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和訳の重要性!

近年、英文和訳の弊害を喧伝する傾向が強い

何でも和訳しようとするから英語の力がつかないのだとする議論が明らかに優勢を占めている。

こんな誤った主張がなぜまかり通るのかまったく理解できない。

外国語は母国語に置き換えることができて初めて理解したといえるのに、なぜ、英文和訳を諸悪の根源のように声高に言い募るのか?

私たちは、日本語で、ありとあらゆるものを学ぶことができる。

西洋由来の哲学や自然科学も日本語で学ぶことができる。和魂洋才ということばもあって、何でも日本語で学問できる利点は計り知れない。

隣国の韓国にこんな切実な訴えがある → http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1223507539/-100。

心底の理解は母国語での了解が前提になる!ということだ。

しかし、英文を読む際に常に和訳する必要はない

和訳の訓練を積んだ後なら、英文を英文の語順で日本語を読むように読むことができるし、また無意識にそうしている。興が乗れば、英語なのか日本語なのかも意識しなくなり、心象だけが展開する。

和訳もまともにできない段階で、つまり構文の理解を欠く段階で、英語を英語の語順で理解するなど不可能だが、和訳の訓練を徹底すればするほど、英文をそのまま了解する能力が高まる

そして、ときには意識して和訳を楽しむのも一興である。そうすることで日本語・英語双方の理解がいささかでも深まるし、手軽で知的な余暇活動にもなるからだ。

私が和訳を楽しむなどは市井人の「遊び(すさび)」にすぎないが、たとえば、夏目漱石や森鴎外はどうだ。村上春樹はどうだ。

徹底した和訳の訓練がさらには翻訳作品の発表が彼らのそして日本の文学をどれほど豊かにしてきたことか。

文学における和訳の貢献も、ノーベル賞や自然科学におけるほど目立つものではないかもしれないが、その深甚なこと甲乙つけがたいものだと思う。

和訳は弊害になるどころかなくてはならないものなのだ

そんな和訳の前提に、構文理解がある。構文の理解なくして正確な和訳もありえない

ところが、東京大学大学院総合文化研究科教授・菅原克也氏曰く ( 『英語と日本語のあいだ(講談社現代新書)』 より) : (引用開始)英語の構文を正しく捉えるのは、けっしてやさしいことではない。大学卒業後さらに大学院への進学を志すような層でも、与えられたテキストの、主語や目的語や保護を見誤る学生は少なくない。英語の構文をきちんと把握できるようになることが、読む力の面で「使える」レベルに達することだとするなら、満足しうるレベルに達するのは、残念ながらごくわずかの層でしかないのかもしれない (引用終止 )

外国語を習得する過程で、翻訳を読むことや自分の母語に訳したりする作業は外国語を習得する過程で弊害どころか必須のものである。

日本文学作家のリービ英雄氏は、18歳のときに初めて日本文学に触れ、そのときに読んだのが三島由紀夫の 『金閣寺』 の英訳。『金閣寺』 はその後日本語で2度3度と再読した。『万葉集』 を読んだのもその頃。そして20代後半から30代を 『万葉集』 の英訳に費やした。大江健三郎の 『個人的な体験』 は英訳・原文と2度の影響を受け、中上健次の 『千年の愉楽』 を英訳した (『週刊現代 2011年9/24・10/1号』より)。

ただし、英語を読むことと条件反射的ないわゆる英会話とはレヴェルがまるで違う。

いわゆる英会話に英文和訳の訓練などほぼ不要だ。

弊害になることさえある。

もちろん、英語でする会話いわゆる英会話も、まったく別のものである。 

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