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「塔」建設の所要時間(1)

今回の記事で 「学習辞典」とは、ネイティヴ・スピーカーの (学習不適格生ではない) 中学生あるいは高校生のレヴェルの ― つまり読書を含む日常生活に特に支障をきたすことのないレヴェルの ― 語彙を掲載した (1) 『ニュヴィクトリーアンカー英和辞典』 または (2)『Longman Dictionary of American English 』 あるいはそれに匹敵する他の学習辞典のことです。

私は、自分の成功体験からして、学習辞典の暗記( = 学習辞典に掲載されている単語や熟語などの意味を見たり聞いたりしたら理解できるようになること) は充分可能だと思っています。

今回は、その所要時間について、もう1度考えて見ましょう。 

その際、前に言及したことと重複したり (「塔」完成後の見解を加味したために) 多少食い違ったりすることがありますので、ご了解ください。

本論に入る前に ― 前にも書いたことがありますが ― まず強調しておきたいのが発想の転換です。

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大学受験や資格試験に必要な語彙は、それがたとえ英検1級やTOEIC950点以上であっても、学習辞典の総合的な語彙レヴェルには到底及びません。

だから、大学受験や資格試験のときのように1日に30分~1時間で数ヶ月や1年程度がんばったら学習辞典を暗記できるかと言えば、そんなことは不可能です。

最近の市販の単熟語集は実によく工夫されていて効率も高いですから、資格試験などを受験するのであればどんどん利用したらいい。 合格したり高得点を取れば、日本人としては高水準の英語力に達したということで、大いなる自信にもなります。 それはそれで誇りにすべきりっぱな成果です。

他方、何度も何度も述べてきたことですが、資格試験を突破したからといってその英語力はネイティヴ・スピーカーの (学習不適格生ではない) 中学生あるいは高校生のレヴェルに遠く及ばない のだという現実認識も欠かせません。 

「英語のネイティヴ・スピーカーではないのだし、英語は日常生活や仕事にあまり関係ないし、おまえが言うほど英語の力をつける必要はないのだよ」という人も多いし、「専門書は楽に読めるし特に支障はなくこれで充分だ」 という人もさほど珍しくないでしょう。

そうした見識は尊重されこそすれ、他人がとやかくいう筋合いのもではありません。 自分の英語力を自覚して納得されているのですから、何の問題もありません。 

問題なのは、その程度の英語力ではいやだと思っているのに、最後は読書だけでもネイティヴ・スピーカー並に楽しみたいなどと思っているのに、5年たっても10年たっても ― それなりに勉強していても ― あまり上達しないと感じている人たちです。 

大人の本を読みたいのに、辞書がなかったら、読めないというレヴェルの人たちです。 SSS多読法に救いを見出している人たちも多いようですが、今のままでは生涯SSS多読法のままで終わります。 どんなにSSS多読法の達人になっても、大人の本を日本語で読むようにすらすら楽しめるようにはなりません。

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そういう人たちは英語学習に対する発想の転換が必要なのです。

文法・構文・音声に問題がないとして、あるいはそれも併行して強化するとして、最大にして最後の壁は語彙の壁です。

語彙の質(特に基本語彙)と量の貧しさがどうしようもない壁になっているのです。

そんな語彙の壁を突破するためには5000語~1万語単位の語彙増強が必須で、数ヶ月や1年ではなく、短くても2~3年、通常は5~6年、人によっては10~20年要する場合もある。

「短期に楽しく簡単に」という発想を「長期にじっくり腰をすえて」という発想への転換が必要です。

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暗記法と復習(3)

英語の語彙の「記憶と記憶術」

記憶術はあくまで記憶を容易にするためのものですからそれがどんな方法であってもかまいません。

「語呂合わせ」であろうが正当な「語源の活用」であろうがその他あらゆる手段を駆使して覚えやすいやりかたで覚えたらいい。

しかし、記憶術を使う暗記作業の最終的な目標は、綴り・発音・アクセント・語義・用法などをできるだけ正確に覚えることです。

記憶術に凝るあまり肝心の記憶がゆがんでしまっては残念なことになります。

例えば、kennel [ kenlケヌル] を「犬(ケン)寝る( 所 )=犬小屋」と覚えたら非常に忘れにくい。優れた記憶術といえるでしょう。

他方、ネイティヴ・スピーカーはだれも「ケンネル」と発音しないし、そんなことを言っても通じないし、[ kenl] と言われたら分からないかもしれない。語彙は、音声をいいかげんにして覚えてしまうと、半分死んでいる。だから、「犬(ケン)寝る( 所 )=犬小屋」と覚えるのはまったくかまわないが標準的な発音もちゃんと習得しなければなりません。

音声も語義その他もできるだけ正確に覚えることが後の復習も楽にします思い出す確率も定着する度合も高くなります

なお、「塔」建設に英英辞典を使用している場合、語義説明は英英辞典の記述をそのまま転記するわけですが、覚えやすい和訳などがあれば併記しておくと便利です。記憶は英英にこだわる必要はない、英英でも和訳でも覚えやすい方を選んだらいいと思います。ただし、その和訳をおおまかにでも英語で説明できることあるいはやがてそうなることが大事です。それが、英英辞典を使って「塔」を建設する意義のひとつでもあります。

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ハリー・ポッターに熱中する小学生の語彙力・続

「ハリーポッター」 を原文の英語で和訳と同様にスラスラ読めて楽しめる人は、実は、稀です。

そうでなければ日本語への翻訳者が25億円前後も脱税やら節税やらできるほど和訳が売れない。

ところが、ネイティヴ・スピーカーなら小学生から熱中して読める。 

そして、そんな小学生の中でも母語の語彙レヴェルが格別に高い児童がたまに出現する。 

例えば日本人の小学生 (現在は中学1年生) ・追本 葵(おいもと あおい) さん ( 2007年9月13日(木) 日経・夕刊より ) : ( 斜字体は引用部分 省略 k.y. )

( http://www.yomiuri.co.jp/junior/articles_2007/070414.htm ) も参照されたし。

追本さんは、― ・・・小学館が小学生を対象に昨年創設した「12歳の文学賞」大賞を受賞した・・・小学四年生で小説を書き始めた。毎晩、就寝前に書きつづってきたノートは六冊までたまった・・・多い日には一日で本を二冊読む。小学校六年間で図書館の本を読み切った。将来の志望は作家ではなく、図書館司書だ ― そうだ。

前回に言及した 『エラゴン』 の著者クリストファー・パオリーニは幼いころから 『指輪物語』 などのファンタジーに親しんだ由。 幼くしてすごい語彙力ですね! SSS多読法の日本におけるリーダー・酒井邦秀さんは自著の 『快読100万語!ペーパーバックへの道』 で ― 映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作 The Lord of the Rings (『指輪物語』) もいつか原書で読みたい本の先頭近くに上がってきました。ただ、娯楽作品の中ではジョン・ル・カレ(John le Carre ) のスパイ小説とともに、いちばん読みにくい作品です。娯楽作品の中で、この二人はペーパーバック・リーディングの最高峰と言っていいでしょう  ― と書いておられます。

ネイティヴ・スピーカーの語彙レヴェルは、小学生でも、ほんとうにすごい。 一部の子達は優に大人のレヴェルにあるいはそれ以上に達しているわけです。

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コメントにお答えする(11/2007)

rikuri さん、はじめまして。

「塔」 を熱心に読んでいただけた由、何よりです。

> 選んだ辞書についてですが、やるんだったら大量に覚えたいという気持ちはあったのですが、挫折する可能性が高いと思った為一番手軽なジュニアアンカー英和辞典を選びました。

これは大正解だったと思います。

『ジュニアアンカー英和辞典』は必須の基本語彙ばかりを選択して記述した辞書ですから、本格的な語彙強化の手始めにまず取り組むべき辞書でしょう。

> 転記の作業についてですが、とても大変ですね Bの項あたりで挫折しそうになりました。

手始めに取り組むべき辞書だとは言いながら、Bの項あたりで挫折する人が、実は、大半でしょう。しかし、何とか可能であればぜひ続けたいものです。

それに、『ジュニアアンカー英和辞典』レヴェルの語彙をマスターしている人も多くないですよ。日本人としてはかなりのレヴェルになります。

> でも、新たな単語や意味などに出会うととても楽しく、大変な作業な中でも楽しさを見出すことが出来ています。

これがないと続かないでしょう。はたから見たら何が楽しいのだろうと不思議に思えるかもしれないけれど確かに(しんどいが)楽しい。

順調なときは生活のリズム・セクションにさえなる。

> しかし、仕事が忙しくなったりして、Fが終了した辺りで・・・

そういうことはよくあることだしむしろ当然なことじゃないでしょうか。気分がのらないこともあるし病気になることもあるし忙しくてそれどころじゃないこともある。人生にはいろいろなことがあり優先順位も入れ替わる。

私が20台半ばだったころは何事につけ道に迷ってばかりいました。とてつもなく大きな夢だけがあってとにかく道がわからなかった。それからどんどん現実に押し込まれて夢はどんどん小さくなって今はほんのちっちゃな夢だけが残ってしかしその夢はあまりに小さいがために実現する可能性もでてきた。

> 転記が終わってから暗記を始めるとなると一体終わるのは何時なんだ?と途方に暮れてしまう時もありますが、辞書1冊を暗記した時の達成感と、英語に対する視界の明るさを得た時の嬉しさを想像するとどうしてもこれだけはやり遂げて、その快感を味わいたい!と思います。

私もまったく同じ気持ちでした。続けていれば転記も暗記も必ず終わる。「塔」の利点のひとつは終わりをはっきり計算できることです。計算どおりに行かないこともしょっちゅうありますが、やるべきページ数は限定されていますから、いつでも計算し直せます。そして、やり続けていれば、確実に終点に接近していくわけです。

それに、rikuri さんはずいぶん若い方ですから、終わってもまだまだ若い! 

「まずは今の辞書を終わらせることだけに専念」すれば、次は、もっと広大な視野が開けます!

> とりあえず転記が終了したら報告したいと思います!

楽しみにして待っています!

Thank you.

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コメントにお答えする(10/2007)

白魚一寸 さん、はじめまして。

「塔」 をご覧いただき、ていねいなコメントまで書いてくださって、ほんとうにうれしいことです。

ありがとうございます。

私は漢字に憧れながら、勉強もしていませんので、漢字の知識はまことに乏しく恥ずかしい限りです。 漢検1級などとうてい手の届かない世界です。

だから、漢字に造詣が深くすらすら書ける人は素直に尊敬の対象になります。 

漢字は母国語ですから外国語の英語などとは追求できる深さがまったく違うと思います。 外国語はしょせん外国語ですから、日本語や漢字に磨きをかけることに比べたら、到達できる高さがまるで違うでしょう。

それに柳瀬尚紀訳 『フィネガンズ・ウェイク 1・2 (河出書房新社)』 にみられるように漢字の度量・許容度のすごさは桁外れ。

白魚一寸 さんがちょっとうらやましいです。

> 漢検の主催団体が発行している「漢検漢字辞典」というのがありますので、これを全部読もうと思って、亀の歩みですが継続しております。貴殿のようにカードは作成しておらず、朝の厠や寝床で読んでいるだけですので、どんどん忘れていますが、日々新たな発見もあり、辞典の悉皆学習は、しんどいけど面白いなあと思っております。

いいですねえ!

辞典の悉皆(しっかい)学習! 

しんどいからこそ面白みも大きくなります。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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コメントにお答えする(9/2007)

gini さんへ

はじめまして。

コメントありがとうございます。

> 毎日市販の単語集の暗記とThe Economistや洋書を読むようにしています。

私は、Economist を読むと、学校文法がそのまま使われていてうれしくなります。 構文集みたいな感じさえすることがあります。 

読んでいる内に記事に集中してそんなことは忘れてしまいますが、Time などとはかなりスタイルが違いますね。

> その後(またはそれと並行して)アンチバベルの塔のやり方で、語彙強化を始めようと思っています。

ここのところようやくアンチ・バベリスト志向の方が増えてきたようです。 ただ、本格的にやる場合、工程2を終了するのが最初の手ごわい( = redoubtable ) 関門になります。 しかし、これを終了すれば出来上がったカード集自体が ― お金では絶対買えないたいへん貴重な ― 宝物になるのでぜひがんばってほしいものです。

> ぼくは転記をすることの意味は、転記すべき「語彙」を自分で選別する作業自体が、既存の単語集を読むことよりも積極的に関与する作業であるためである、と思っているんですが、しかし時間と労力をかけ転記することよりも、作業工程3の暗記の作業に専念した方がいいのではと思いました。そこで思い浮かんだやり方は、辞書を中古で安く購入し、それを一ページずつ破いて、そのまま暗記カード代わりに使うというやり方です。 基地の語彙はマーカーで塗りつぶしたりしてはどうでしょう。

おっしゃることは実によくわかります。 私も同じように思っていた時期もありました。 

そして、ほぼ同じようなことを延べ2年間ぐらい実際に継続してやってみました。 その他 gini さんが語彙強化について考えておられることのおそらくすべては私が既に実行してみたものばかりだと思います。 

このブログにも書いてありますが、その間に何度も何度も何度も失敗を重ね、膨大な時間も費やしましたし、それなりの効果も確かにあって現在に至っています。 

他方、いかに無駄に見えようとも、いかにドンくさいやりかたに思えようとも、「塔」 は私の最終結論であり集大成なのです。

これから先のことを考えてみても転記したカード集は、それ自体ひとつの創作物で貴重な宝物ですが、裏面がまだまだ空白のものが多いし、表の面も余白がかなりあります。 手書きでいろいろなことを追記していく楽しさもあります。 これから進化するカード集です。

> なんだか異端を宣告されそうでなかなかコメントしづらかったのですが、自分の視野の偏狭さには気付いているので、ぜひ経験値の高い方のアドバイスをいただければと思って、コメントさせていただきました。

いえいえ、異端も何も、私はそんなことはいささかも気にしません!! 

上記のようには書きましたが、「塔」 はあくまでも私のやり方であって唯一絶対のものでは断じてありません。 他に何かもっといい方法があるかもしれません。 

私が (それなりの効果はあったにせよ) 「塔」 の成果に比較すれば失敗したやりかたでも、gini さんがやれば成功するかもしれません

そんなことはやってみなければだれにも分からないのです。 アイデアに終わらず実際に試してみてください。 そして成功したらぜひ教えてください。 他の人たちにも大いに参考になります。 それに、たとえ失敗してもいい経験になること間違いなしです。 そんな経験は今後に生きます。

gini さんは若い! 何でもやってみることです!

これからも、よろしくお願いします。

Happy learning !

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暗記法と復習 (2)

前回に、従来の暗記法の欠点のひとつとして ― 「暗記した語彙を永久に維持する実証的・具体的な方法に言及した暗記法もない。 覚える方法ばかりを強調して、覚えたものを生涯忘れない方法を実証的かつ明確に示したものがない」 ― という事実を指摘しました。

つまり、「復習」 の意義と方法を具体的かつ実証的に示した議論や提案がないということです。

何度も指摘したように、英語のネイティヴ・スピーカーの場合は、毎日膨大な量の多様な英語に接して暮らしているわけですから、復習などする必要はない。 毎日しゃべったり聞いたり書いたり読んだりすることが立派な復習になっている。 我々が日本語の語彙について特に復習する必要がないのと同じです。

ところが、外国語である英語の語彙については、とりわけ5000~1万語単位の語彙増強を企てて3万語、できれば5万語超の語彙 ( = ネイティヴ・スピーカーの標準語彙) を蓄積しそれを生涯維持したいなら、「復習」 こそ命です。

せめてネイティヴ・スピーカーの小学生並みの語彙レヴェル( 2万語超 ) には達して 『ハリーポッター』 ぐらいは何とか辞書なしで楽しめるようにしたいという人たちも多いでしょう。そんなレヴェルであっても、英語のプロや英語の読書が習慣になっている人意外は、復習が欠かせません。

そんなに大事な復習を真剣に実証的に論じる人がだれもいない。

記憶術の議論や提案ばかりで、記憶を永久的に維持管理する方法論が何もない!?

しかし、復習を語彙暗記の最終段階と捉えて具体的な方法を確立しなければ、いつまでたっても 「・・・だと言われている」 だとか 「・・・したら忘れないだろう」 とかいう程度ののんきで何の証拠も実証性もないアイデア遊びに終始してしまってラチがあかない。

なるほど1ヶ月程度の記憶保持なら「エビングハウスの保持曲線( 無意味綴りの記憶保持について、20分後には42%を忘却し、1時間後には56%を忘却し、1日後には74%を忘却し、1週間後(7日間後)には77%を忘却し、1ヶ月後(30日間後)には79%を忘却し、覚えていたのは21% )」なども多少の参考にはなるかもしれない。

しかし数万語の英語の語彙を非ネイティヴ・スピーカーが日本で生活しながら何十年も保持する方法に関する具体的かつ実証的な方法提示は「アンチ・バベルの塔」を除いて皆無です(完全な方法というには程遠いが他に実証済みで具体的な方法がないのは事実 )。

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「アンチ・バベルの塔」 の 作業工程

1 目標とする学習辞典の選定
2 未知語彙の選択と転記
3 暗記と復習
4 半永久的復習

2を実行しながら3を同時に進行させてもいいが、それは非常な負担になるので、3の本格作業は2が完了してからのほうがいい ( ただし、人による )。

3の暗記と復習はもちろん同時進行になる。

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今の議論に関係しているのは上記工程の3と4です。 


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暗記法と復習 (1)

従来の暗記法の利点と欠点

世に喧伝されている いろいろな 「暗記法」 にはそれぞれに利点があります。

その利点は大いに活用すべきだしそうしている人も多い。

英語の語彙に関しても 「語呂合わせ」 とか 「イメージ法」 とか 「語源利用」 などがあってそれらに関する教則本もふんだんにあります。

ただし、どれをとっても万能な暗記法ではない。 

たとえば 「語源利用」 はずいぶん強力な方法のように言われ続けているが万能にはほど遠い。 一定の利用価値は確かにある。 しかし、実際に語彙暗記に取り組めばわかることだが、その筋で言われているほどの効果はない。

森鷗外も大いに語源を利用したぞと言う人がいる。 しかし、鴎外も、利用できる場合 (1例として、医学用語の記憶に語源は実に強力な武器) に利用しただけである。 鴎外が外国語にも堪能であったのは、抜群の頭の良さと人並みはずれた驚くべき勤勉の賜物である。 

語源以外の暗記法も場合によってはたいへん重宝する。 たとえば rook という単語の場合、私は3つの意味を覚えている。 ひとつは 「ミヤマガラス」、ふたつは 「城塔形の駒 (チェス)」、そして3つは 「金をだまし取る」 という意味である。 私はこの3つを 「カラスがチェスをして金をだましとる」 というイメージにのせて記憶している。 

要は、臨機応変に様々な暗記法を駆使するのが賢明なやりかただし、懸命に暗記に励んでいれば自然にそうなってくる。

さて、次に欠点です。

その1 3万語あるいは最終的には5万語超の語彙を暗記する方法自体が ― 実証的・具体的なものとしては ―  「塔」 以外に存在しない。 そもそも5万語を習得することなど不可能だと考えられてきた。 ( 塔が完全だなどと決して思っていませんよ! 欠点だらけでしょう。 もっといい実証済みの方法があれば、ぜひ、教えてください!)

その2 暗記した語彙を永久に維持する実証的・具体的な方法に言及した暗記法もない。 覚える方法ばかりを強調して、覚えたものを生涯忘れない方法を実証的かつ明確に示したものがない

この2つが、従来の語彙暗記法の欠点です。

1 については何度も述べたことがあるので、今回は 2 に的をしぼります。

暗記法と暗記の持続に関連して、中田達也さんは、NHKの 『新3ヶ月トピック英会話 英単語ネットワーク~めざせ10000語~ 8月号』 に、「8月のテーマ・単語カードの効果的な活用法」と題された記事を書いて ― ・・・近年の研究では、単語カードによる暗記は非常に効果的かつ効率的であることが示されています。研究によれば、多読のみによって100語を学ぶには、10万~20万語ものテキストを読む必要があるといいます。また、多読のみで2000語を学ぶには、約29年かかるという推計もあります。多読による英単語の学習は、残念ながらそれほど効率的ではないようです・・・ 「暗記による学習は短期的には効果が見られても、長期的な保持には結びつかない」 と批判されることがありますが、正しい方法で行えば、暗記の効果は数年間持続することも示されています (省略 k.y.) ― と述べています。 

私は、「暗記の効果は数年間持続する」 という部分が気になります。 数年間だけではあまり意味がないからです。 

一旦覚えた英語の語彙は生涯何十年でも忘れないようにしないと意味がない。 そうしなければ、膨大な手間隙をかけて達成したことが生かされない。

「アンチ・バベルの塔」 は (自分なりにあらゆる暗記法を動因して) 覚えた必要十分な英語の語彙を、復習を繰返すことによって永久に忘れないようにする方法です。

その方法を実践して 「強固な塔」 を維持・管理する人がアンチ・バベリストです。

ところで、世の暗記法はなぜ 「復習」 にあまり言及しないのでしょうか? あるいは、言及しても、具体性を欠くのはなぜでしょうか?

それは、復習を半永久的に実行している人などいないからです。 あるいは、半永久的に復習しないと忘れてしまうほどの質・量の語彙を覚えた人がほとんどだれもいないからです。 

たいていは、忘れても数ヶ月からせいぜい1年もかけて覚えなおせば取り戻せる程度のまことに不十分な語彙しか覚えたことがない人がほとんどだからです。 

もうひとつの理由は、復習はそんなに時間がかかるものではないという事実をだれも認識していないことです。

私の経験上、完璧に覚えた語彙なら、1時間もあれば2000語の復習が可能です。 これは最初覚えるときに要する時間のおよそ100分の1です。 市販の単語カードのような単純極まりないものを覚える場合と同等視しないで下さい。 多義語もあれば多様なチャンク表現もある。 それでも、復習は、最初覚えるときの100倍の速度で実行できる。 人により場合によって50倍~200倍というべきかもしれませんが、100倍といっておきます。

この時間数は ― 「塔主の進化」 によってさらにもっと縮小する可能性があります。

私の塔に積まれた語彙数は2万語。 1日2000語復習すれば10日で2万語。 毎日、30分であれば、20日で2万語。 10日や20日で忘れてしまうことはもはやありませんし、毎日30分や1時間の復習時間の確保も困難だと言える人もあまりいないと思います。 

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英語の語彙:雑談(48)

過去形でしか使われない動詞

quoth [ クウォウス]

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vt. 《古》 [一人称および三人称の直説法過去形] 言った (said). ★この語は quoth I [he, she] (まれに quoth we [they]) として常に主語の前に置き, 引用語句の前後またはその間にはさんで用いる.

・quoth the raven, “Nevermore” 大がらすのいわく「永遠(とわ)になし」と (Poe, The Raven).

( 研究社 『新英和大辞典より』 )

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