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「Globish」 「ニホン英語」 そして「塔」

フランス人のジャン=ポール・ネリエール氏が開発・提唱した「Globish」と末延岑生氏が主張している「ニホン英語」は、従来の混乱をきわめた「ちまたの英語学習論」を整理して、確固たる指針を与えた点で、画期的だと考えています。

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(1) Globish の5つのポイント (『週刊 東洋経済 2010 9/18号より』)

1 1500語の語彙で充分

2 毎日1時間1年間の学習で習得可能=400時間未満

3 毎日1時間1年間の学習で旅行やビジネスの90%をこなせる水準に到達できる

4 「発音・音声」 「文法・構文」 がシンプルで、ネイティヴ並を目標にする必要はまったくない

5 熟語、ユーモア、比喩を使わない

これほど簡単で、しかも、旅行やビジネスの90%をこなせる水準に到達できるのだから、すごいことです。

(2) ニホン英語 (末延岑生著 『ニホン英語』 より)

日本語なまりの発音・音声やネイティヴ・スピーカーから見れば間違いを多く含む日本人の英語であっても、日本人の英語は、アジアの人々に75%という高い伝達率で理解され、アメリカの人々に79%の伝達率で理解されている。

他方、アメリカ人の英語は、アジアの人々に55%の伝達率でしか理解されていない。

日本人も、ネイティヴ・スピーカー以外の英語はたいへんよく理解できる。

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今やアジアが世界の経済を牽引する時代。

(1)や(2)の現象が、専門家だけではなく、一般の人たちに対しても明らかになれば、普通の人たちの英語学習が、従来よりはるかに実際的で高能率で実りの多いものになることは間違いない。

英語学習に関して ― 「文法は不要だいや必要だ」とか「中学英語で充分だいや不十分だ」とか「LやRの発音がどうのこうの」とか ― まったく整合性を欠いた不毛な議論も不要になる。

日本人であれば、日本語なまりの英語で Globish を習得すれば、旅行やビジネスの90%をこなせるわけだから、英語学習が実益に資することこの上ない

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さて、「塔」の立場はどうか?

1 (主として読書のためであるが)語彙はネイティヴ・スピーカー並のレヴェルを目標にする

2 (Globish 習得の400時間未満に対し) 5000~1万時間の学習になる

3 旅行やビジネスに限らず、ネイティヴ・スピーカー向けの映画や小説なども楽しめるレヴェルを目標にする

4 「発音・音声」 「文法・構文」についても、ネイティヴ・スピーカー並を指針にする

5 熟語、ユーモア、比喩もできるだけ理解できるようにする

なぜか?

Globish や ニホン英語 だけでは、大衆誌:「READER'S DIGEST」・「TIME」なども読めないし、ネイティヴ・スピーカーのしゃべることや講演や大学の授業や映画のせりふは理解できない。

私は、それでは満足できない。同感の人も多いでしょう。

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なら、どうすればいいのか

まず、ニホン英語で Globish を習得しながら、ゆっくり時間をかけて(5~10~20年)「塔」を実行すればいいと思います。

もちろん、時間がなければあるいはそれ以外のレヴェルに興味がなければ、Globish だけを目指すべきでしょう。

英語など不要な人なら、人生は短くするべきことは山ほどあるわけですから、Globish さえ必要ありません。

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とまれ、「Globish」と「ニホン英語」は、私たちの、とめどもなく混乱した英語学習法の議論を整理し、当面必要な英語の習得に向けて、簡素で高能率でだれにも実行可能な方法を示してくれました。

明治以来の快挙です!

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Comments

いつも参考にさせてもらっています(o^o^o)
質問なんですが、今、TOEICの単語集で塔の建設をしているんですが、暗記をするときに、例文にあるような、使用例は覚えていますか?それから、暗記が出来ているか復習する際に、例文をみると答えられるんですが、本当に覚えているのか不安です。復習の時には、どの程度再現出来ればよしとしていますか?
よろしくお願いします☆

Posted by: sachi | November 11, 2010 at 06:46 PM

sachiさん、こんにちは。

暗記にはいくつかの度合いがあります。

(1)意味は覚えていないが見たことがあるような気がする → (2)意味は覚えていないが確かに見たことはある → (3)確かに見たことがあって、その語彙だけでは意味が思い出せなくても、例文の中であれば意味も思い出す → (4)その語彙だけでも意味が思い出せる → (5)思い出すというより、見た瞬間に理解できて(例: apple とか I とかのように英語であることさえ意識していない)リスニングの支障にもならない、(6)英語を話すときにもその語彙を自然に使える というように、暗記の度合いはさまざまです。

(1)~(6)のいずれであっても、その語彙を暗記しかかっている、あるいは暗記していることに変わりはありません。

そして、例文を見ればその用例の意味が理解できる(3)の段階は、暗記の深化の半ばぐらいに位置していると思います。

かなり定着しつつあるといえます。

だから、「本当に覚えているのか不安」になるよりも「すでにこの段階までは覚えているんだ」というように前向きにとらえるほうが気持ちも楽になるし、それだけで「読書」などにはかなり役立ちます。実用価値が十分にあるわけです。

他方で、根気よく、忘れても忘れてもめげずに復習を続けたら、徐々に(4)→(5)→(6)と深化していきます。

(4)まで達したら十分な語彙も(人によって要求水準が大いにことなるのでどの語彙がそうだとは一概にはいえませんが)かなりあります。

私は、自分の日本語の語彙の暗記度合いに英語の語彙の暗記度合いを近づけることを目標にして、日々気長に復習を続けています。long long journey です。

読み・書き・話し、聞くことも、無意識の暗記深化に役立っています。

真剣に、でもリラックスして、頻繁にある後退も気にせずに継続すれば、暗記は必ず進化・深化します。

Happy learning!

Thank you.

Posted by: k.y. | November 12, 2010 at 10:16 AM

お返事ありがとうございます☆彡
なるほど!そうやって復習を進めて記憶を深め、自分の目指す段階まで覚えたら、よしとするグループにしていく、というかんじなんですね☆ありがとうございました><
やってみます(o^o^o)

Posted by: sachi | November 14, 2010 at 07:55 PM

sachi さんへ。

そうです。

暗記度合いの妥協点は「各人のさまざまな状況によって」また「各語彙に対する各人の必要度に応じて」違ってきます。

一定の基準はないし、それをあえて設けるべきでもないと思います。

Thank you.

Posted by: k.y. | November 15, 2010 at 01:07 PM

【ご報告】アンチバベルの塔が完成しました。
2009年5月に書き込みした「おやちょう」と申します。
あれから1年半の月日が流れましたが、とうとう私のアンチバベルの塔が完成しましたのでご報告します。
⇒詳細は拙ブログをご参照ください。
これから日夜暗記に励み、「なんでもわかる」レベルに少しでも近づこうと思います。
また、これからは「globish」にも挑戦しようと思います。
貴サイトに触発されなければこのような自己投資はしていなかったと思います。ここにお礼を申し上げつつ、ご報告とさせていただきます。

Posted by: おやちょう | November 15, 2010 at 06:45 PM

おやちょう さんへ。

すばらしいたよりをありがとうございました。

http://oyajinochosen.at.webry.info/201011/article_7.html の塔画像と文章も拝見しました。

またひとつ ― 僭越ながら ― 貴重な親族を得た思いがして、感激に浸っています。

生活に確かな充実感と、未来に向けての大いなる希望、を与えてくれる作業とはいえ、たいへんな根気も必要とする営為だったはずです。

そのひとつの難関を見事に突破された!

世界で唯一のしかも高水準の「おやちょう未知語彙集」は、おやちょうさんにとってまさに最強の語彙暗記ツールです。

暗記・復習が進むにつれて、その威力を実感されること請け合いです。

いろいろな事情で暗記・復習が後退することがあるかもしれませんが、どうかめげずに、忘れても忘れてもまた覚えなおして、最強ツールの活用を続けてください。

「自分の場合はこれだけおぼえればよいのだ」という範囲が確定されているので、大きな安心感があります。

決して功をあせらず、ゆったり「名塔」を愛でながら、豊かな語彙の集積・活用を楽しんでください。

なお、「Globish」は誰もが「まず」めざすべき実用英語の1里塚だと考えています。 多忙であってもその水準までは到達したいものです ― 少なからず仕事や娯楽に役立つわけですから。

Thank you.

Posted by: k.y. | November 16, 2010 at 02:01 PM

こんにちは。いつもブログを読んで参考にさせてもらっております。過去ログのすばらしい内容が、本になって欲しいなぁと思ってます。

さて今日は、おもしろい新刊が出ましたので、紹介させていただきますね。内容も、翻訳の質もすばらしいです。

そして、僕はOEDを読んだ [単行本]
アモン・シェイ (著), 田村 幸誠 (翻訳)
価格: ¥ 1,890

Posted by: cozy | November 21, 2010 at 04:40 AM

cosy さんへ。

「そして、僕はOEDを読んだ」のご紹介ありがとうございます。

そうですか、cosy さんも読まれたんですね。

私も、昨年、ペーパーバック(「Reading The OED One Man, One Year, 21730 Pages」by Ammon Shea )で読みました。

しかし、和訳が出たのは知りませんでした。日本でも、特に辞書好きな人たちは迷わず買っていると思います。cozy さんや私のような人たちです。

― I live near Columbia University, which has a total of nine different libraries, all of which are spectacular...But their libraries are also fairly crowded, and have far too many interesting books, which is a constant source of distraction...So I've ended up spending most of my time reading in the basement of the Hunter College Library...and many days I'm the only person in the basement.. It is as quiet a spot as one can find in New York... ― というような1節を読むと「本の紙魚(しみ)」のようになって「OED」を読む アモン・シェイの姿が眼前に浮かびます。

私は、とりわけ好みの英語の本は、和訳(優れたものに限りますが)も買うようにしています。和訳を見ながら元の英語を再生するのが楽しいし、英訳・和訳のすばらしい訓練にもなるからです。

さっそく、「そして、僕はOEDを読んだ」 も注文します。

話しは変わりますが、「中上級者がぶつかる壁を破る 英語学習最強プログラム・土屋雅稔著」という本が最近でました。語彙強化が主題になった本ですが、「アンチ・バベルの塔」を参考に書かれたのかなと思うほど語彙強化のコンセプトが似ています。今までにない学習本だと思います。興味があれば参考になさってください。

Thank you.

Posted by: k.y. | November 21, 2010 at 07:04 PM

コメントありがとうございます。

すでにペーパバックで読まれてたなんて驚きました!さすが早いですね。引用文もありがとうございます。翻訳文の日英比較は楽しいです。もちろん質の高いものに限定するかと思いますが。やはり豊かな語彙力があってこそ、そういう楽しみが持てるのではないのでしょうか。

それと「中上級者がぶつかる壁を破る 英語学習最強プログラム・土屋雅稔著」の紹介もありがとうございました。

これは実は私も最近チェックしまして、「おお!まさにアンチ・バベルの塔を参考にしているに違いない!」と思いました。そうなら一言書いて欲しいものですよね。

ようやく本格的なボキャビルに関する本が出るようになりましたが、本ブログでk.y.さまが指し示した明確な方向性に、相当の人が影響を受けているのだと思います。

英検1級に合格した人でも、洋書を快適には読めないという厳しい現実がありますが、それを打破する語彙力をいかに身につけるかという具体的方法に、少なからずの人がやっと注目し始めたといえるかと思います。本家本元である「アンチ・バベルの塔」がもっと広く認知されて欲しいです。

私も一度挫折した塔づくりですが、方針を変えて、最近また再開しています。実はすごいアイデアなんです。おやちょうさんみたいに、晴れ晴れとここで報告できるように頑張りますので、またよろしくお願いします。

Posted by: cozy | November 22, 2010 at 05:34 AM

はじめまして、こんばんは。

自分は英検準1級をギリギリ合格というほどの稚拙な英語力しかないのですが、そのような場合はまず英検やTOEICの単語帳を覚えるべきなのでしょうか?

HPを拝見させていただきましたところ、英和辞書や英英辞書などをやっておられるようで、それ以前はどうしたのでしょうか、気になりました。

お手数ですが、返信いただけると幸いです。

Posted by: Daisuke | December 31, 2010 at 10:32 PM

Daisuke さんへ

はじめましてk.y.です。よろしくお願いします。

>・・・まず英検やTOEICの単語帳を覚えるべきなのでしょうか?

それで(市販の語彙集で)よいと思います。

普通に日本で育って日本の教育を受ける人であるなら、英語の語彙学習に限って言えば、まず学校の英語の教科書の語彙をしっかりと覚え、大学入試の単・熟語帳に取り組み、普通に受験勉強するのがもっとも無難で効率のよい方法でしょう。

大学生・社会人の場合も市販の語彙集を利用して1万語前後の語彙を(語彙集のレヴェルで)覚えてしまうのがいいと思います。

私の場合は、それに加えて、英字新聞の社説を1年間そしてペーパーバックを1500ページほど隅々まで精読し、少しでも意味不明の語彙は辞書で調べてノートにリストアップしながら覚えました。文脈のなかで語彙を理解し覚える作業は語彙学習を幅広く立体的にするのにおおいに役立ちます。

「塔」をはじめたのは、その後です。英語を使うためには当然必要とされる普通の語彙レヴェル(=ネイティヴ・スピーカー並みの語彙レヴェル)に到達するためです。このレヴェルは決して高いものでもなんでもなくて、日本語で言えば普通の日本人の普通の日本語の語彙レヴェルに相当し、何ら特別なものではありません。ここで最も有効な語彙習得ツールが、私の場合は、「学習辞書暗記(丸暗記ではありません)」であり「アンチ・バベルの塔」であったわけです。

ただし「塔」は数年間から人によっては10年~20年超のスパンに及ぶ取り組みであって、「グロービッシュ」とか「簡易英語」とは目標がまったく異なるプロジェクトです。「塔」に取り掛かる以上は、その自覚が必要です。

Thank you.

Posted by: k.y. | January 01, 2011 at 12:04 PM

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