。裕福な家庭の子弟が私立に殺到し、公立中学は「おろかなゆとり教育」を強行して与えられるべき「機会の平等」を奪っている。

公立中学出身者でも公立高校の2年間ほどで有名私立高校生に追いつき追い越す生徒もかなりの数に昇りますが、統計上、中学時代に機会均等の権利を侵害されていることは否めません。

15歳までの教育格差(=語彙格差)が格差社会の主要な要因のひとつになっている事実は看過できません。

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Comments

公立中学で学習する英語の語彙数がゆとり教育に由来する問題であるという証拠はありますか?
日本国は、日本語を公用語とする国です。英語の教育水準で所得格差を論じるのは不適当です。
中学教育時の英語の教育レベル(国が定めた最低教育水準)は今も昔もそれほど差はありません。むしろ、公立校でも教育特区という制度を利用し、英語教育に力を入れ始めた学校があるほどです。
一部の私立進学校の教育レベルが高いのは、ゆとり教育以前からであって、これは諸外国同様、単純に上流階級向けの教育施設であるためです。

Posted by: Kwansai | December 29, 2006 at 01:23 AM

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