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進化しないリスニング教材

私は、前に、 「リスニングの自然な限界」 という記事で ― 私にはほとんど聞き取れない英語の歌詞を100%聞き取れるという日本人の方もおられる。とても信じられない。英語の映画もすべて聞き取れると言う方もおられる。「そりゃないでしょう!」と思う ― と書きました。

日本語でさえ、妻や子どもたちの会話、歌詞、映画の台詞が時々聞き取れない、たまにはまったく何を言っているのか分からないことだってある。

ところが英語のリスニングになると、ネイティヴ・スピーカーでさえ聞き取れないものを含むリスニング教材がある。

私も、ネイティヴ・スピーカーではないから、どの部分がネイティヴ・スピーカーでも聞き取れないのか、どの程度聞き取れないのか、まったく聞き取れないのか、あるいは聞き違えるのか、というようなことはあまり見当がつかない。

つまり、リスニングの練習をしている人は「聞き取れなくてあるいは聞き違えて当然な部分にもかかわらず聞き取れないと思って不当に悩んでいる可能性も多分にある」ということだ。

ネイティヴ・スピーカーの聞き違えの具体例として前回に http://www.amiright.com/misheard/stories/ のサイトを紹介しておいた。これを読むと実におもしろい。

さて、小手鞠るい (コデマリ・ルイ) ― (岡山県生れ。同志社大学法学部卒業。作家・詩人・翻訳家で1992年からニューヨーク州に在住。ご主人は白人・米国人・米語のネイティヴ・スピーカー ) ― さんが 『諸君(文芸春秋社)』 の2007年3月号に 「折り目正しき日本人英語 ― 私の英語論 ① 」 と題された興味深い記事を書いておられるが、その中に、ご主人のリスニングに関する言及がある。それを引用しておきます ( 省略・太字は k .y. )↓

(引用開始) 私の夫は・・・「ごく普通のアメリカ人」であり、英語ネイティヴである。そんな夫がしょっちゅう、こんな愚痴をこぼしている・・・「ああ、英語がなかなか通じなくて苦労した」 あるいは映画館を出たあと、「あの俳優の英語は、まったく理解できなかった。あとでDVDを借りて、字幕付きでもう一度見てみないと」・・・ (引用終止)

現行の英語・リスニング教材はこうした事実をまったく考慮していない。英語のネイティヴ・スピーカーが実際どれくらい正確に聞き取れるのかというチェックなしに教材を作成している。聞き取れなくて当然な部分まで聞き取らせようとしている可能性がある。

英和辞典は20世紀の末~現在にかけてコーパスやネイティヴ・スピーカーの積極的な活用によって顕著な進歩を遂げている。今日買ってきた 「ロングマン英和辞典」 は、英語の語彙の記述に英語の「コーパス(Longman Corpus Network )及びネイティヴ・スピーカーのエキスパート」を駆使していることはもちろん、和訳などについては 「ロングマン現代日本語コーパス」及び日本人辞書編纂チームが共同参画している。英日両言語の 「コーパスとエキスパート・グループ」 の本格的なコラボレーションによって完成された「英和辞典」 です。

そんな進化を継続している英和辞典に対して、リスニング教材は ― ネイティヴ・スピーカーのリスニングの実体を反映していない ― という重要な欠点を抱えたままである。

追記: 本文とは関係ありませんが http://www.youtube.com/watch?v=DPAZQ6mhRcU  ( 三島由紀夫の英語 )


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