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コメントにお答えする(1/2010)

HSE さん、はじめまして。

日々春めいて、庭には数種の梅が色合いも様々に咲きそろい、ウグイスの声も聞こえてくるようになりました。

かくして4季はめぐりますが、塔主にとってはいつも変わらぬ、楽しいルーティンがあります。それは、いうまでもなく、「搭載語彙の永久復習(ほぼ毎日、30分~1時間)」です。

HSE さんは、「塔」をきっかけにして辞書を読みはじめ、その体験にもとづく貴重なコメントを寄せてくださいました。

私のブログをちゃんと読んで、何かを感じていただけることは、ほんとうにありがたいことです。

HSE さんのコメントに、「塔主」の感想を、類似のことに関して今までに何度も書いてきましたので繰り返しになりますが、縷々述べさせてください。

あくまで、「塔主」の体験に基づいた私見に過ぎませんからその旨ご了解ください

>自分の好きな本や映画に出てくる単語を覚えることと比較すると、やはり無味乾燥な感が否めません。

「塔」の目標は、英語の本や映画の未知語彙の出現頻度を、日本語の本や映画の未知語彙の出現頻度にまで低下させること、つまり、英語のネイティヴ・スピーカーの語彙レヴェルまで、自分の英語の語彙レヴェルを高めることです。

したがって、「塔」を完成させた者にとって、本その他は、もはや語彙学習のツールではなく、情報収集や学問や娯楽に資するものです。

もちろん、日本語の場合とまったく同じで、情報収集や学問や娯楽を通じて新たな語彙や概念を習得したり、お気に入りの文句を音読しながら暗記したり、することはあります。国語や漢字の辞書を利用することも別に珍しいことではありません。しかし、本その他が、HSE さんがおっしゃるような語彙学習のツールになることはありません。

また、英語の原文と正確で流暢な和訳の両方を精読することはあります。ちゃんとした英語をちゃんとした日本語に翻訳したらどうなるのか、一流のプロの仕事を真似し学ぶためです。

逆に、日本語の原文と正確で流暢な英訳の両方を精読することもあります―たとえば、村上春樹の小説とその Jay Rubin 氏による英訳を精読します。実に楽しく有意義な作業です。

これは、時間はかかりますが、英・日公認の訳語を覚えるためでもあります。

しかし、本その他を、HSE さんがおっしゃるような語彙学習のツールにすることは、今は、もうありません。

HSE さんが考えておられるあるいは実行しておられる語彙習得法は、おそらく全て、(「塔方式」を発明する前に)私も長年実行してきたものです。かなりの効果もありました。

しかし、それを続けていてもネイティヴ・スピーカーと同じ認識語彙レヴェルに達する可能性はほとんどゼロに思えました。キリがないと感じていたわけです。

実際キリがありません。ここまで覚えればよいという明確な基準(=ネイティヴ・スピーカーのレヴェル)もその基準レヴェルを達成するに要する時間数も分らないままに生涯同じような作業を続け、日本語とは程遠い英語の語彙力で一生を終えることになります。そういう意味では、極めて効率が悪い、というより、いつまでたっても学習者レヴェルを超えることがないやり方ということになります。

ちなみに、「塔」は非常に地道な努力を要するプロセスですが、無味乾燥でも何でもありません。真剣にやればやるほど病みつきになるほど面白いものでもあります。

そうでなければ、(カードは全部で3580枚で100枚毎にリングでまとめて1セット(塔の1階)とし、塔の高さは35.8階(高さ約67センチ)です。搭載語彙数は約2万語で 『Random House Webster Intermediate English Dictionary (522ページ)』『Cambridge Advanced Learner's Dictionary (1571ページ)』から選択した語彙です) というような作業は続けることは不可能だったでしょう。

>「文脈」というサポートがない分覚えにくいのです。

正直に言いますと、(「文脈」というサポートがない分覚えにくい)というのは、ひとつの強固な信仰のようなものだと考えています。

学習英英辞典には例文がたっぷりあります。語義の記述も概ね丁寧です。

たとえば、brazen sth out という表現の場合、
to act confidently and not admit that a problem exists
I decided to brazen it out and hoped they wouldn't notice the scratch on the car. という語義説明と例文で十分なサポートになります。無味乾燥ではまったくありません。

付随するCDーROMのコンテンツもすばらしく充実しています。英和辞典その他のツールの併用も可能です。Google で映像をチェックしさらにその映像をカードにプリントして印象を深くし記憶を助けることもできます。

さらに、学習辞書で習得した語彙は、英語で多読すればするほど頻繁に遭遇します ― そのこと自体(無意識ではありますが)習得語彙の復習になり記憶の強化になっています。

そして、暗記法はいろいろありますが、いったん暗記したものを定着させる方法はただひとつ、復習(方法は問いません)あるのみです。

>効率性を重視すると辞書暗記に軍配があがるとも考えておりましたが、これもマウスオーバー辞書やキンドルの辞書機能の活用によって、効率を大幅に上げることができます。紙の本VS辞書暗記では、辞書に軍配があがりますが、ネットやキンドルの登場で辞書暗記の比較優位は、相当に失われたと判断するに至りました。

HSE さんと「塔主」とでは、語彙強化のコンセプトがまったく異なっていると思います。

「塔主」の主張する語彙強化とは、ネイティヴ・スピーカーの認識語彙力に肉迫するレヴェルまで自分の英語の語彙力を高めることです。それに対し、従来の語彙強化法は、目標レヴェルが曖昧模糊として、ネイティヴ・スピーカーの認識語彙力にはとうてい達し得ないやりかたです。目標語彙を定めないあるいは定めようのないやり方です。

日本でいわゆる多読と称される英語での読書は、実は、非常な少読にすぎません。ましてや、未知語に注意しながら読む場合は、その読書量はさらに微々たるものになります。それで、学習(英英)辞典の質・量に匹敵する語彙を築くことはとうてい不可能でしょう。

ネイティヴ・スピーカーの認識語彙力に肉迫するレヴェルまで自分の英語の語彙力を高めそれを維持するために必要なことは、まず、(1)ここまで覚えればよいという明確な基準(=ネイティヴ・スピーカーのレヴェル)を定めること、次に、(2)その基準語彙群から未知語彙を選択してリスト化すること、次に、(3)その未知語彙を覚えること、そして、最後に、(4)覚えた語彙を半永久的に復習して忘れないように管理することです。

(1)で言う基準は主観的なものでは意味がなく、科学的客観的なもの(個々人の好みや知的傾向に偏ることのない万人に必要なもの)でなくてはなりません。コーパスが確立されるまでそんな基準を知ることは不可能でしたが、コーパスの出現によって可能になりました。

つまり、「中級学習(英英)辞典(約1000ページ)」あるいは「上級学習(英英)辞典(約2000ページ)」がその基準になります(辞典は紙であろうとオンラインであろうとその他どんなものであろうと形態は問いません)。

ただし、自分の趣味や専門用語または各業界の用語などは、各自の事情に応じて、別に習得する必要があります。それは、日本語の場合とまったく同じです。

そして、こうした語彙強化法の原理は、「紙の本VS辞書暗記」「ネットやキンドルの登場」などには、具体的な手法は別にして、まったく左右されない、ひとつの普遍的なものだと、「塔主」は確信しています(ただし、あくまでも私見です)。

具体的な方法は何でもかまいません。「紙のカード」を使う私の方法はその1例にすぎません。

以上、何かの参考にしていただければ幸いです。

肝心なことは、HSE さんが自分で満足できる語彙強化をすることであって、「アンチ・バベルの塔」はひとつのコンセプトとして了解いただければ十分です

Happy learning !

Thank you.

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