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それぞれの人の「アンチ・バベルの塔」(4)

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私は「塔」に関して次のように考えている。

(1) そもそも「塔」など不要な人も多い。

(2) 人によって、「塔」に搭載される英語の語彙の質・量は異なる。

(3) しかし、(1)や(2)の立場は固定されたものではなく、将来変化する可能性を有したものである。

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(1) について(その4)

「塔など不要だ」 だと思っている人のなかには 「多読」 で十分な語彙が身につくと考えている人も多い。 私は、「日本人が普通の多読だけで獲得できる語彙は5000語前後」だと考えている。 よほど多数のそして多方面の本を読む人なら1万5000語前後まで増やせるかもしれない。 しかし、それ以上はほとんど想像できないし、そんなことをした人も知らない。

多読だけでどの程度の本まで読めるようになるのか?

酒井邦秀著 『さよなら英文法!多読が育てる英語力(ちくま学芸文庫)』 によると、帰国子女でもない日本の普通の 「中学1年生がスティーブン・キングを読んだ!」 らしい。 あるいは、高校2年生が 『ハリー・ポッター』 の第3作を5日間で読み終わって 「3割しか分からなかったけどおもしろかった」 という感想を漏らした由。

まともに文法も語彙も知らない中・高生がこんな体験ができるのはすばらしいことだ。 

しかし、「塔主」 は、そんな読み方は、3割や5割分かる程度にすぎない読み方は、「読む」 という行為ではないと思っている

その3割でさえ本人の申告に過ぎない。 ほんとうにたとえ3割だけでも理解できているのかどうか極めて疑わしい。 私ならそんな状態を 「読んだ」 とはとても言えない。

3割でも本人が楽しんでやっているのであれば自然な英語にも慣れるし多少の語彙も増えるしたいへん結構なことである。 おおいに奨励してもよいことだ。

ただ、 文法や構文学習・語彙暗記を有害視してそんな 「読書もどき」 だけを奨励するのであればいただけない。

酒井先生の 「多読原理主義」 の最大の弱点は 「いったいどれだけほんとうに読めているのか?」 という客観的なチェックがまったくないことである。 ないどころかそんなチェックをすること自体を害悪視する。 24時間日本語の生活・教育環境の中にいながら酒井流多読だけでネイティヴ・スピーカーと同じ読書力が身につくと主張されるのはあまりにもユートピア的だと感じる。 

重ねて申し上げるが 「塔主」 は 「語彙原理主義」 ではない。 「十全な読書=日本語でするようなレヴェルの読書をするための語彙強化」 の至上手段が 「塔」 だと考えている。

おびただしくある不明点をすべてすっ飛ばして予測読みする」 だけなら 「塔」 など無用の長物だ。 膨大な時間を費やして 「塔」 など建てる必然性はまったくない。 そのかわりいつまでたっても 「十全な読書」 は望むべくもない。 生涯 「読書もどき」 で終わることになる ― 他方、本人がそれで満足なら他の人があれこれいう筋合いのものでもない。 

「文法・構文原理主義」でも「語彙原理主義」でも「多読原理主義」でもその他「~原理主義」でも英語は十全に読めるようにはならない。 文法・構文+語彙+多読+その他を相携えてはじめて日本語並みの英語読みが可能になる。 

「多読原理主義」では酒井先生が楽しんでおられるような高レヴェルの英語の読書はいつまでたっても成就しない。 酒井先生自身40歳を過ぎるまで文法・構文+語彙+多読+その他を懸命に勉強されていた。 そんな勉強は有害でさえあったと言わんばかりの主張はどうしても納得しかねる。 そんな勉強があったからこそ今日の酒井先生があるのだと思う。 

「多読原理主義」 を貫徹して酒井先生レヴェルの英語力を獲得した人はいない!

追記: 私はおこがましくも批判めいたことばかり書いていますが酒井邦秀著 『さよなら英文法!多読が育てる英語力(ちくま学芸文庫)』 は1読に値する本です。 特に文法などが嫌いで英語の読書にあまり縁がなかった人たちには福音=Goodnews でしょう。

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