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それぞれの人の「アンチ・バベルの塔」(5)

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私は「塔」に関して次のように考えている。

(1) そもそも「塔」など不要な人も多い。

(2) 人によって、「塔」に搭載される英語の語彙の質・量は異なる。

(3) しかし、(1)や(2)の立場は固定されたものではなく、将来変化する可能性を有したものである。

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(2) について(その1)

人によって、「塔」に搭載される英語の語彙の質・量は異なる

これには2つの意味がある。

1 最終目標となる英語の語彙レヴェルは各人各様である

各人(成人)の日本語の語彙の質・量は大いに異なる。 日本語の語彙数が2万前後の人もいれば7万前後の人もいる。 各人の語彙の質も実に多様である。

そして各人の英語の語彙の質・量は各人の日本語の語彙の質・量を超えることはない。 各人の日本語の語彙レヴェルが各人の英語の語彙レヴェルの最高到達点になる。 このことからして 「これこれの質・量の英語の語彙を習得すべきである」 という主張はとかく批判を受ける。 

しかし、どんな話をする場合でも同じであるが、何か標準的な基準を設けないと都合が悪い。 私が英語の語彙の一般的な到達目標として 「中級(英英)学習辞典」の語彙レヴェル(数にして5万語前後)」 を掲げるのはそのためである。 それぐらいが日・英の標準的な語彙レヴェルなのだ。 

他方、実際の語彙習得に際して、そんな標準的な語彙レヴェルをめぐって各人が議論しても意味はない。 各人は各人なりの到達レヴェルを設定すれば良いわけでそんなことを議論しても意味はない。 極論すれば目標設定さえ不要だ。 各人の英語の語彙レヴェルが各人の日本語の語彙レヴェルに近づくほど不満は小さくなる。 他人の目標など気にせずに各人が勝手にやるのが1番だ。 そうすれば自ずと各人なりのしかるべきレヴェルに達する。 語彙数の議論などする時間があったら1語でも覚えたらいい

かくして、「塔」に搭載される最終的な英語の語彙の質・量は人によって異なる

2 最終の目標ではなく目下の目標となる英語の語彙レヴェルも各人各様である

目下の英語の語彙レヴェルが英検3級の人もいれば2級の人も準1級の人も1級の人もいるだろう。 各人は目下の語彙レヴェルに応じて 「建設可能なレヴェルの塔」 を構築する必要がある。 いきなり 「本格的な塔=最終目標レヴェルに達する塔」 を構築しようとしても必ず失敗する。 たとえば目下5000語の語彙レヴェルの人がいきなり5万語の語彙レヴェルに達する塔を建設しようとしてもそれこそ 「ドバイの超高層ビル」 よろしく破綻してしまう。 私もいきなり 「本格的な塔」 を建て始めたわけではない。 段階的に、試行錯誤を頻繁に繰り返しながら、よじ登ってきた。 無難なやりかたとして、たとえば、 「市販の単語帳」 「初級辞書」 「ニュヴィクトリーアンカー英和辞典」 「Longman Dictionary of American English」 という具合に徐々にレヴェルアップしていくべきだ。 あわてることはない ― 数年~10年~15年~20年かけてやればよい。 酒井邦秀流多読(語彙強化の手段としては不適)も併用して既知語彙の躍動を実感することも大切である ― この多読に適した本は既知語彙が98%以上の本である。 

かくして、 「目下の塔」 に搭載される英語の語彙の質・量も人によって異なる

1や2を無視した議論は混乱・誤解の極みに達して収拾がつかなくなる。 肝心なことは、あくまでも自分の現状を見据えて進むことである。 なお、「塔」 を凌駕する語彙強化法は ― 実証を欠くただのアイデアや議論は捨てるほどあるが ― 未だ皆無である。

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Comments

k.y.さん
お久しぶりです。英語同好会BBSでお世話になりましたTadです。お元気でしょうか。
最近k.y.さんがBBSの方に投稿されなくなり、解釈の食い違いになるとどれが正しいかを教えてくれるようなご意見番がいなくなり議論が紛糾して困ります。
実は今も議論の真っ盛りです。できれば教えてください。
問題の記事はEconomistからの"Where the terror trail so often leads"です。Economistの記事のURLはURLの欄に記載しました。
この最後から5番目のパラグラフに次のようなことが書いてあります。
But there are two huge obstacles to India’s mounting a robust response. First, to the extent that the attackers can be said to have anything that can be dignified with the name of a strategy, it must be to provoke just the sort of confrontation that followed the 2001 raid on parliament. Pakistan has already said it would move troops to its frontier with India if need be. That would ease pressure on the Taliban and their allies on the other border.

質問は
1. it must be to provokeのitは何を指すのか。
2. to provocateは不定詞の名詞用法か、be toの助動詞の後ろにprovokeが続いたものか。
2. to the extent thatのところはどういう風に訳すのか。
です。
私は
1. extent thatの同格のthatが導く節の内容
2.be to(助動詞)
3.もしテロリストたちが戦略という名前で権威付けできるあらゆるもの(単に「戦略と名のつくものならなんでも」の方がわかりいいかもしれません)持っているのなら、
だと思っています。
k.y.さんにとって低レベルな論議で答えるのも馬鹿馬鹿しいかもしれませんが、ご教授いただければ幸いです。

Posted by: Tad | December 27, 2008 at 07:40 PM

Tad さんへ。

ごぶさたしています。私は懲りもせず元気に英語職人を続けています。

本題にはいります。

> 1. it must be to provokeのitは何を指すのか。

it = one of the two huge obstacles to India's mounting a robust response

> 2. to provocateは不定詞の名詞用法か、be toの助動詞の後ろにprovokeが続いたものか。

不定詞の名詞用法でしょう。it = to provoke・・・です。ご存知のように「be+to 不定詞」は「助動詞+動詞の原型」と同じ意味を持つ。すなわち、 be to は、be going to = 予定、must = 義務、 can = 可能、will = 意図 などを意味するわけですから、本件の it must be to・・・の be to が助動詞だとすると must の後にもうひとつ助動詞が続くというありえない形になってしまいます。 

> 3. to the extent thatのところはどういう風に訳すのか。

can have anything that can be dignified with the name of a strategy は ― with は「手段」の with で ― 「作戦の名目によってもっともらしくされ得るあらゆることを持つことができる」という意味になる。だから、to the extent that the attackers can be said to have anything that can be dignified with the name of a strategy は「テロリスト集団は作戦上あらゆる口実を持つことができるとされている限り」というような意味になると思います。

But there are two huge obstacles.

First, it must be to provoke just the sort of confrontation that followed the 2001 raid on parliament. ・・・ 

Second, there is the problem Mr Zardari alluded to.

という単純な構図。

以上、少しでも参考になれば幸いです。

追記: 私は、自然言語の解釈に関しては、事実上唯一絶対のものはないと観念しています。 IQや日本語・外国語の言語能力その他の違いによって同じ文章を読んでも各人各様の解釈になることこそ現実の姿で、それをどこまでも否定したり互いに互いの見解についてある程度以上議論しても平行線に終わることが少なくないという諦念を持っています。 color blind の人とそうではない人が(互いにそのことに気づかずに)色について議論するようなもので、そこには自ずと限界があると考えています。 そして、私は私なりに、生涯研鑽を積みたいと念じています。 そうすれば blind の部分も徐々に解消されていくのだと信じています。 これからもよろしくお願いします。

Thank you.

Posted by: k.y. | December 28, 2008 at 06:14 PM

k.y.さん
貴重な意見大変ありがとうございます。k.y.さんの解説は私の最初の解釈と全く同じです。
しかし自分の解釈を見直しているうちに色々おかしいなと思えるところが出てきたのです。それらは
1.最初にthere are two huge obstaclesと現在形で言い切っておきながら、いざそれをあげていくとmust beという強いとはいえ推測の形になっていることです。
何故普通にFist, it isと現在形にしなかったのでしょうか。
2.itがobstacleのひとつとするとその中身は一応形の上ではto provoke...on parliament.となると思いました。しかしこれではobstacleにはならず、本当のobstacleはto provokeが招く結果、つまり That would ease pressureなのではないか。だからit = to provokeではないのでは、と思いました。
そこでbe to provokeで「することになる」というようにつなげられれば上記疑問が全て解消できると思ったわけです。
こう考えた時の問題はk.y.さんが仰ったように「助動詞+助動詞はあり得るのか?」でした。
しかしAll IN ONEという英文法書にはこのように出ています。
「be toという表現も前項のhave toと同じ助動詞の働きをします。」
have toは、you may have toと助動詞+助動詞が許されるのでbe toもありでは?と思ったしだいです。
この点は如何でしょうか。
確かに違う意見を受け入れるということはとても難しいことです。
しかし幼い学童が先生のゆうことを100パーセント信じられるように、力の差があると自分で認められれば相手の言うことは受け入れられるのではないでしょうか。
なのでk.y.さんに相談してみました。
年末のお忙しい時に申し訳ございません。今後も宜しくお願いします。

Posted by: Tad | December 28, 2008 at 07:41 PM

Tad さんへ。

> k.y.さんの解説は私の最初の解釈と全く同じです。

よかったです!

> 1.最初にthere are two huge obstaclesと現在形で言い切っておきながら、いざそれをあげていくとmust beという強いとはいえ推測の形になっていることです。
何故普通にFist, it isと現在形にしなかったのでしょうか。

なるほど。 しかし、これは日本語でも同じでしょう。 たとえば、「2つ障害がある。そのひとつはAに違いないし、もうひとつはBである」といっても別に不自然ではない。

あるいは、there are two huge obstacles は普遍の真理を述べているのではなくて著者の見解だから I think that there are two huge obstacles ということでしょう。同様に First, I think, it must be・・・ということで特に不自然には感じません。ただ、こんな文脈でいちいち I think というのはいかにも不細工です。

> 2.itがobstacleのひとつとするとその中身は一応形の上ではto provoke...on parliament.となると思いました。しかしこれではobstacleにはならず、本当のobstacleはto provokeが招く結果、つまり That would ease pressureなのではないか。だからit = to provokeではないのでは、と思いました。

私にはこのことについてもまったく違和感はありません。 「インドに断固たる対応をとれなくさせていること=インドが断固たる対応を取る障害になっていること」=「the 2001 raid on parliament 後に(インドが強固な対応を取った結果)起こった対決とまさに同種の対決を引き起こしてしまうこと」という理解で何の無理もないと考えます。

2001年のインドの議会襲撃も、インドがその後に強固な対応を取らなかったらパキスタンとの全面対決には至らずひいてはタリバンやその同調者を利する結果にもならなかっただろうということです。

> そこでbe to provokeで「することになる」というようにつなげられれば上記疑問が全て解消できると思ったわけです。
こう考えた時の問題はk.y.さんが仰ったように「助動詞+助動詞はあり得るのか?」でした。しかしAll IN ONEという英文法書にはこのように出ています。「be toという表現も前項のhave toと同じ助動詞の働きをします。」have toは、you may have toと助動詞+助動詞が許されるのでbe toもありでは?と思ったしだいです。この点は如何でしょうか。

確かに you may have to というような表現は当然あります。私がありえないとしたのは may can とか must will とかの形で be to が原型で使われる形は念頭になかったのです。 そして、be to は ― 原型で使われることは皆無で ― 現在形か過去形しかありません。 be to の意味が be going to である場合でも might be going to の be going to のようには原型で使われることはありません。

今議論になっている文章を理解する最も強力な手がかりは、前回も言及したことですが、単純で典型的な構文を素直に把握して全体の意味を理解することです。 

その単純で典型的な構文について、たとえば 『ジーニアス英和辞典(第 4版)』の first(副詞)の項目に ― (引用開始)③ [通例文頭で;通例コンマを伴って] 第1には || I have two objections: first, she is too old, and, second, she is sick. 私には反対する理由が2つある。第1に彼女が年をとりすぎていること、第2は病身であることだ (引用終始) ― という説明があります。

『ロングマン現代英英辞典(5訂版)』にも first (adverb ) 4 in the first place の項目に ― (引用開始) b ) written used to give the first in a list of reasons or points :
Her success was secured by two factors. In the first place, she had the support of managers. (引用終止」) さらに同辞典の first の THESAURUS の項目には ―(引用開始)(引用終止)first/firstly used when mentioning the first in a list of reasons, arguments, or questions to consider : I want you to consider these three points in your essay: first, what is the writer’s attitude to the war in this poem ... | There are several reasons for this conclusion. Firstly・・・(引用終止)という記述があります。

> 確かに違う意見を受け入れるということはとても難しいことです。しかし幼い学童が先生のゆうことを100パーセント信じられるように、力の差があると自分で認められれば相手の言うことは受け入れられるのではないでしょうか。

おっしゃるとおりだと思います。しかし、互いにあるいはどちらかの人が、そんな力の差や感性の違いを意識できなかったらどうでしょう。泥試合になると思いませんか。たとえば、Tad さんにはまったく当てはまらないことですが、英語という言語自体やTIME誌などを崇めて日本語を劣等視するような感性の人は私はどうも苦手で議論してもむだだと思ってしまいます。そんな人は得てして議論も支離滅裂で何をいっているのか分からなくなることが多いからです。そんなふうにはなりたくないものだと願ってはいますがうぬぼれに過ぎないかもしれません。

Thank you.

Posted by: k.y. | December 29, 2008 at 12:37 AM

k.y.さんへ
丁寧なご解説ありがとうございました。
Must + be toがありえないのであれば、itが「テロリスト集団は作戦上あらゆる口実を持つことができる」という状態を指し、それが対立を引き起こすという私の解釈は成り立たないですね。了解しました。
Must beという言い方をしていなければ、it = obstacleという解釈を考え直すこともなかったのですが、ちょっと考えすぎました。言葉は難しいですね。

ちなみに2001年の議会テロの時は、確かに一触即発状態までいったがアメリカのパキスタンへの圧力で衝突は回避できたと理解しておりますが、この解釈間違いないでしょうか。

議論は大いによいと思うのですが、相手をやり込めるためだけの議論は単なる時間の無駄だと思います。私もk.y.さんのようにそういう相手に賢く振舞えればよいのですが。

ところでこれからも英語でわからないことがあれば今回のようにブログを通してお聞きしても宜しいでしょうか。もし不都合であれば遠慮なさらずにそう仰ってください。
またもしよいということであればどのように質問すれば宜しいでしょうか。ブログの最初の投稿の仕方が今一つよくわかりません。
教えて頂ければ幸いです。

Posted by: Tad | December 29, 2008 at 06:46 PM

Tad さんへ

> ちなみに2001年の議会テロの時は、確かに一触即発状態までいったがアメリカのパキスタンへの圧力で衝突は回避できたと理解しておりますが、この解釈間違いないでしょうか。

私も、確信はありませんが、そうだったように思います。

> ところでこれからも英語でわからないことがあれば今回のようにブログを通してお聞きしても宜しいでしょうか。もし不都合であれば遠慮なさらずにそう仰ってください。

このブログは「語彙強化」を主テーマにしたものなので「英文解釈」の議論とはあまりかみ合わないと思います。

それで、私も時々BBSを読ませていただいて関心が湧けばこのブログで「BBSの英文解釈(1・・・)」のタイトルでとりあげ私なりの解釈を書いてみたいと思います。

それに対してもし Tad さんが興味をもたれたらコメントなどいただければうれしいです。

その際は、どんな英文についても各人各様の解釈があることを前提に、なごやかな意見交換にしたいと願っています。

たまにでも「塔」を訪ねてください。

まことに勝手で恐縮なのですが、その旨了解くだされたくよろしくお願いします。

Tad さん御一家にとって来年もすばらしい年でありますように。

Thank you.

Posted by: k.y. | December 29, 2008 at 11:58 PM

了解いたしました。
来年もk.y.さんにとって充実した年でありますよう。
よいお年をお迎えください。

Tad

Posted by: Tad | December 30, 2008 at 12:30 AM

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