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語彙強化法(多読?カード?)

私はもう何度も語彙強化におけるカード利用の有効性について ― 「実際の大きな成功体験=アンチ・バベルの塔」を根拠にして ― 述べてきました。

カードは、「 いわゆる多読=ネイティヴ・スピーカーからすれば超少読 」 とは比較にならない高い効率と正確さを有する語彙強化手段です。

その多読とカードに関して、NHKの 『新3ヶ月トピック英会話 英単語ネットワーク~めざせ10000語~ 8月号』 に、「8月のテーマ・単語カードの効果的な活用法」と題された記事があって ― ・・・近年の研究では、単語カードによる暗記は非常に効果的かつ効率的であることが示されています。研究によれば、多読のみによって100語を学ぶには、10万~20万語ものテキストを読む必要があるといいます。また、多読のみで2000語を学ぶには、約29年かかるという推計もあります。多読による英単語の学習は、残念ながらそれほど効率的ではないようです・・・(省略 k.y.) ― という記述があります。

私にすれば 「そんな明らかなことをわざわざ研究するほどのことか!?」 と思うのですが、この記事を書いている中田達也さんはしごくまじめにその研究とやらについていろいろ解説しておられます。ほとんどだれかの研究?!の受け売りでご本人が実践されての結果ではなく迫真性を欠いていますが、かなりていねいに解説されていますのでみなさんも一読されたら参考になるはずです。ただし、カード利用の有効性は疑いようがないものの、個々のテクニックについては各自に開発・習熟することが肝要だと考えています。

ちなみに、中田さんが 「3.”hand computer”でスケジュールを実現しよう」 という表題の下に紹介されているカードの利用法が今から約30年前に稲村松雄先生が書かれた 『本格的中学英語の勉強法(評論社)』の 第10章にある「単語カードのすすめ」のやりかた にそっくりであることを発見して、ずいぶんなつかしい思いをしました。当時は個人が自由に使えるパソコンなど夢のまた夢で hand computer などといっても???の時代でした。

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英語の語彙:雑談(47)

http://canopus.s31.xrea.com/ の Gilderoy さんという方が、2007/07/21(Sat) に、http://cgi35.plala.or.jp/report-b/yybbs/read.cgi?mode=all&list=tree&no=3581 というサイトで、次のような疑問を提示されました。

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エドガー・アラン・ポーの小説の冒頭についての質問です。下のリンク先で読めます。ショートショートです。

http://etext.library.adelaide.edu.au/p/poe/edgar_allan/p74c/cons4.html

>TRUE! --nervous --very, very dreadfully nervous I had been and am;
but why will you say that I am mad? The disease had sharpened my
senses --not destroyed --not dulled them. Above all was the sense of
hearing acute. I heard all things in the heaven and in the earth. I
heard many things in hell. How, then, am I mad? Hearken! and observe
how healthily --how calmly I can tell you the whole story.


all things in the earth & in the heaven <-> many things in hell

この対比において――
1. heaven/earthには、なぜtheがつくのでしょうか?
2. hellにはなぜtheがつかないのでしょうか?

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「塔主」 はそれに対して次のように回答してみた。

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A: まず、語源を確認しておきます。

heaven は 「heofon = おおうもの」、earth は「eorthe =(陸)地」、hell は「hel(l) = おおいかくされた場所」という、いずれも古英語に由来する語彙です。

B; 次に、(旧約)聖書の「1:創世記 / 1章 1節 」を見てみましょう。

① 日本語・口語訳 : 「はじめに神は天と地とを創造された」

② 英訳(文語 King James Version): 「 In the beginning God created the heaven and the earth 」

③ 英訳(口語 New International Version): 「 In the beginning God created the heavens and the earth 」

③ の the heavens とは「空」のことですが ② の文語体では the heaven と単数形になっています。いずれも目に見える「空 = 天」を表しています。

なぜ、heaven と earth に the がつくのかと言えば heaven も earth もまさに目に見える具象の「天=空」と「(陸)地」を指す語彙だからです。

周知のごとく― 聖書では「具象の世界=天と地=全世界=全宇宙」は God が創造したことになっています。religious antiscience の立場ですね。

念のため、③ の the heavens = ② の the heaven は単に「空 = the sky 」のことで「天国」という意味はありません。「天国」を意味する場合は、通常 ― hell の場合と同様 ― 無冠詞の heaven で表現します。

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エドガー・アラン・ポーは ① と同様に in the heaven and in the earth と書いたわけでしょう。

他方、Aで述べましたように、hell は本来「覆い隠された場所」すなわち「架空の場所」を意味する語彙で、目には見えない抽象の産物であり、具象である heaven や erath と違って単独で the hell と記述されることはありません。ただし、There is a hell in Buddhism as well とか the hell of incessant suffering とかの表現があることはご承知の通りです。

(新約)聖書でも「地獄」を意味する hell (or Hell) はやはり目に見える具象の場所ではないために単独で the hell と記述されることはありません。the hell beneath という表現はありますが beneath(地下の)という場所を特定する形容詞がついています。

イエスの教えに特徴的な「地獄 = hell = 悪事を行う者たちが罰を受ける所という架空の場所」が設定された背景には、古代の人たちの ― いくら悪事をはたらいても現世で報いを受けているようには見えない多くの人たちに対して抱いた「さばきはいつどこで行われるのか」という重大な疑問 ― があったようです。

そうした意味では、hell は「場所」であると共に「裁きの機能」でもあり、Gilderoy さんご指摘の go to school の school の役割を無冠詞の hell が果たしているとも言えるでしょう。

なお、上記でエドガー・アラン・ポーがいう hell は「キリストのいう地獄」に限らず「地獄のようなところ」と解してよいのは当然でしょう。

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「塔」でカードに記載する語彙の選択について(1)

私が利用した 「上級学習英英辞典」 は 『Cambridge Advanced Learner's Dictionary』 でしたが、カードに転記する語彙の選択は次のように行いました。 なお、以下にいう 「語彙」 とは、何度も述べてきたことですが、「単語」だけではなく、熟語・連語表現・スラングなど、その他あらゆる形態の表現を含みます。 

1 各語彙について、(1) 見出し語、 (2) 熟語・連語表現・スラングなどをすべて綿密に読み、例文も必ずていねいに読む。

2 1 の過程で少しでも記憶のあやふやな(1)や(2)はもれなく転記し、例文は、有益な場合あるいは例文がないと語彙の意味・用法が明らかになりにくい場合はすべて転記する。

その際、だいたい意味の見当がつくとか文脈があれば必ず分かるだろうとかいう語彙であっても、パッと見て分からないものは必ず転記する。

このようにして行う未知語彙の選択及び転記は、意味の説明のないまたは日本語で2つぐらいの簡単な意味しか書いてない 「英単語」 だけのリストから、自分の現在の知識だけを基準に未知語だと判断する単語を選択して ― 他の辞書などで調べた意味または元々書いてあった2つぐらいの意味と共に ― 転記するやりかたとは異なります。 

どうちがうのか?

上記 1 及び 2 の 「塔] 方式の未知語彙選択によって:

(イ) 多義語の知らない意味に気づかないままその単語を既知と思ってしまうリスクを避けることができる。

(ロ) 綴りが同じだからという理由で既知語とはまったく違う意味を (ときには違う発音も) 持つ単語を既知と思ってしまうリスクを避けることができる。

(ハ) ニュアンスの違いに気づかないままに、たとえば exceptional を 「例外的な」 という意味を持つ単語だと思ってしまって 「ひときわすぐれた」 という未知の肯定的な意味も持つ実は未知語として選択すべき単語を既知語だと思ってしまうリスクを避けることができる。

(ニ) 元の語彙とはまったく違う未知の意味 を / も 持つ派生語を ― 元の単語を知っているから (派生語の意味は想像できる) と勝手に判断して ― すべて既知の単語と思ってしまうリスクを避けることができる。

(ホ) ややもすると 「単語」 だけを 「語彙」 だと思ってしまい熟語・連語表現・スラングなどその他の重要表現を等閑視して済ませてしまいがちになるリスクを避けることができる。 また、熟語なども覚える場合でも、簡便なリストだけに依拠するやりかたはかなりリスクが高いことを認識しておくべきです。

「塔」 の場合、「単語」 以外の語彙は数十パーセントを占めているはずです。 

その結果、私が転記した語彙の総数は2万語ぐらいになりました。 この数は、利用辞書の見出し語の数とはほとんど無関係だし、そういう意味で、利用辞書の見出し語の数だけを云々するのはあまり意味のないことだと考えています。

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「学習(英英)辞典」を暗記することが最善の語彙強化法である理由・続

前回に、「学習(英英)辞典」を暗記することが最善の語彙強化法である理由として: 

1 覚えるべき語彙数が限定されていて「いくら覚えてもきりがないという焦燥感」から開放されること

2 1 にいう 「覚えるべき語彙数」 に含まれる語彙の記述が、コーパスの活用に依るものであるため、実際に役立つ定義であること

3 市販の語彙集に比較して各語彙の記述の信頼性が格段に高いこと

とい3つの点をまず指摘しておきました。

換言すれば、「学習(英英)辞典」を暗記すること」 が語彙強化のダントツに安全・確実で効率的な方法だということです。

「いわゆる多読」 による語彙強化 (私は5000語を越えるあたりからほとんど効果がなくなると思いますが) などとは比較にならない効率を発揮します。

「学習(英英)辞典」 は ― 専門や趣味にかかわる語彙及び業界用語などは除いて ― 無限に広がる語彙の大海の中から普通の人が普通に話をしたりものを読んだり聞いたりするさいに必要にして十分な語彙をプロチームが客観的に取捨選択して正確に編纂・記述した、英語学習用のみならず暗記の対象としても、最高水準の語彙集です 。

私たち個人が 「学習(英英)辞典」 に匹敵する質・量の語彙を膨大な語彙の海から自分で取捨選択して必要十分な語彙集を作成することなど ― だれが考えても ― 不可能です

いったい、「学習(英英)辞典」 の編纂者たちが掲載語彙渉猟の対象とする語彙の大海とはどれほどすごいヴォリュームを備えたものなのか?

Alvin & Heidi 著 『 Revolutionary Wealth 』 に ― ・・・ " the average American spends 3304 hours per year with one or another kind of media. " Some 1578 hours are spent watching TV, another 12 in front of movie screens - which adds up to about 11million words. Another 354 hours are devoted to newspapers, magazines and books ・・・ The result ・・・ is that " in 70 years of life you would be expected to around six gigabytes of ASCII. " ・・・(省略は k.y.) ― という1節があって、米国のコンピュータ科学者・Michael E. Lesk 氏の調査結果の一端が紹介されています。

平均的なアメリカ人は、1年間で、3304時間何かのメディアに接している。

その内、TVを 1578時間 (毎日4時間超 ) 映画を12時間見て1100万語の語彙に接し、新聞・雑誌・本を 354時間 (毎日約1時間) 読んで (ネイティヴ・スピーカーの平均読書スピードは毎分200~250語だから ) 約500万語の語彙に接する。

つまり、平均的なアメリカ人がテレビや読み物で年間に接する語彙数は1600万語に達する。

これを1冊400ページ ( 1ページ400字 ) のペーパーバックに換算すると約100冊分の語彙数に匹敵する。

他方、「学習(英英)辞典」 が依拠するコーパスは広範な分野にわたる3億5000万語前後の語彙数をカヴァーしている。 

これは、Lesk 氏の調査に基づくと、平均的なアメリカ人がおよそ22年かけてテレビや読みもので接する語彙数に相当する。

非ネイティヴ・スピーカーで素人の日本人が、しかも各自独力で、こんな語彙の宇宙から必要十分な語彙を取捨選択して語彙集を作成することなどできるわけがない。 

だから、「学習(英英)辞典」 (またはそれに準じるもの) の語彙をすべて覚えるのが、最も安全確実で効率も極めて高い語彙強化法であることはだれも否定できないでしょう。

たとえそのために2~5~15年人によっては20年かかっても、効率が悪いとは決して言えないと思います。

そして、「学習(英英)辞典」 にさえ不要な語彙があると思うなら、自己責任で、そんな語彙は無視すればよい。 

話しは変わりますが、上記の Lesk 氏の調査結果はおもしろいですね。 日本人の場合も実体はさほど変わらないでしょう。 

人生70年として、テレビや読みものを通じてペーパーバック換算で7000冊に匹敵する語彙に接し、10万時間超もテレビを見る! 何語を問わずネイティヴ・スピーカーの語彙活動は、やっぱり、桁違い!

さて、そのテレビですが、4時間を1時間にして残りの3時間を他の活動に充当するとしたら、10年間で何と1万時間を越える! 

その1万時間があれば、たとえ 「上級学習英英辞典」 は無理でも、 『Longman Dictionary of American English (約1000ページ)』 の「塔」 は立派に建設可能です。

私の妄想でしょうか?

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語彙強化の究極目標と知的正直(3)

前回に、「ホモ・コルプスの特性は知的に正直であろうとすることです」と書きました。

あらゆるマスコミの記事や市販の単・熟語帳の宣伝コピーや有識者の発言などはあくまでも参考にする程度で、絶対の基準は己の知的な判断に置く

自分で ― 文法・構文は習得したのに ―  「日本語と同じようには読めていない」 と感じたら、つまりそのような自分なりの知的判断がくだせるなら、他の人が、たとえどんなに権威のある人であっても、何と言おうと、そんな自分の判断に従うことすなわち知的に正直であることが肝要です。

決してごまかさない。語彙が不足していると感じたらその自分の判断に正直に従うこと。

○○語あれば十分です」などという言説は ― もしその○○語に達したにもかかわらず「日本語と同じようには読めていない」 と自分で実感しているのなら ― 信じないこと。

「○○の語源を理解すれば1万数千の語彙の意味を推測することができます(塔主が思うに、そんなことはできるはずがない!!し、そんな説を紹介している人自身できっこない!!)」 などという妄言は信じないこと。

ただし、もし 「○○語あれば十分」 とか 「○○の語源を理解すれば1万数千の語彙の意味を推測することができる」 とか自分で確かに判断できるなら、妄言ではないと実感するなら、そんな自分の知的判断に従うべきであることはもちろんです。

あくまで自分に対して知的に正直であることが大事。

そうすれば、他の人たちのしていることが気になったり、他の人たちの語彙力と自分の語彙力を比較してみたり、TOEICで950点~満点を獲得して実際の力不足にがっかりしたり、することも不要になるでしょう。

だれもが自分で満足できるレヴェルに達することができるわけではありません。

やむを得ず自分の判断で妥協することもあるでしょう。

しかし、それは決して 「ごまかし」 ではない。 わけもわからず道を踏みはずしているわけでもない。

先に機会があればそのときは何合目までという見通しのきく知的に正直な妥協です。


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「学習(英英)辞典」を暗記することが最善の語彙強化法である理由

「学習(英英)辞典」を暗記することが最善の語彙強化法である理由がいくつかあります。

1 覚えるべき語彙数が限定されていて「いくら覚えてもきりがないという焦燥感」から開放されること

2 1 にいう 「覚えるべき語彙数」 に含まれる語彙の記述が、コーパスの活用に依るものであるため、実際に役立つ定義であること

3 市販の語彙集に比較して各語彙の記述の信頼性が格段に高いこと

4 語源や多様な例文など、あらゆる語彙強化手段がすでに組み込まれていて、各人の工夫次第でどのようにも利用可能なこと

5 音声(特にすべての例文に付された音声)は最高ののリスニング教材のひとつになること

6 語彙とは、単に単語だけではなく、イディオム・スラングその他の広範なチャンク表現も含む広範な表現要素群であることが実感でき、語彙=単語という狭小な語彙観から脱却して躍動感に満ちた語彙世界を臨むことが可能になること

7 映画を見たりものを読んだりしていると「学習(英英)辞典」で覚えた語彙が少なからず登場し、「塔」で始めて覚えたチャンク表現が決定的な場面で使われていたりして、感動しつつ用法を確認できること。

8 完成すれば ― 「塔」主の個人的な趣味にかかわることだが  ― 『Reader's Digest』 誌の 「WORD POWER (普通のネイティヴ対象)」 で最高ランクの常連になれること

こんなことは他の語彙強化法では不可能です。

あちこちから、「途方もない根気がいるじゃないか!!」という叫びが聞こえます。

しかし、真の意味で役に立つレヴェルを目指すなら、根気の要らない方法=役に立たない方法=結局は時間とお金を浪費する方法 であることに覚醒すべきでしょう。

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