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「やっぱり単語力だ」

AREA English 2008年1月号』 の特集は、「やっぱり単語力だ」 です。

「単語力」 を 「語彙力」 と訂正したほうがより適切な表現になります。 それで、「やっぱり語彙力だ」 とするなら、ずばりその通りです。 

念のため、語彙とは、単に単語だけではなく、超基本語(無視されがち!)・熟語・スラングその他のチャンク表現などすべてを含むものであって、そのいずれも等しく重要で、どれを欠いても英語の理解や運用に大きな支障をきたします。 

だから、単語の数だけに注目しがちな風潮にはくれぐれも注意したいものです。

さて、人の英語力は ― 文法・構文・音声に問題ない限り ― 語彙力であることはもう何度も述べてきたとおりですし、それに対する論理的に有効な反論はまったくありません。 あるはずもないと ― 独断と偏見に任せて ― 塔主は確信しています。 

『AREA English 2008年1月号』 は 「英語界で活躍するあの著名な先生たち」 にアンケート調査を行っています。

そのアンケートに 「単語力をつけることは、英語力アップに欠かせないと思いますか」 という項目があって、各先生の回答は次のようになっています。

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杉田敏先生: 「絶対に欠かせない」 として 「中学校で習った英語だけで英語は話せるなどという本に惑わされてはだめ」、「いつも目線を上に」 と述べておられます。

まだまだ 「中学英語で充分」 とか 「やさしいものをたくさん」 というような神話を信じている人が多い。 とんでもない誤解です。 そんなことでは、生涯、ネイティヴ・スピーカーの幼児の英語力にさえ届きません。 

遠山顕先生: 「はい

竹丘広信先生: 「英語力=単語力と言ってもいい」

西蔭浩子先生: 「はい」 ただし、(当然のことですが) コンテキストが重要だと述べておられます

中村澄子先生: 各自に必要な分野の英文を多読して頻出する語彙をメモし音読し書いて繰り返して覚えることを薦め 「多読でもある程度覚えられる」 と述べておられます。 

しかし、この 「ある程度」 というのは 「塔レヴェル=充分な語彙レヴェル」 にはほど遠い水準であることを忘れないようにしましょう。

木村達哉先生: 「単語オタク」になる必要はないけれど、英語の4技能において、語彙力がないと不利だし、伸びは悪い」 として 「基本的な語彙を身につけたら、できるだけ多くの文章にあたること」 と述べておられます。 

このアドヴァイスは、木村先生は灘高校の英語科教師だということからしても、大学や資格試験の受験生向けのアドヴァイスでしょう。

そして、「単語オタク」 という言葉には重々注意しなければなりません。 大学や資格試験の受験生がイメージする 「単語オタク」 の語彙レヴェルは ― 「オタク」 と言えども ― 極めて低いレヴェルです。 

「上級学習英英辞典」 までのレヴェルは 「オタク」 と言えるほどのレヴェルでは決してなく、ネイティヴ・スピーカーなら普通のレヴェルです。 つまり、私たちの日本語の語彙レヴェルと同じです。 英語を普通に理解するのに必要な語彙レヴェルに過ぎないのです。

このことは ― 「上級学習英英辞典」 の語彙水準に実際に達することができるかどうかは別にして ― しっかり認識しておくべきでしょう。 

その上で、 「いつも目線を上に」 して、 「アンチ・バベルの塔」 あるいはそれに匹敵する有効な手法で語彙強化に励むことが真に有効な英語学習だと思います。 

( 以上、各先生の発言の太字処理は k.y. )

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ちなみに、上記のアンケートには 「最近知った新しい単語をひとつ挙げてください」 という項目もあって、それに対して各先生が挙げられた単語 ( handmaiden  stent  cliffhanging  bricabrac  a hole in the wall ) はすべて 「私の塔」 に含まれる語彙群です。
 

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Comments

いつも、ブログを楽しく拝読させて頂いております。最近では、塔主殿の塔が完成してしまったせいか、ブログ更新の頻度が下がり、残念に感じております。

さて、小生も塔主殿とは比較にもならないにせよ、外国語への挑戦に人生をかけて(?)いる者の一人です。但し、大学を卒業してからは、普通のサラリーマンとなり、普通に結婚し、普通に子供が出来、普通にローンでマンションを購入したりした為、外国語三昧であった学生時代と比べると、この20年間は語学習得に割ける時間が圧倒的に減ってしまいました。ただ一つ普通と少し違うかもしれないことと言えば、今年の4月より海外転勤 (単身) となり、日常使う仕事言語として英語とフランス語、生活言語としてアラビア語 (場合によってはペルシャ語)、そして自国語の日本語と、常に4~5ヶ国語に接した毎日を送っていることです。これらの言語の中で、一番学習時間が長く語彙も多いのは英語 (塔主殿は批判的ですが、敢えて単語数で表せば1万~2万の間でしょう)、それに次ぐのが学生時代の専門であったフランス語 (8千~1万語ぐらい、仏検1級のテキストで若干未知の単語がある程度)、学習者としての付き合いが一番長い言語は何故かアラビア語ですが、これがまたとてつもなく難しい言語 (特に文法が) で、単語数はフランス語の6掛けぐらいです。

塔主殿のご意見通り、この程度の語彙では、英語でも例えばいざTIMEや小説を精読するとなると辞書が手放せなくなりますし、字幕無しの映画では観ていて非常に疲れる上、聞き取れない部分もあります。但し、仕事の英語では (フランス語もしかり)、専門用語が大体決まっているので、レポートでも契約書でも最近では辞書の頼りにならずに殆ど判ります。書く時は、正確さを期すので敢えて語法の確認の意味で辞書を多用していますが、それは日本語でも同じことです。フランス語やアラビア語だと、辞書さえあれば、新聞などは余程専門的な分野でない限り理解できます。一方、アラビア語による宗教関係の記事は辞書首っ引きでもチンプンカンプンのケースがあります (但し、これは語彙の問題ではなく、イスラム教に対する知識の問題でしょうが)。

前置きが長くなり過ぎました。先ず、小生は塔主殿のように、特定の言語で「塔」を打ち立てる努力については、何ら否定する立場ではありませんし、そのような偉業に対しては、むしろ尊敬の念すら抱いております。外国語の語学力=語彙力であることにも全く異存ありません。現に、小生も断続的ではありますが、アラビア語の辞書暗記を10年に亘って続けております。但し、悲しい哉、やはり断続的であること、それに対象としている辞書が1万語レベルの小辞典である為、上述の語彙に留まっている訳です。

ここからが質問です。仮に5万~10万語の「塔」が完成したとして、淀みなく、辞書の頼りにもならずにその言葉で言語生活が送れるのでしょうか?例えば、自分の場合の日本語での言語生活を顧みるに、晦渋な文章を精読しなければならない場合、昭和初期以前の小説を読む場合、古典文学を参照した現代エッセイを読む場合など、今でも日本語の電子辞書を手許に置いてじっくり読んでいます。即ち、日本語ですら場合によって辞書は手放せないのに、レアリアに欠け政治、宗教、大衆文化、マスメディアといった特定言語で営まれる社会現象に疎い外国語の語彙を5万~10万暗記したところで、やはり辞書・事典が手放せない事実には変わりはありません。それならば、5万~10万語を暗記する莫大な努力は放棄して、1万~2万語の習得語彙と、残りは辞書の助けでもって善しとしようという考え方もある訳で、そのほうが忙しい現代人には現実的に思えてなりません。この点において、「塔」の完成は語彙の壁の克服と、ネイティブレベルの言語生活の実現を必ずしも意味しません。

それに、ネイティブレベルの語彙力を得る莫大な努力と、それを維持する為の莫大な時間 (覚えた後の残り人生全て) を考えると、個人の好みと判断で辞書の丸暗記を実践するには何ら構いませんが、人に勧めるには余りにも過酷な修行である (しかも失敗する確度が極めて高いことについては塔主殿も異論がないでしょう) と思うのですが、この点如何お考えでしょうか?

小生も残りの人生をかけてこれまで学んできた言語 (上記以外にも仕事の駐在と趣味の語学学習を通じて、日常生活を送る程度であれば余り会話に不自由しない言語が3つ程あります。読む方はカラキシ駄目ですが) の語学力を上げる努力を続けるつもりです。それでも数万語の辞書を丸暗記しようとする試みは考えていません。それは余りにも長く、険しく、そして退屈な道程です。そして辿り着いた時、やはり未だ先がある (語彙の壁から解放された言語生活を送れない) のでは、費やした時間が余りにもモッタイナイと思うのです。それよりも、1~2万語程度の選別された語彙とあとは辞書という生涯の友人を伴って言語生活を送ることの方が楽しく、有意義だとさえ思っています。

Posted by: JT | December 01, 2007 at 03:49 AM

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Tracked on December 26, 2007 at 12:28 PM

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