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英語の語彙:雑談(47)

http://canopus.s31.xrea.com/ の Gilderoy さんという方が、2007/07/21(Sat) に、http://cgi35.plala.or.jp/report-b/yybbs/read.cgi?mode=all&list=tree&no=3581 というサイトで、次のような疑問を提示されました。

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エドガー・アラン・ポーの小説の冒頭についての質問です。下のリンク先で読めます。ショートショートです。

http://etext.library.adelaide.edu.au/p/poe/edgar_allan/p74c/cons4.html

>TRUE! --nervous --very, very dreadfully nervous I had been and am;
but why will you say that I am mad? The disease had sharpened my
senses --not destroyed --not dulled them. Above all was the sense of
hearing acute. I heard all things in the heaven and in the earth. I
heard many things in hell. How, then, am I mad? Hearken! and observe
how healthily --how calmly I can tell you the whole story.


all things in the earth & in the heaven <-> many things in hell

この対比において――
1. heaven/earthには、なぜtheがつくのでしょうか?
2. hellにはなぜtheがつかないのでしょうか?

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「塔主」 はそれに対して次のように回答してみた。

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A: まず、語源を確認しておきます。

heaven は 「heofon = おおうもの」、earth は「eorthe =(陸)地」、hell は「hel(l) = おおいかくされた場所」という、いずれも古英語に由来する語彙です。

B; 次に、(旧約)聖書の「1:創世記 / 1章 1節 」を見てみましょう。

① 日本語・口語訳 : 「はじめに神は天と地とを創造された」

② 英訳(文語 King James Version): 「 In the beginning God created the heaven and the earth 」

③ 英訳(口語 New International Version): 「 In the beginning God created the heavens and the earth 」

③ の the heavens とは「空」のことですが ② の文語体では the heaven と単数形になっています。いずれも目に見える「空 = 天」を表しています。

なぜ、heaven と earth に the がつくのかと言えば heaven も earth もまさに目に見える具象の「天=空」と「(陸)地」を指す語彙だからです。

周知のごとく― 聖書では「具象の世界=天と地=全世界=全宇宙」は God が創造したことになっています。religious antiscience の立場ですね。

念のため、③ の the heavens = ② の the heaven は単に「空 = the sky 」のことで「天国」という意味はありません。「天国」を意味する場合は、通常 ― hell の場合と同様 ― 無冠詞の heaven で表現します。

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エドガー・アラン・ポーは ① と同様に in the heaven and in the earth と書いたわけでしょう。

他方、Aで述べましたように、hell は本来「覆い隠された場所」すなわち「架空の場所」を意味する語彙で、目には見えない抽象の産物であり、具象である heaven や erath と違って単独で the hell と記述されることはありません。ただし、There is a hell in Buddhism as well とか the hell of incessant suffering とかの表現があることはご承知の通りです。

(新約)聖書でも「地獄」を意味する hell (or Hell) はやはり目に見える具象の場所ではないために単独で the hell と記述されることはありません。the hell beneath という表現はありますが beneath(地下の)という場所を特定する形容詞がついています。

イエスの教えに特徴的な「地獄 = hell = 悪事を行う者たちが罰を受ける所という架空の場所」が設定された背景には、古代の人たちの ― いくら悪事をはたらいても現世で報いを受けているようには見えない多くの人たちに対して抱いた「さばきはいつどこで行われるのか」という重大な疑問 ― があったようです。

そうした意味では、hell は「場所」であると共に「裁きの機能」でもあり、Gilderoy さんご指摘の go to school の school の役割を無冠詞の hell が果たしているとも言えるでしょう。

なお、上記でエドガー・アラン・ポーがいう hell は「キリストのいう地獄」に限らず「地獄のようなところ」と解してよいのは当然でしょう。

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