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言葉は自然に覚えるものではない(1)

「ネイティヴ・スピーカーは本を読んだり辞書を調べたりして語彙を獲得するのではなく自然に覚えてしまう」 と思い込んでいる人も多い。

これが思い違いであることは、たとえば日本のゆとり教育の ( うまく活用すればいい面もあるが ) 失敗面を注視してみればよくわかる。

今や、日本語の読み書きさえおぼつかない若者がおおぜいいる。 普通なら4~5万語の語彙数があってしかるべきなのに、彼らはおそらく2万語前後の語彙数しかありません。 読めない漢字や理解できない語彙が多くてコンビニのバイトでさえ満足にできないことがある。 だから、職業選択の幅がせまくなる。 まともな本など読めないし、深く考えることもできない。 思考のツールである語彙が不足しているのだから仕方がない。 芸術やスポーツやビジネス感覚に秀でている人たちならあまり語彙は必要でないこともある。 しかし、そうではない人たちの場合、語彙不足は深刻です。

人は、日常のルーティーンをこなすのに必要な語彙以外は、自然には覚えない。 書き言葉や標準文法や日常語彙ではないが必要な語彙は、ちゃんとした教育を受けなければ身につかない。 ゆとり教育はややもするとそのことを等閑視してきた。 

最近、『 Longman Study Dictionary of American English 』 という学習英英辞典が出版されました。 この辞書は、本来は非ネイティヴ・スピーカーの英語学習者向けではなく、語彙貧困問題を抱える米国の小中学生のために開発された辞書です。

その巻頭の 「 Introduction 」 は ― A dictionary can be an invaluable resource for young language learners as they tackle the vocabulary demands of challenging reading curricula and academic writing tasks. ― という書き出しになっています(太字 k.y.)。 

この 「 Introduction 」 をさらに読むと、絵本のような小学校低学年用の辞書では対応しきれなくなってきたときに、適切な辞書がない。大人用の辞書を使えない子どもたちは落ちこぼれていく。分からない語彙がでてきても意味も分からず丸覚えなどしているうちに落ちこぼれ感を深めていく。だから、子どもの日常語で語義説明をし子どもでもわかる例文を添えて理解を促す 『 Longman Study Dictionary of American English 』 が出版されたと書いてある。

『 Longman Study Dictionary of American English 』 の総語彙数は24000語 (見出し語は1万5千語ぐらいでしょう ) 。 まことに基本語・必須語ばかりですが、米国でもこの程度の語彙につまづく生徒がめずらしくなく、そのまま大人になってしまう可能性もあるということです。 そんな大人の語彙数はやはり2万語前後になってしまう。 それなりの職につくことは望み薄になります。 読めない書けない考えられない・・・ 

他方で、日本でも米国でも、『広辞苑』 レヴェルの辞書を使って自己学習を進める子どもたちもいる。

歴然とした格差が生じて社会問題になる。

「Introduction 」 は最後の節で、「 A consuderate, developmentally appropriate dictionary shoud be an educational civil right at every grade. = 子どもの発達過程に即した辞書は、教育的公民権のひとつだ」 としています。

資本主義・市場主義社会である以上辞書出版も儲けを狙うビジネスであることはもちろんですが、辞書は権利であるという主張も肯定せざるを得ません。 

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