英単語の暗記

依然として消えないとんでもない誤解がふたつ

「塔」は学習用の英和辞典や英英辞典から自分が知らないあるいは不確かな語彙を選び出して習得していく方法である。

早合点して、またはこのブログをちゃんと読むこともなしに、「塔=辞書暗記」だと思ってしまう人も多い。

日本語で言えば「広辞苑」を暗記するようなことだと誤解している人たちです。

私は、そんなことを主張しているわけではない。

「塔」は「生活・仕事・読書・学問などをする前提としてぜひ必要な語彙だけを精選して掲載している学習用の辞書」から未知の語彙を選び出して覚える作業である。

「広辞苑」レヴェル以上の数十万語の英語の語彙を覚えましょうというのではない。

そんなことは常人には不可能だし必要でも全くありません。

誤解はもうひとつある。

語彙の暗記ばかりをしても役に立たないという、またまたこのブログをちゃんと読むこともなしに口にされる陳腐な批判です。

そんなことは当然の事です。

語彙の暗記は英語の習得に必要な作業の1部分。

英語を使う仕事をしていたり、普段の生活でも音楽や映画や読書やネイティヴスピーカーとの交流などなどを通じたりして、活きた英語に触れる・自ら使うことも欠かせないことです。

そうしてこそ、既知であった語彙も「塔」で習得し復讐を続けて忘れないようにしている語彙もまさに命を得ることになるわけです。

| | TrackBack (0)

the Best Way to Learn English Vocabulary

http://www.youtube.com/watch?v=y2ADqeDfQDg はたいへん参考になります。

そして、アンチ・バベルの塔のことを考えてください。

そして、この Youtube の内容を難無く聞き取れ理解できる人なら、ぜひ、例えばですが、「Merriam-Webster's Essential Learner's English Dictionary」を使って、塔を建設し、英語を理解・活用し、英語で何かを学び習得するための磐石な基盤となる英語の語彙力を完成してください。

その総合的な語彙力たるや、TOEIC950獲得や英検1級合格などをはるかに凌駕するものです。

5~10~20年かけても充分その価値がある営みです

並行して、英語で読み、聴き、話し、読書し、映画を見、ネイティヴと交流するなどすれば、ますます、あなたの英語力は輝きを増してゆくばかりです。

「Merriam-Webster's Essential Learner's English Dictionary」は、例文も豊富・現代的・実用的で、実に愛すべき「学習英英辞典」です。

文字が小さくて読みづらい人は、B4のサイズに2倍に拡大して両面コピー・ファイルすれば、美しい拡大版が誕生します。

この辞書の欠点であるこわれやすい製本も、ページごとに外してコピー機にかける際には、一転して利点になります。

― 「塔」などを実行しない限り、あなたがいかに華麗な英語経歴の持ち主になっても、永遠に残る内心の不全感は、語彙不足ですよ! ―

Enjoy learning!


| | TrackBack (0)

英語語彙の意味散策(1)

記述に一切責任は負わず、注意されたし

また、例文は、ただの例文で、事実に即したものとはかぎりません。

1 abdicate

① 「王様が退位する」 The king abdicated (the throne).

② 「放棄する」 The Democratic Party abdicated [=abandoned] its role as the ruling party.  民主党は与党としての役割を放棄した。

日本の民主党!

「マニフェスト」の表紙を飾った「鳩山のお坊ちゃん」は引退を余儀なくされ、「マニフェスト」の事実上の立案者「豪腕策士・小沢氏」はトンズラしてしまった。

言うは易く行うは難し ⇒ Easier said than done.

| | Comments (0) | TrackBack (0)

どの語彙を覚えるべきか?

あるいは、ある語彙が多義語である場合、たとえば、語義が4つある場合に、そのうちいくつを覚えるべきか?

通常、それは人によって違う。

「この語彙は覚えなくてよい」 とか 「この語義は不要だ」とか ― 判断するのは各個人だから、人によって違うのは当然。

自分が読む英文の中にでてくる語彙を覚えるだけで充分だと思っている人もいる。 それはそれで、本人が納得しているのであれば何の問題もない。

その際 ― 英語の語彙力や理解力さらには英文を読むことに割く時間の短さのために、たいていの場合は極めて限られた範囲の英文、あるいは、自分では多読のつもりでも真の意味の多読とは質量共に比較にならない乏しい内容の読書にならざるを得ないが ― 本人がそれで満足であれば何の問題もない。

他方、「塔」の立場は違う。

どう違うか?

1 必要な語彙は ― 各個人が自分で決めるものではなく ― 客観的に存在しているという立場である。

日本語と同様に英文を読むためには、日本語と同様の英語の語彙力が必要だとする立場である。

そして、乏しい英文の読書を通じてそれだけの語彙を習得するのは、とてもじゃないが不可能だという見地に立つ。

2 必要な語彙は客観的に存在し、それは「学習辞典」に掲載されている語彙だという立場である。

たとえば、「Merriam-Webster's Essential Learner's English Dictionary」 という ― 約54,000 の英単語・熟語など (見出し語だけの数ではない見出し語の数を議論しても実用上無意味だし、派生語の意味なども類推できるとは限らないからすべてていねいに確認する要あり) を掲載したペーパーバックの学習辞書がある。

Essential とは、もちろん、「必要不可欠な」 という意味である。

そして、念入りにも、その表紙の下段に、― The English Words You Need to Know ― と明確に宣言してある。

「塔」は、必要な語彙だけを科学的・客観的に収集した学習辞書の語彙を数年~20年かけて覚えるのが最も確かで効率のよい語彙強化方法だと考えている。

半永久的な復習を奨励するのは ― 覚えることと忘れることは表裏一体の現象だ ― という痛烈な自覚に基づくものである。

---------------------------------------------------------------

英文を読むことも欠かせない

英文を読むことで、語彙・語義・語法の自由で多面的な展開を実体験し、それを鑑賞し、参考にし、時には自分でも模倣し、新語に触れ、もちろん必要な情報の収集もするなど、英文を読むことの楽しみや実用性は計り知れない。

並行して、「塔」の建設を進めたらよい

相乗効果であなたの語彙は ― たとえ暗記が充分でなくても ― 質量共に目に見えて充実する。

毎日、辞書 (およそ1600ページ) を何ページチェックすればよいか?

それは各人の様々な事情に左右される。

毎日半ページでもいいではないか。先は長いのだから。

1ページチェックできたら約5年で一巡する。

あなたが学生でたっぷり時間があるなら、毎日5ページ頑張ればよい。その場合は1年で一巡する。

いずれにしても、数年~20年の大プロジェクトになる。ロマンあふれる作業である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

英語の語彙はいくら覚えても切りがないと思っていませんか?

たいていの人は、とりわけ「塔」を訪れてくださる前は、「英語の語彙はいくら覚えても切りがない」と思い込んでいるはずです。

他方、そんな人たちも、自分の日本語の語彙が無限にあるなどと思っているでしょうか?

そんなことを考えたことさえないかもしれません。

しかし、あえて考えてみて、自分の日本語の語彙が無限にあると思う人は誰もいないでしょう。有限であることは、その気になれば、充分認識できることだからです。

だからと言って、「それで困っていますか?」、「新聞や雑誌や小説を読むときに困っていますか?」と聞かれて「はい、困っています」 と言えるほど困っている人も、これまた、皆無に近いでしょう。

つまり、日本語であろうと英語であろうと、有限ではあっても特段困ることのない語彙レヴェルが厳然と存在するわけです。

それだけの語彙を知っていたら、その語彙を活用して新たなことを学習したりあるいは類推などを通じて、たいていのことは了解できる。

これを、「標準語彙」と称するとしたら、「日本語の標準語彙」 も 「英語の標準語彙」 も当然存在する。

そして、英語の標準語彙を網羅した語彙集が、ズバリ学習英語辞書です。

なぜ、そう言えるのか?

中級・上級の学習英語辞書を手元において英語の新聞・雑誌・小説を読んでみてください。未知の語彙があっても、その手元の学習英語辞書で充分間に合います。

初級の学習辞書では語彙不足だし、かといって、中・上級超の ― 日本語で言えば「広辞苑」レヴェルの ― 辞書は、通常の読書で、必要になることはめったにありません。

通常必要である語彙だけをコーパスを利用して記述してあるのが 「学習辞書」 だから、当然のことです。

英語の標準語彙を網羅した語彙集が、ズバリ学習英語辞書である」 と言える所以です。

英語の語彙を覚える営為は、新たな概念を学習することではなく、日本語では既知の有限の概念を英語でも既知にする営為であって、決して無限に英語の語彙を覚えることではありません。

英語の学習辞書の語彙だけ覚えれば充分なのです。

それが分かるだけでもずいぶんと先が明るくなります。

昼なお暗く道もない鬱蒼とした語彙の森をさまよいながら語彙を収集するよりも、必要な標準語彙だけが整然と並ぶ明るい森で、つまり学習辞書という語彙の森で、自分の未知語彙だけを収集し覚えるほうが圧倒的に効率もよく、語彙の正確な理解も可能になることは自明でしょう。

あとは、その学習辞書をターゲットにしてコツコツと 「塔」 を築くだけです。 ターゲットは1000~2000ページです。明らかに有限なのです。具体的なやり方は各人各様でOKです。

ただし、1年や2年で終わるとは思わないこと

半永久的な復習が欠かせないことを肝に銘じること。

この2つを自覚して、何度中断しても、何があっても、そのつど復活して、コツコツ5~10~15~20年続けることです。こんなことを主張した人は今までにいないと思いますが、「塔」は掛け値なしに実り多い営為ですよ!

人生が倍も3倍も楽しくなります。

一方、「どこがそんなに楽しいの?」 と思う人は、「塔」など無視しましょう。

人生は短く、するべきこと、したいことは、他にもいくらでもありますから。

( 注:覚えるべき語彙数は有限ですが、一般に了解されている英語の必要語彙数はあまりにも過少です  → 参考記事: http://sanshisuimei.cocolog-nifty.com/_the_tower_of_antibabel/2006/08/post_20b6.html / http://sanshisuimei.cocolog-nifty.com/_the_tower_of_antibabel/2005/01/post_6.html など )

| | Comments (0) | TrackBack (0)

コメントにお答えする(1)

修験者候補生さんへ

コメントをいただき本当にありがとうございます。わが人生の少なからぬ時間と資金を投入(独学ですが)して獲得した「アンチ・バベルの塔」方式をみなさんに知っていただきたくて発表したコラムですから真摯な反応をいただけることはこの上なくうれしいことです。いただいたコメントに関する感想をいくつか箇条書きにして述べてみます。

① ネイティヴの語彙数は6万前後だと書きましたが、この語彙レベルはもちろん派生語なども含んだ数字です。だいたい4万から8万ぐらいで、知識人の場合は12万程度になると思います。

英和辞典に当てはめると、たとえば「ニューヴィクトリーアンカー英和辞典」がそれに近いレベルだろうと考えています。

「ニューヴィクトリーアンカー英和辞典」は約46000語の単語・成句を収録し、その内見出し語が約25300、成句が約5500、語形変化・派生語などが約15200となっています。6万語よりはかなり少ないですがネイティヴの下層レベルには十分達しているでしょう。

② 日本では米国の週刊誌TIMEを特別視して時には崇拝さえしかねない傾向がありますが、なぜそうなるのか不思議です。米国ではだれでも読んでいるありふれた雑誌です。決して低級ではありませんが特に高級でもありません。数多い雑誌のひとつに過ぎません。

私は、今はTIMEであっても日経であっても同じように読めます。ただ、固有名詞や現地にいないとわからない事情や芸能ネタなどがからむと分からないことがあります。しかしそれは日本の雑誌でも同じです。

③ 私がこんなに語彙数にこだわるのは以下の2つの理由があります。

1 私は若いときから英語の本を日本語同様に読めるようになることが夢でした。しゃべることはネイティヴにかなうわけがない(日常の会話やニュースを聞いたりすることにまったく不自由はありませんが)と思っていますが、本を読むことにかけては同等以上の力をつけることが可能だと感じています。

それに書物を通す場合は英語界の俊秀や天才たちとも精神的な交流を持つことができます。会話でこんな機会を持つことはほぼ不可能ですし、吟味されつくした書物でこそ味わえるような深い議論に接することもないでしょう。そんな著者の語彙力は10万語を超えます。背景知識や教養も必須ですが何と行っても語彙力がなければだめです。分からない語は前後関係から類推すればよいとか概略さえ分かればよいとか言う人も多いですが、それはごまかしに過ぎません。日本語の書物を読むときにそんな読み方をしますか? 私はしません。ざっと読み飛ばす場合は別にして、緻密な本であれば精読します。かなりの語彙量がないとそれはかなわぬことです。

2 Reader’s Digest に Word Power というコーナーがあります。もちろん、ネイティヴ用のクイズで、問題数は20問(20語)です。私はこのクイズの Vocabulary ratings で Excellent や Exceptional の評価を常に得られるようになりたいのです。5万語では無理で10万語前後の語彙力が必要です。

「アンチ・バベルの塔」の画像は10万語を達成してから掲載します。目下、ボキャビルの完成バージョン(10万語達成ヴァージョン)として Cambridge Advanced Learner’s Dictionary(1883ページ)に取り掛かっています。今はBの項目を覚えています。1~2年で終了する予定です。

これからもときどきコメントくださればうれしいです!

| | Comments (1) | TrackBack (0)

語彙獲得法としての辞書暗記

もっと優れた方法があるのではないかという指摘もあります(そう
思っている人のほうが圧倒的に多い)ので私の意見を述べます。

私も、和洋書を問わずいろいろ関連する書籍や資料その他研究報告
などを渉猟しました。確かに「研究」は進んでいますし、語彙獲得
教育の専門研究者の数も増えているようです。

Chomsky派の理論言語学者も語彙への関心を高めており、その他の
学派も統語論よりも意味論中心にトレンドが急速に変わってきてい
るようです。

ただし、日常語の獲得は別にして、5~10万語の外国語の語彙力
を獲得する具体的な方法論もその成功例も皆無でした。そんな語彙
は不必要だとする議論もありますが、私はそんな考え方は実は妥協
に過ぎないと認識していますので興味がありません。

さて、そんな研究者のなかで自ら外国語の語彙を5~10万語マス
ターした人も皆無でした。周囲の人(研究対象も含む)はもちろん
自分がしたこともなくかつ自分の研究に基づいて実際に成果を上げ
た例もないことを議論しても半ば無意味ではないかと「私は」認識
しています。

さらに皆さん無視されているのは最近の英英辞典のすばらしさで
す。巨大なコーパスの構築とその精細な分析に基づいた現行の英英
辞典は(英和辞典もすばらしくなっていますが)、昔日の辞典とは
似て非なるものです。実にたのもしい道具なのです!

また、語彙獲得の主なツールは所定の辞典ですが、他にGoogle(た
とえばターゲット語彙の図像をイメージで検索して単語カードにプ
リントするなど)や、その他書斎にふんだんにある書籍や資料、あ
らゆる用途で利用するインターネットの活用もサプリメントになり
ます。

本業の翻訳や読書で頻繁に遭遇する語彙は、学習語彙の実に効果的
なコンテクストを提供します(辞典自体にも優れた例文が豊富にあ
ります)。

しかしです。何と行っても本人が楽しくて仕方がないのですからこ
れ以上に強い状況はないでしょう。宿題でも試験対策でもまったく
ない。

もっと正直に言えば、「There's no accounting for taste」だ
と思いますが...

読んでいただきありがとうございました。

| | Comments (3) | TrackBack (1)

アンチ・バベルの塔の建設法(続1)

英単語の強化法

1万語前後までは何とか教材もありますし、その程度の語彙であれば雑誌や新聞、ペーパーバック等を辞書を引きながら日常的に読むことで蓄積あるいは維持することも可能でしょう。

しかし、それ以上の語彙数を獲得する具体的な方法論も「唯一の方法」を除いて実はありません。語源活用論もありますが、それで数万語以上の「瞬間に分かる語彙」をものにした具体例は聞いたことがありません。

「唯一の方法」、それは辞書をAからZまで暗記すること、日本語を勉強する人であれば日本語の辞書を暗記することではないでしょうか。みなさんバカになさいますが、他に方法がありますか?

デーブ・スペクターは和英辞書を丸暗記しました。サイデンステッカーは日本語を学ぶ最善の方法は「辞書を暗記すること」だとはっきり述べています。

日本人でも、辞書の暗記を「強力な武器のひとつ」にして英語力を築いた人はめずらしくありません。

辞書を暗記する過程で語源の理解も必然的に進みます。語源の同じ語彙は集中して記述されていることも多く効率的に学習できます。

効率面で言えば、辞書を暗記することほど効率的な方法はないと感じますが、いかがでしょう? 今1万語の語彙力がある人がそれ以上にしようと思って読書に励んでも(1万2000語以上の教材はない)、未知の単語に出会う確率は、辞書を順番にチェックする方法に比較すれば、はるかに低いでしょう。効率が悪いのです。

私は、4万5千語(見出し語だけの数ではありませんが...)の辞書をAから順番に1年かけて暗記しました。教材は Random House Webster の 「Intermediate English Dictionary」です。

選んだ理由はふたつ。

① ネイティヴの語彙数の最低ライン(最高は10万語前後)に到達できること。

② ページ数は512ページで、1年で終われそうであること(実際1年で完了しました)。

③ 英英で暗記できること。

Aから順に少しでもあやふやな語彙をすべてチェックし、182ミリ×128ミリの情報カードに整理していきました。全部で843枚、語彙や連語の数は5060語に達しました。もちろん、各語にはたいてい複数の意味がありますから覚えた意味の数は1万を優に超えます。やった!という感じです。

その効果は実に愉快なものでした。例えば、Da Vinch Code は聞いても読んでも日本語と変わりなく楽しめますし、Alvin Toffler などもほとんど言語バリアを感じません。

ただし、復習しないと忘れますから1日にカード100枚(約600語)、延べ時間数では約一時間の復習です。電車の中などは最高の復習時間です。

http://www.javacamp.org/misc/VocTester.htmlの語彙チェックでは各部門33~43点程度です。

ところで、辞書暗記の条件があります。ふたつです。これが実は難関!

① 時間を工面できる人。学生は十分できるはず。リストラされた人や株でドカンと儲けて時間を買える人などです。

② 根気のある人。

私の夢は若いときから Reader's Digest の Word Power の vocabulary
rating (Good Excellent Exceptional)でコンスタントにExcellent 以上をとれるようになること。8~10万語は必要です。

まだまだこれからですが、今は5万前後の語彙数ですから、残り3~5万語。今までの5万語に比較したらだいぶ楽にマスターできるはずです。派生語が多いし、複数の意味になる表現が激減するからです。

みなさんはどんな方法で語彙を強化されていますか?

| | Comments (2) | TrackBack (1)

リンカーンの演説は誤訳!?(1)

いつの頃からか、「人民の、人民による、人民のための政治」というのは誤訳で、「人民が、人民のために、人民を統治すること」、あるいは、「人民による、人民のための、人民統治」が正しいのだ、つまり government of the people の of は目的格で the people は govern の目的語になるという説がまことしやかに喧伝されています。

一部の英和辞典までこの新説に同調した記述をしています。

はたして新説は正しいのでしょうか?

わたしはとんでもない珍説だと思います。「人民の、人民による、人民のための政治」こそ、正しい訳なのです。

Google で検索しても government of the people を「人民を統治すること」と解釈したネイティヴの文例は皆無です。

アメリカ人のマーク・ピーターセンがこのことに関して言及し、「リンカーンも驚くに違いない、突拍子もない文法的解釈...」と述べています。

以下は、マーク・ピーターセン著 『ニホン語話せますか?(新潮社)』からの抜粋(37~39ページ)です。和訳ではなく著者が日本語で書いたものです。参考にどうぞ。(改行は私が勝手に行いました)。

“私は、『日本語練習帳』などのような「日本語本」を、一人の日本語学習者として努めて読むようにしている。

その学習が身に付いたかどうかはともかくとして、日本人が日本語をどのように見ているのかも私にとって興味深い問題なので、「日本語本」を読むことは苦にならない。

ただ、一つだけ気になることがある。著者の多くが、日本語の話を進めながら、英語との比較をしたくなる気持ちになりがちなこと、

そしてそこに出てくる英語に関する情報が、妙に英語のリアリティーからズレているケースがきわめて多い、ということである。...

「英語との比較」の話ではないが、最近『丸谷才一の日本語相談』(朝日新聞社)にも驚かされた部分があった。

きっかけは、こんな「問い」である。

「リンカーンの有名な言葉、『人民の、人民による、人民のための政治』ですが、『人民による、人民のための政治』だけで意味が尽くされていると思います。『人民の』には、どういう意味があるのですか。助詞『の』について詳しく説明してください」。

この場合の「の」の曖昧さが指摘されて、鋭い質問だと思ったのですが、その答えに、こんなことが書かれていた。

「government of the people, by the people, for the peopleは、『人民を、人民によって、人民のために統治すること』の意である」。

つまり、government of the peopleのofは、「所属」...や「所有」...等々を示すようなofではなく、「目的格関係」...を示すofだと説明しているわけである。

英語圏で141年以上も続いてきた常識的受け止め方が引っ繰り返される、リンカーンも驚くに違いない、突拍子もない文法的解釈だが、 実は、そこでやっと著者がいちばん指摘したかったと思われるポイントが浮上するのだ。

つまり、現在の日本語では当たり前となっている「歴史の研究(=歴史を研究すること)」などのような表現に見られる「目的格」を示す「の」は、「どうも昔はなかったらしい」、英語のofの影響でそれが生じたのではないか、というポイントである。

リンカーンの言葉について簡単に言えば、government (which is) of the people (and is) by the people (and is) for the people (ちなみに、中国ではこれを「民有、民治、民享的政府」と訳されているようだが)のof the peopleは、いわば、「人民の合意の上で出来た」や、「人民の間から生まれた」などのような意味を表している。

リンカーンはこの言葉で「government=政治」を説明しているわけで、 governmentに統治されるのはthe birdsでもthe flowersでもなくthe peopleだよ、とわざわざ述べる必要も意図も、言うまでもなく、ない。”

リンカーンの言葉に関するマーク・ピーターセンの見解は、「(教養のあるネイティヴの)常識」で、私もまったく違和感がありません。

これから、歴史的な事情、文法上の見解なども含めて、「新説の奇妙さ」を詳述する予定です。みなさんのご意見も聞かせてください。

Thank you.

| | Comments (3) | TrackBack (1)

あまり誰も指摘しないけれど(1)

英語がうまくなるのに最も必要なのは、「学習や練習にかける時間数」だと思います

日本語は自然と身に付いたとみんな思っているし、実際そうですが、大人らしい日本語が身に付くまでにやっぱり20年ほどはかかっている。それも朝から晩まで日本語で、夢まで日本語なのです。

夢は別にしても、日本語を聞いたりしゃべったり読んだり書いたりしている、つまり実際に日本語に接している時間が1日8時間だとしても20年では5万8千400時間になる。

他方、英語の場合。普通の日本人は日常で使う機会はないから専ら学校の授業。学校で、13歳から20歳まで英語を習うとしても、1日に1時間として1週間で5時間程度、しかもそのほとんどが圧倒的に日本語が多く、英語も日本人なまりで、いねむり、おしゃべりもめずらしくない授業である。だから、実際に英語に接している時間は1週間で2時間ぐらいに過ぎない。

月間でやっと8時間、1年で100時間に満たない。それで20歳まで8年間続けても800時間弱である。これは日本語の時間数の73分の1。夏休みや行事もあり実際はもっと少なくなる。つまり、日本語の100分の1程度。

これを語彙力に単純にあてはめると、日本語が3~5万語だとして、英語で何とか実用に絶える実用語彙数は日本語の100分の1として300語から500語。事実、それが実情ではないか?

こんな状態で「英語が使えないのは学校のせいだ!」と言っても無理がある。

ただし、これはどこの国でも、外国語教育では、似たようなもの。

日本だけの問題ではないし、問題と言えるほどの問題でもない。英語が日常で必要な人などほとんどいないからだ。

しかし、ある程度実用に耐える英語を身につけようと思えば、「絶対時間数」がまず必要になる。

そのことに気づいている人は案外少ないのではないでしょうか?

| | Comments (0) | TrackBack (0)